バーピアニスト×バイオリニスト【迅嵐】

千 @tige_xxaj

ほとんど独学でピアノ弾いてて楽譜にめっぽう弱い迅くんすごくツボいからそういう迅くんが欲しいです。、

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ジャズピアニストとしてバーとかで演奏して日銭稼いでる迅くんと、コンクールとかで賞をもらうタイプのクラシックピアニストの慶くんと、バイオリンでヨーロッパ回ってる嵐山。演奏会で顔なじみになった太刀川と久しぶりに帰ってきた日本で入ったバーで流れる演奏に一瞬で惚れてしまう。

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演奏が終わってはけようとしてる迅に酒の勢いで声をかけてしまう嵐山。名前を教えてくれないか？って言ったら、知らない人に名前を聞くときはまず自分からでしょ？って荷物のバイオリンケースを指さされる。おれはもう名乗ったもん。ってけたけた笑う顔が演奏中と打って変わって子供っぽく目に映る。

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太刀川さんに野次られながらバーカウンターの対角の少し段を下がったステージに立つ。テキトーに合わせるから好きに弾いていいよ。今日のお客さんは常連さんばっかりだから安心してって笑いながら嵐山を目で促す。どうしても自分の名前を覚えて欲しくて、コンクールで優勝した曲を選んでアレンジする。

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演奏が始まるともう訳が分からなくなる嵐山。次に欲しい音がドンピシャのタイミングで降ってくる。今まで感じたことのないセッション感に目眩がする。好きな音色で好きなリズムで好きな展開で揺さぶられてリードされる。音が鳴り止むと思わず息を切らせてピアノをぐるりと回る。

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迅が耳まで赤くして顔を手で覆って鍵盤に突っ伏してるのを見て驚きながらも、「嵐山准だ、名前、」って自己紹介する。暫くウンともスンとも言わないんだけど「しってる」って消え入りそうに返ってくる。「知ってるに決まってるだろ、ファンなんだ」ってちらりと顔を覆った指の隙間から空色の目が覗く。

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「セッションしてくれてありがとう、一生の思い出になった。本当に大好きなんだ、CD何度も聞いたよ」ってポロポロ溢れる迅の告白に今度は嵐山の顔が赤くなる。「俺の方こそ、さっき君のファンになってしまったんだ、そろそろ名前を聞かせてくれないかな？」「迅悠一っていうんだ、忘れてもいいよ」

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「馬鹿言え、二度と忘れない。迅悠一、だな。」って初対面のはずなのに子供の頃から知ってるみたいな心地よさで話が弾む。演奏の止まった店内で少し退屈したのか太刀川が割って入ってお前ら向こうのカウンターで飲んで来たら？って。さっきの聞いたら弾きたくなってきた。代われよってピアノを奪う。

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嵐山が迅と演奏してて心地よかったのは、迅が何度も嵐山のCDを聞いていたから。ここに音が欲しいんだろうな、おれだったらこうする、そしたらきっと嵐山はこの音をくれるはずだって出会ってもない時からずっと考えてた。まさかそれが実現するだなんて思っていないから、迅はずっとふわふわしてる。

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日本に滞在してる間毎日迅のいるバーに通う嵐山。一番ピアノに近い席でいつも度数の低いカクテルを頼む。お客さん、一杯だけしかおれに落としてくれないの？って軽口言うと、酒は得意じゃないんだ。他の物だったら何でもあげたのになんて赤みを帯びた目で返す。知ってる？それプロポーズって言うの。

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明日フランスに帰るよって話をしてちょっと空気が沈むんだけど「転職しようかな、バーテンになってここで働かせてもらえればずっと迅のピアノを聞いてられる」なんてこぼすと言い終わる前に「絶対ダメ！」って迅が言う。おれがお前のバイオリンが聞けなくなる、そんなの絶対ダメだって怒るから

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じゃあ迅も一緒に来るか？って言われる。待って嵐山、おれつい三日前にお前と出会ったばっかりだよ、そんな相手を無責任に誘わないでよ、お前ってそんなにタラシだったのか？って捲し立てる迅。だってどんなプロの演奏だって、お前のピアノほど魅力的なものはないんだ、それじゃ理由にならない？

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ジャズピアニストの迅くんが嵐山の熱烈なプロポーズに屈して一緒にヨーロッパに居を構えるんだけど、まずパスポートを取るために一月くらいは一人で日本に取り残される。そしていざ荷物を纏めて嵐山の家に着いたら、ごめん仕事が突然入ってしまって一週間くらい帰れないと

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最近嵐山が引っ越した二人住まいのアパルトマンには、解きかけのダンボールがいくつもあって、バタバタしてる中での引っ越しだってよくわかる。無造作にソファに脱ぎ捨てられた服からは嵐山のにおいがするし、ちょっとの間しか居なかったはずの空間でもちゃんと嵐山の痕跡が分かる。

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調律したてのピアノは、嵐山は滅多に弾かないから鍵盤は少し硬め。ピアノはバーにあったものと同じスタインウェイ。CDの詰まったダンボールにコンクールのためのレッスン音声の録音を見つけて、一人でそれを聴きながら時差ぼけの体をベッドに沈める。CDの向こう側に談笑する嵐山の気配を感じながら

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腹が減った、と言う理由ではじめての土地を一人で踏み出す。仕方ない、嵐山は一週間は帰らないって言って居たし、越して間もない家の冷蔵庫はほとんど空だし、とにかく食料を買い込まないことにはどうしようもない。お金は空港で財布の中身全部をユーロに替えたし、別れ際にカードを嵐山から預かった。

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ところで嵐山はおれの事を信用し過ぎなのではないか？という疑念が迅くんにはずっとあるわけだけど、嵐山に言わせれば惚れ込んだ相手に砂をかけられたら、それは自分の魅力がなかっただけの事だって笑いながら言われて以来、逆に悪い考えを起こそうなんて思わなくなっている。(元々そんなつもりない)

千 @tige_xxaj

髪だけセットし直して、到着した時と同じ服で表に出れば、聞き覚えのある声が呼び止める。なんだ、お前また会ったなって、太刀川さんが中庭に向かった出窓から頭を出して。ねぇ、買い物行きたいんだけど色々教えてよ、って言えば、嵐山に借りが作れるなら喜んでって降りてくる。

千 @tige_xxaj

お前日本語以外できんの？って聞かれて全くって答える迅くんに、そんなやつ一人で置いてって嵐山鬼だななんて笑う。本当だよ、おれ不安なのに大丈夫の一点張りだし、あいつはヘーキかも知れないけど太刀川さん居なかったらのたれ死んでたかも知れないのにさ。次から次へと嵐山の愚痴が出てくる迅くん。

千 @tige_xxaj

日本にゃそうそう帰んないからな、一ヶ月あいつ浮き沈み激しくて笑えたぞ。迅に早く会いたいってそればっかりだったし引っ越し手伝わされたし。話しながらスーパーで買い物する迅くんと太刀川くん。途中顔見知りに声をかけられては恋人？って聞かれてるようで、毎回嵐山のだって訂正する太刀川くん。

千 @tige_xxaj

嵐山の荷物の荷解きも含めある程度部屋を整えて、それでも日中暇すぎて太刀川さんと一緒に学校に連れてってもらう迅くん。そこかしこから聞こえる音がきちんと音楽を勉強したことのない迅くんの心を震わせる。嵐山も含めこういうところで勉強してるのかなってどんどん興味が湧いてくる。

千 @tige_xxaj

三日目のフランスの朝、唐突に孤独に襲われる迅。おれ仕事も辞めて日本も離れて、結局一人で、何やってるんだろう。嵐山はずっと憧れで、ファンで、出会えた時には舞い上がったしおれの事を知りたがってくれて泣くほど嬉しかったけど、でもそんなので人生振り回されるべきじゃなかったんじゃないか。

千 @tige_xxaj

嵐山のにおいが薄くなってきたベッドで少しだけ泣く。人の気配を寂しく思うなんていつぶりだろう、最上さんが死んでからずっと一人で暮らしてたのに今更変だって思うのに一度溢れた涙は引っ込むことはなくて、明日日本に帰ろう、それでマスターには頭下げてもう一度働かせてもらおうって決める。