【wlw二次創作SS】マッチ売りの少女は本当に助けるべきなのか

救うだけが優しさではないことを知るも、御伽話の主人公として自分の為すべき事を信じるアシェンプテルbot しかしこの本を出すほど旅好きで、元役者志望で、母親を亡くして、寝床に「死んでません」とかメモ残してるハンスさんって一体何デルセンなんだ…? 【追記】ハンスおめーマグスクラウンだったんだってなあ!!!
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童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

12月31日…大晦日。この日に深い縁のあるキャストが一人いたな。 突然だが、人を救うというのは尊い。だが大変な事だ。私も…一度そんな誤ちを犯した事がある。丁度去年の今頃だったかな?これはそんな昔の思い出だ。 (また長いお話を始めるアシェンプテルbot)

2016-12-31 00:02:07
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「マメール、言われていた世界に来たぞ」 『了解です。ではヴィラン討伐よろしくお願いします』 「私も早くキャストとして戦いたいぞ」 『貴女はまだ戦士としては未熟です。今は裏方の仕事に徹してください』 「分かったよ。どうせ私はシンデレラになりたての小娘だ」

2016-12-31 00:04:50
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

『最初の7人には入れませんが、正式なキャスト入りもそう遠くないでしょう』 「7人…ね。あの童話の主人公達か。童話の話が真実だなんて信じられないな」 『私達にとっては、貴女も童話の主人公なのですけどね』 「まあぼやいても仕方無い。ヴィラン討伐、やってやるさ」

2016-12-31 00:06:45
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「………おかしい。マメール!言われた場所にヴィランいないぞ!」 『そんな筈は…。移動したのかもしれません。もう少し捜索を』 「ああ、分かった。…この気配は?(私の中に少しある闇の因子と同じ物…)」 『アシェン様?』 「こっちだ。今確かにいた!だが…気配が消えかかっている?」

2016-12-31 00:07:05
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ここだ。…え?」 『どうかしましたか?』 「ヴィラン、スノーマン…既に倒されている」 『何ですって…!?』 「バカな。一体誰が…!?マメール!少し切る!」 『えっ?アシェンさー』 「おい!大丈夫か!?おい!?起きろ!!何でこんなところに子供が!?」

2016-12-31 00:07:33
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「何だこれは…!こんな薄着に裸足で!凍傷…いや、凍死してしまうぞ!」 「…。」 「意識はある。待ってろ!こんな子供、絶対に死なせない!すぅ…おい!私の鳩達!!!」 パタパタ… 「雪山まですまない!私はこの子をおぶって下山する!先に宿でお湯を沢山沸かしておいてくれ!できるだろ!?」

2016-12-31 00:09:19
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ただいま!…湯も湧いているな。よくやったお前達、ありがとう!さて、凍傷は体全部をあっためるのだよな。待っていろ、大丈夫だからな…」 「よし、やる事はやった。あとはこの子次第か。マメール」 『アシェンプテル様!何があったのです』 「子供が倒れてたんだ。だが助けた」

2016-12-31 00:09:44
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

『子供を…?』 「ヴィランの近くにいた。凍死しかかってたがもう平気だ。壊死もしてない」 『…少し見せてもらっても?』 「ああ、この子だ」 『それは…マッチ売りの少女』 「ん?知ってるのか」 『そうですか。助けてしまったのですね』 「ん?助けて『しまった』?」

2016-12-31 00:10:01
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「待て。しまったとは何だ。私はこの子を助けたのだぞ」 「はい…。それはたしかに尊い行動ですが…」 「…?」 「マッチ売り…これは…如何しましょう」 「マメール、何だ?何が不都合なのだ?」 「それは…」 「説明し辛いなら代わりに私が説明しようか?マメール女史」

2016-12-31 00:14:28
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

『貴方は…!?』 「何だ、旅行者…?マメールは知ってるのか?」 「名乗るほどの者じゃない。しがない旅好きの渡り人だよ。それより君か。鳩を操り火起こしをさせていた魔女は」 「私は魔女じゃない。それに操ってもない。この子達にはお願いして、やってもらっていただけだ」

2016-12-31 00:14:54
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ほお?やはり旅は良い。面白いものを見られる。でも鳩は面白いけど、君の行為は面白くない」 「…どういう事だ?」 「何故、ようやく死ねそうだったその子を死なせてあげなかったのかという事だ」 「ようやく…!?」 「そうだ。ようやく死ねそうだったのに」 「お前はこの子を知ってるのか?」

2016-12-31 00:15:27
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ああ、ここらじゃ有名なマッチ売りの少女さ。名前はミクサ。父の虐待に脅えながら売れもしないマッチを売り歩く可哀想な女の子」 「やけに詳しいじゃないか…」 「ずっと見てたからね。興味深い人間だったから」 「ずっと見てた…?助けなかったのか?」 「ああ、苦しんでたが助けなかった」

2016-12-31 00:16:09
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「つまり、見殺しにする気だったのか…!?」 「誤解を招きそうな問いだが、敢えて語弊を気にせずに言うのならば…そうだ。君の言う通りだ」 「貴様!苦しんでいる女の子を知っていて助けなかったと!?外道め!」 「若い。青い。君は知る必要がある。自分のした事を。その少女本人からね」

2016-12-31 00:16:25
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「少女本人から…!?」 「んっ…うっ…」 「君!目を覚ましたか!ミクサ…ちゃんでいいか?」 「…ここは?」 「私の宿だ。もう大丈夫だ。君は…助かったぞ!」 「え…?」 その時、少女ミクサの表情は…絶望に染まった。生きていると告げられながら、死刑宣告を下されたかのような顔。

2016-12-31 00:19:44
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「やっと…」 「ミクサ…ちゃん…?」 「やっと…楽になれると思ったのに」 「これは…!?」 「それが君の犯した罪だ。その子が生き延びてこの先何になる!?また次の日からは父親に扱き使われてマッチを売る日々だ!それしかないだろう!ようやく解脱できた苦しみ!それを君は延長させたんだ!」

2016-12-31 00:20:00
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「私が…?」 下らない正義感で 「私が…?」 身勝手な倫理観で 「私が…この子をまた苦しみに登らせてしまった…?」 「う、うわ…!うわああああああああ!」 バタンッ 「飛び出していった。…少し言い過ぎたかね、マメール女史」 『いえ、あの子はまだ子供ですが…貴方の弁は真実ですから』

2016-12-31 00:20:35
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「少しフォローしてくるよ。…ミクサちゃん、今は現実を受け入れられないかもしれないが、あのお姉ちゃんも悪気があったわけじゃない。君はお兄さんが悪いようにはしない」 「…うん」 「だからしばらくこのおばちゃんとお話しててくれ」 『お、おば…!?ちょっと!?ハンス殿!?』

2016-12-31 00:21:10
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「私が…!?私のせいで…!?私は…あの子の命を救ってあげたのに…そのせいで…!?」 「…よっこいしょ」 「………何しに来た。また、私を責めに来たのか…?」 「まさか。余程応えたと見える。分かってくれたのならそれでいい。あの子はマメール女史にお願いした。少し話をさせてくれ」

2016-12-31 00:25:07
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「私の生まれた家は貧しかった。病で亡くなった私達の事を、私の母親は毎日死に物狂いで働いて養ってくれた。役者になりたいという私のワガママすらも叶えてくれた。…結局私の夢は叶わなかったが」 「それが何か…?」 「まあ聞いてくれ。明日を生きる為だけのお金を母は必死になって稼いでくれた」

2016-12-31 00:25:49

誤:「病で亡くなった私達の事を、
正:「病で亡くなった父の代わりに、私達の事を、

童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「でもそんな無理が続くわけもなく…母は体を壊して亡くなった。その時、私はこう思ったんだ。 『良かったな』って」 「良かった…?喜んだのか?」 「だってそうだろう。本当は辛いのに私達にはいつも笑顔で接する。そんな見ていて痛々しい強がり、こっちが辛くなるばかりだ」 「それは…」

2016-12-31 00:27:12
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「そんな考えもあるのか。私の母は…安らかに逝ったから」 「だが事実だ。母は亡くなって初めて、痛ましい作り笑いではない安らかな笑みを浮かべたんだ。だから私は喜んだ。もうこれで母は苦しまなくて済むんだ。天国でゆっくり休めるんだって。それが『救いの死』だ」 「救いの死…?」

2016-12-31 00:27:39
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「寧ろ『救いの死』は私なんかより君の方が理解しやすいと思うけどね。かつて継母達に追い詰められた『灰かぶり(シンデレラ)』である君の方が」 「私の事を知ってるのか!?」 「旅のお供は本に限る。鳩を使役してるということはアシェンプテルだね?グリム童話は私が生まれてすぐに出た本だ」

2016-12-31 00:29:08
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「私だってそりゃ考えた事もある。毎日アイツらに扱き使われて、死んでしまいたい、死ねば楽になれるって。だからミクサちゃんの気持ちも今なら分かる。1日助かったところで、またアイツらの中に放り込まれるくらいなら、助けないでくれとも思う」 「…。」 「それを…私がやってしまったんだな」

2016-12-31 00:31:28
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「私はあのマッチ売りの少女が、昔の母と重なってしまってね。そこで彼女を見ていた。そして彼女の人生を書き記そうとした。そんな女性が存在していたと。彼女が生きた証として。 だが…助けてしまった者は仕方無い。死にたがってるからって殺してしまえば、それこそ私達の思想は本末転倒になる」

2016-12-31 00:32:03