コセン・ニンジャと失われた与太話 第一話

ミヤコセンセイの力は奪われ、世界は悪魔の力に呑まれようとしていた。その時、あの男が立ち上がる。
1
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

与太話を取り戻す与太話やります。 色々な事は、このタグで。 #kslst

2017-01-13 21:04:40
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「行くんですね。コセンさん」ミヤコ幼稚園の園門の前で、ミヤコセンセイが言った。コセン・ニンジャは振り返る。否、彼はコセン・ニンジャなのか。黄緑の瞳、二つに分けた白い髪、黒いトレンチコート。明らかに格好と姿が違っていた。 #kslst

2017-01-13 21:09:04
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

だが、彼はコセン・ニンジャだ。この理由は後ほど明らかになるだろう。コセン・ニンジャは言った。「ミヤコセンセイ。あんたの力を奪った奴を探さねばならない」「血を、どれだけ流すつもりですか?」「ミヤコセンセイが流す血じゃない。センセイの能力は危険すぎる」 #kslst

2017-01-13 21:14:36
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「それでも、その為にあなたは血を流すのですね。たろりんさんが知れば…」「たろりんは関係ない」強い口調で、コセン・ニンジャは言った。「俺が決めた事だ。センセイの力を奪った奴を殺し、力を取り戻す」ミヤコセンセイの目に、一瞬だけ殺意が宿り、消えた。残ったのは悲しみだ。 #kslst

2017-01-13 21:18:50
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「いいでしょう、コセンさん。しかし覚えておいて下さい。一度その門を出たなら、もう二度と、その門をくぐる事は許されない事を」「元よりそのつもりです。センセイ、お元気で」そして、コセン・ニンジャは、躊躇うことなく門を出た。 #kslst

2017-01-13 21:22:37
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

乾いた風の吹く中、コセン・ニンジャは長い旅に出た。見送る者はなく、その背中には、強い決意と冷たい孤独が染み付いていた。 #kslst

2017-01-13 21:24:57
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

【コセン・ニンジャと失われた与太話】 #kslst

2017-01-13 21:29:58
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

閉店間際のバーに男が入ってきた。黒いトレンチコートの背が低い男。山高帽から二つに分けた長い髪が垂れている。白い髪。男はカウンター席に腰掛けた。マスターが対応する。「ご注文は?」男はすぐに応えた。「ウイスキー。ロックで」やがてグラスが運ばれ、男の前に置かれた。 #kslst

2017-01-13 21:32:04
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

男はグラスを傾け、ウイスキーを半分飲むと、「空気が生暖かい。死人が出るぜ。こんな夜は」気怠げな、しかしはっきりとした口調で言った。「酔っておられますね。水を…」「最近、この辺りで人が居なくなる。ぶち撒かれた大量の血液を残して」その口調はマスターに向けられたものだ。 #kslst

2017-01-13 21:35:41
こっぺぱん @tk4624panzar

血を抜く…チュパカブラ…? #kslst

2017-01-13 21:36:25
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

男は、更にグラスを煽る。「いや、この辺りってのは正確じゃない。正確には、このバーの周りだ。マスター」トン、と空のグラスが置かれる。「満月の夜に、心臓が凍りつく音を聞いたか?」 #kslst

2017-01-13 21:40:08
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

マスターは答えず、目線だけでバーを見渡した。閉店間際。この男の他に客は居ない。「そんな音を聞くわけが…」「日曜日」男は言った。「休日のかきいれどきが定休日。珍しいね。しかも、路地裏に血が撒かれるのも日曜日。偶然じゃない」「…それを証明できますか?」 #kslst

2017-01-13 21:46:57
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「悪魔の証明か?たやすいことだ」男はコートの裾をはためかせ、腰の得物をあらわにした。腰に巻かれた二つのガンベルト。ホルスターは両腰に、それぞれに銃が下がっている。ベルトにひもで巻きつけられた瓶には赤い液体。男はひもを解き、瓶を頭上に放り投げた。 #kslst

2017-01-13 21:50:13
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

そして、左腰に下げられた銀塗りの自動拳銃『タロピストル』を抜き、瓶を撃った。液体が二人に降り注ぐ。すると、マスターの身体に異変が起きた。全身の皮膚は赤く染まり、背中には巨大蝙蝠じみた羽。異常だ。「お前が殺した奴らの血だ、バケモノ」男は悪魔と化したマスターに言った。 #kslst

2017-01-13 21:53:21
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「…見逃してはいただけませんか?ようやく、静かに暮らせそうなんです。食べている人間も、この辺りでは薄暗い噂しか聞かない奴らです」ダミ声に変わったマスターは言う。「お願いです」「口では何とでも言える。お前、子供に手を出したな」マスターの目が見開かれた。 #kslst

2017-01-13 21:58:49
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「本能には、勝てなかったか」「私は…」「俺はどうでもいいんだ、そんな事は。だが、その子の親は許さなかった。六歳の女の子。初めての友達の家に行く途中だったとさ」「私は!」爪が空を切る音は、銃声にかき消された。男の山高帽が地面に落ち、悪魔の胸には風穴が空いていた。 #kslst

2017-01-13 22:02:40
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「あーあ、気に入っていたんだが」切り裂かれた山高帽をちらと見て、男は黄緑の瞳でマスターを睨んだ。右手のリボルバー拳銃、8インチロングバレルの44マグナム銃『クロイトリ』の銃口から、煙が漏れていた。「その…顔…その…銃…まさか…コセン・ニンジャ…」 #kslst

2017-01-13 22:07:08
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

マスターはカウンターにうつむく。棚から酒瓶がいくつも落ちて、割れた。「当たりだ。ハワイ旅行が欲しいか?」「はは…男だと思っていたんですが…意外と…女性的な顔つきで…」「どうでもいいんだよ、俺の顔なんて」男、コセン・ニンジャは『クロイトリ』をマスターの頭に突きつけた。 #kslst

2017-01-13 22:12:39
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「答えろ。お前ら悪魔共に力を与えてるのは誰だ?」マスターは笑う。「答えると…思いますか?」「お前は静かに暮らしたかったんだろ?だが、力を得ると同時に食肉衝動も強まった。そいつが余計なことをしなけりゃ、こんな事にはならなかった」 #kslst

2017-01-13 22:15:41
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

マスターの頭に、あの時の記憶が蘇る。幼い子供。笑いながら駆けていく。転ばないか心配しながら見送る。太陽は高く、夜はまだ遠い。そのはずだった。気づけば、両手は血に汚れていた。後悔と、それ以上に甘い味と香りが、口と胃を満たしていた。 #kslst

2017-01-13 22:19:10
こっぺぱん @tk4624panzar

夜が遠いはずが起こった悲劇… #kslst

2017-01-13 22:21:44
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「…センメツ」「あ?」「…センメツ・ニンジャ…彼にたどり着くには…配下の…持つ…パスコードが必要…です」「ありがとよ。それだけ聞ければ充分だ」マスターは床に落ちている、割れていないウイスキーの瓶を拾い上げた。「おかわりは…いかがです…」「ああ、いただくよ」 #kslst

2017-01-13 22:25:34