初登場時からデザインを一切変えない円盤生物ノーバが、ウルトラマンシリーズの理念の体現者である理由

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生命情報保存研究所 @rodan670

ノーバは1975年、ウルトラマンレオ第49話にて初登場した怪獣(円盤生物)である。右手が鞭、左手が鎌となった、赤いゴム製のテルテル坊主のごとき、極めてシュールかつシンプルなデザインで知られる。

2016-12-14 03:52:36
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しかしそのシンプルさの背景には、当時石油ショック由来の景気悪化で制作費を削られていた撮影班が、限られた予算の中で敵怪獣を造形しなければならなかったというやむにやまれぬ現実上の事情もあった。とはいえそのフォルムが残したインパクトは大きく、数いるウルトラ怪獣の中でも

2016-12-15 07:51:54
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比較的位の高い、「後のシリーズで回収される人気怪獣」のポジションに収まり、結果先日放映されたウルトラシリーズ最新作である、ウルトラマンオーブ22話「地図にないカフェ」においても無事再登場を果たした。

2016-12-14 04:00:08
生命情報保存研究所 @rodan670

この「後のシリーズで回収される人気怪獣」は、ウルトラシリーズにおいてはもはや常識かつ作品の魅力を保つ上で必須な要素となっている。ゼットン、ゴモラ、バルタン星人などといった往年の人気怪獣がその代表例であり、特にゼットンは、様々な亜種に成り代りつつも

2016-12-14 04:05:11
生命情報保存研究所 @rodan670

上述したウンルトラマオーブ(現時点で23話が放映済み)においてすでに5話においてその姿を現している(出現率20%超) ゼットンこそがこの作品の影の主役であり、作品はゼットンが出るための舞台装置に過ぎないと言われても容易に否定できないような頻度でそれは登場している。

2016-12-14 04:10:44
生命情報保存研究所 @rodan670

振り返ってみれば、ウルトラマンの最終回で初登場を果たしたゼットンは、ウルトラシリーズ第3作である「帰ってきたウルトラマン」の最終回ではもう再出現していた、ウルトラマンが帰ってきた時、ゼットンもまた戻ってくるのである。

2016-12-14 06:17:50
生命情報保存研究所 @rodan670

以後も時折現れ、こと2005年に放映されたウルトラマンマックス以降は、関連する全シリーズ作品において、必ず一度は顔を出している。 このように、視聴者に一度大きなインパクトを残し、人気を博した怪獣は、後のシリーズ上の常連となっていく。

2016-12-14 06:23:46
生命情報保存研究所 @rodan670

最初は「せっかくウルトラマンがシリーズ化されてるのであれば、思い出深いあの怪獣をもう一度見てみたい」といった要望にこたえる程度の試みであっても、習慣化されてしまうと「もう何年もかの怪獣を見て(出して)いない。そろそろあれを視ないと(出さないと)」という、奇怪な義務感に

2016-12-14 06:26:28
生命情報保存研究所 @rodan670

視聴者側も製作側もとらわれていくこととなる。結果近年、特に2005年のウルトラマンマックス以降のシリーズ作品では、作品内における往年の人気怪獣の登場回率が高まりつつある。そもそも、最新作である「ウルトラマンオーブ」では、主人公のウルトラマン自体が、

2016-12-14 06:32:06
生命情報保存研究所 @rodan670

先達に当たるウルトラマン群の中から二体ずつを抽出し、その個性特性を融合させ、自らに取り込むことを基本戦略としており、古の存在達を再び画面に送り出すために自身の個性領域の少なからぬ割合を譲渡した道具と化している部分がある。

2016-12-14 06:39:23
生命情報保存研究所 @rodan670

こうして作品内世界はそれが最新シリーズであることの証明として何体かの新怪獣を世に送り出しつつも、それに迫る数のリバイバル集団に占拠され、私物化されていく。しかしこれは決してネガティブなことではない。

2016-12-14 06:42:48
生命情報保存研究所 @rodan670

ゼットンやバルタン星人といった、そのキャラクター性や歴史的経緯の集積により、記憶に焼きついた人気怪獣については、視聴者は常に自らの傍らにおいておきたいという心理に駆られる。傍らに置くとは今まさに同じ時間を生きる事であり、即ちリアルタイムにて最新のそれが描かれた回を目にする事である

2016-12-14 07:08:03
生命情報保存研究所 @rodan670

新しいウルトラシリーズを希求するファンらの声の何割かは、再び往年の名怪獣をこの瞬間に目にしたいという要望から構築されている。この視点に立つとウルトラマンの新作は、あくまでかつての人気怪獣を定期的にリアルタイムに出現させるための舞台装置にすぎないとの見方も成り立つ。

2016-12-14 07:13:50
生命情報保存研究所 @rodan670

ウルトラシリーズは時代を超えて古の怪獣達に現在の存在であるという地位を与えるための保存機関でありノアの箱舟である。しかしいかにその護送船団に囲われていようと、現在に再登場したとき、古の怪獣達はそれに見合った形質変化を余儀なくされる。

2016-12-14 07:25:16
生命情報保存研究所 @rodan670

古の人気怪獣達は魅力的な敵であるがゆえに再登場のたびにバリエーション化される。あるいはそのキャラクターの特性を引き出し突き詰めるため、あるいは最新のシリーズに出現させる上での言い訳として、いずれにせよ半ば強迫観念に迫られたかがごとく、その都度彼らは姿を少しずつ移し変える。

2016-12-15 02:36:23
生命情報保存研究所 @rodan670

例に挙げたゼットンにせよ、もはやゼットン自体が一つのシリーズ化しているといえるほどのバリエーション、亜種が存在しており、完全にオリジナルの姿のままで画面に再登場してくることはあまりない。これはノアの箱舟の内部で生じた進化であるとみなせる。

2016-12-15 02:43:45
生命情報保存研究所 @rodan670

ただ、もしウルトラシリーズが、往年の人気怪獣を繰り返しリアルタイムに浮上させ続けるための舞台装置であると仮定するなら、この形質変化はその本懐に沿っているとは言えない。そこで求められるのは、怪獣と、その怪獣が初登場した回、及びそれを目にした日の記憶の、経時劣化からの保護なはずであり

2016-12-15 02:52:33
生命情報保存研究所 @rodan670

ならば、人気怪獣のバリエーション化は、度を越せば進化というより単なる劣化にすぎなくなる。 その意味では、先日ウルトラマンオーブ22話に現れたノーバは、回収される人気怪獣の中では極めて特異的な立ち居地にある。

2016-12-15 02:55:33
生命情報保存研究所 @rodan670

1975年、ウルトラマンレオ49話にて初登場を果たした円盤生物ノーバは、その後ウルトラマンメビウス(2006)、ウルトラギャラクシー大怪獣バトル(2008)、大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(2009)、ウルトラマンオーブ(2016)と4度回収されているが

2016-12-15 03:01:53
生命情報保存研究所 @rodan670

そのいずれにおいても目立った形態変化は見られない。自棄になってデザインされたような悪夢のテルテル坊主様フォルムそのままである。これは再登場するたびにバリエーション化されるゼットンなどとは対極的である。

2016-12-15 03:09:03
生命情報保存研究所 @rodan670

それもそのはず、このノーバという怪獣が人気となり、初登場時から40年以上たった今でも最前線に投入されている所以には、その造詣の群を抜いたシンプル性がある。赤いテルテル坊主に鞭と鎌状の腕をつけただけのデザインはどちらかというとオブジェに近く

2016-12-15 03:12:08
生命情報保存研究所 @rodan670

それがあくまで怪獣としてウルトラマンなどと闘っている姿は視聴者に強烈なインパクトを与える。 ウルトラマンオーブ22話にて、このノーバとともに地球侵略を試みるブラック指令は、「シンプルイズザベスト、最近の怪獣はごちゃごちゃしてていかん」とメタ的な発言を残すが

2016-12-15 03:21:54
生命情報保存研究所 @rodan670

この言葉にノーバの特性のすべてが凝縮されている。いかなるデザインの付け足しも、この怪獣においてはその唯一最大の魅力を削ぎ落とす結果にしかならず、ゆえにこの怪獣は何度再登場しようと昔と同じ姿で現れる。

2016-12-15 03:23:41
生命情報保存研究所 @rodan670

このウルトラマンオーブ22話のストーリーは、同じ地球侵略の野望を抱くものの、夢破れ、次々と去っていく知己の宇宙人達に紛れ、自らもまた地球を後にしようとしていたブラック指令が、唯一その夢を諦めていなかった相棒のノーバに勇気付けられ、最後の足掻きを試みるというものである。

2016-12-15 03:29:25
生命情報保存研究所 @rodan670

話は侵略者側の視点で描かれ、哀愁と懐古の雰囲気に満ちている。もともと4,50年前に全盛期があり、当時からのファンを今も多く抱えるウルトラシリーズにおいては、懐古はもはや切っても切り離せない大きなテーマとなりつつある。

2016-12-15 03:31:48