【第四回】一チョロうどん【4*3一本】

ペリ @omz_mnk

「内緒だよ」 そう示し合わせて、深夜に二人で家を出た。買い込んだ菓子も、酒も、この時間も、薄紅の花も、想い出も、全てが内緒。今宵限りの内緒の宴。 「好きだよ」 「僕も」 内緒の告白。内緒の恋人。全てが内緒の夜桜見物。知っているのは桜だけ。#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】 秘密というのは、甘美な蜜だとテレビでも言っていた。大人たちのいうことを素直に信じていたぼくらは、見事に騙されたらしい。どこが甘美か、どこが蜜か。秘密というのは灰汁のように掬ってもすくってもえぐみが抜けない。分かっていながら今日もぼくは唇を重ねる。 #一チョロうどん

不在だけどたまに復活する小夏 @konatsu_numa

【4*3一本】唇がはなれると、秘密だよ、とつぶやいて彼は密やかに笑った。薄暗い物置小屋の中、場違いなくらいに華やかで、怯えるぼくをせせら笑う余裕さえ残して。こんなの間違ってるよ、と震えるぼくの頭を撫でて、どうしてと首をかしげて言うのだ。大丈夫、僕が守ってあげる #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

僕たちだけの秘密だよ。それは幼い時分の甘い誘惑。二人で作った隠れ家、内緒で食べたアイス。いじらしく辿々しかった「秘密」は、大人になるにつれて不穏な苦味を伴った。それでも、美味しいでしょ？シーツに横たわる男は笑顔で告げる。これ程甘美な秘密はないと、ひどく嬉しそうに。#一チョロうどん

ネココ🍀寝落ちからの復活 @necocopy

秘密にしてくれよ。 下がった眉の下から上目遣いのお願いをされる。何を言ってるんだか。あんたの事はぜんぶ、おれのものにするんだから、他の誰にも分けてやらないに決まってる 。でも、それはおれだけの秘密。 #一チョロうどん

あまぐり @amaguri_nemui

よろしくないですね風紀委員長。後ろから話しかければ苦虫を噛む潰したような顔をして再び煙草を咥えていたのを思い出す。秘密の場所を教えてからそこだけで気をぬくようになった危機感の無い兄。緩みきった顔は制服を脱いだ今でも変わらず隣にある。染みついた秘密は俺だけのもの #一チョロうどん

Liquorice @liquorice_1

【4*3一本】「はい、お守り」絶望的なこの状況でいつも彼が使っているトカレフを右手に渡される。どうして、そうつぶやく前に僕の銃の銃口を自らに向ける僕のマリアは薄く微笑んでいた。 「殺されるならお前がいいんだ」きっと渡された銃に弾は無い。 マフィアﾊﾟﾛ #一チョロうどん

twinkle@booth通販中 @ScorpiiCor

【4*3一本】 花筏、そんな言葉をぽつりと呟いた声が酷く淋しげだった。風に舞っていた花弁は何時の間にか川に落ち、薄紅梅の筏を作っている。淋しげな声、その横顔に、反射的に手を強く握り締めれば、痛いよと哀しげな面が平然とそう思いを騙る。 俺の前ぐらい素直になればいいのに。

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】横顔がきれいだと思ったのは、こいつが初めてだった。男に対して、しかも弟に対しておかしいかもしれないが、存外長いまつ毛と、伏せがちな瞼の奥にある陰、そして緩やかに弧を描く唇。「きれいだな」……その、猫。誤魔化すために付け加えた台詞は空滑りしていた。 #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

綺麗だと、ずっと思っていた。素直な心も、他人より自分を傷付ける優しさも、最後まで抵抗できない弱さも。だから、僕は君に迫った。お兄ちゃんからのお願いを断るなんて出来ないでしょう？見上げた瞳は泣きそうに揺らぎ、ボサボサの頭が微かに頷く。いい子だね、僕だけの可愛い一松。#一チョロうどん

佳澄（かすみ） @ksm_h11

苦しんでいる顔が、好きだと思う。 自分で想い描く高い理想に追いつかず、泣きそうに歪む表情など特に。綺麗だと、そう言ったら傷つくだろうか。 それで少しでも、その心に残ることができるなら、それもいいかも知れない。 誰よりも自分を嫌う、その姿に惹かれて止まない【4*3一本】

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】泣きそうに歪んだ表情を、かわいい、なんて揶揄すれば舌打ちされた。「アンタは本当何もわかってない」捨て台詞の様に吐き捨てた一松に、思わず僕はわらってしまいそうになった。「わかってないのはお前だよ」泣く必要なんてどこにもないってことは、教えてやらない。 #一チョロうどん

不在だけどたまに復活する小夏 @konatsu_numa

【4*3一本】からかわれるのは嫌いなくせに、おれのことは散々煽るんだね。子供みたいに頬を膨らませて、不満げに一松が僕を睨んだ。ほら、そんな顔するからかわいいねって言いたくなっちゃうんだよ。お前のせいだろ、と額をこづけば、拗ねて蹲る。ごめんね、ついお前がかわいくて #一チョロうどん

Liquorice @liquorice_1

【4*3一本】右足、左腕、右指、右目。もう動かせなかった。隣で銃を構える男の殺意のある視線に惚れたのだとふと思った。ああ左目が霞んできた。どうせ死ぬなら惚れた視線に殺されたい。僕を殺したことでさえ覚えていてほしい。いい子だね、僕だけの可愛い一松。 ﾏﾌｨｱﾊﾟﾛ #一チョロうどん

0034 @0034ichichoro

【4*3一本】 春の別れの歌を生涯いくつか歌ってきたし、どうでもいい上級生を送り出してきた。なんとなく過ごした学生時代なので俺の記憶にはない… 同級生の兄が泣きながら好きだった上級生を送り出した事と、その顔に新しい感情を抱いてしまった事以外は。 #一チョロうどん

ネココ🍀寝落ちからの復活 @necocopy

ここに前きた時のこと、覚えてる？ そう言い１本の桜の下に立ちどまる。 ああ。あんたとふたりで、あれを掘り出したときのこと。もう地面の下に埋めたりなんかしなくていいよ、そう言って掘り出してくれた。 むこうを向いたままのえり足に、うしろからくちづけた。 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】「僕さぁ、お前のここ好き」いきなり後ろから腕でホールドしたかと思えば、人のうなじに顔をうずめた兄はのたまった。「おまえの襟足、なんか変なにおいする」ちくり、と刺すような痛み。そこから熱と痺れが広がって、ああ今おれは毒にやられたんだと思い知った。 #一チョロうどん

佳澄（かすみ） @ksm_h11

耳鳴りがする。顔に熱が集まって、胸はズキズキと痛んで悲鳴を上げた。 応えてはいけない、許されない。だけど拒絶もできない。 引き結ばれた唇に、男の息がかかる。 「…観念したら？」 もう、逃がす気はないのだと。散々、自分から逃げてきたくせに、目の前の男はそう宣った。 【4*3一本】

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】「観念したら？」弟の唇が、弟の顔が、いや。一松がそう口にした時に、勘弁してくれと天を仰いだ。完全に、もう、やられてしまっている。認めた心臓がやたらめったら自己主張を始めて、頬の赤さを一層増す。「……やだ」震えた声音が、全てのさらけ出していた。 #一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

観念したら？そう煽られた瞬間、ひどい耳鳴りも頭痛も止んでいた。僕のせいにしたいんだったらそれでいい、お前が手に入るのなら。同じ高さにある唇に噛みつき、性急に舌を伸ばす。技巧なんて知ったことか。食んでかじって飲み込んだ弟の味は、これまで食べたどの料理より美味かった。#一チョロうどん

不在だけどたまに復活する小夏 @konatsu_numa

【4*3一本】思いつきで何か始めるのは六つ子の常だけど、こいつが アクションを起こすのはどう考えたって珍しい。「何してんの一松？」深夜の台所で悪戦苦闘している弟に声を掛けると、面白いくらいに飛び上がって驚いている。「それ食べさせてよ僕にも」独り占めなんて許さない　#一チョロうどん

浅海 @asa628mimi

夜の繁華街を歩く。酔っ払ったサラリーマン、カップルに客引き。ぎらぎら眩しいネオンに照らされて、今だけは誰も俺達を見てないと安心する。孤独を隠して楽しむ人々と、不安を見せずに愉しむ二人。さりげなく絡ませた指が振りほどかれることはなく、俺はわざと冷たい耳朶に口付けた。#一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】暦では立派に春だが、夜になると吃驚するほど底冷えする。ちらちら、と視界をよぎる花びらを背景に、銭湯帰りの途を辿ってゆく。どてらはそろそろ要らないだろうが、パーカー一枚では少し寒い。目の前の冷えた耳朶をみて、もう少しの間どてらは脱げないなと考える。 #一チョロうそん

0034 @0034ichichoro

【4*3一本】 夜の繁華街、弟がふと足を止めた…そこは女性に人気のキレイな花屋だった。送別や歓迎のために用意されたそれを見て彼は「これも…花見？」と間抜けは一言を発する。 どう考えても違うから！、って言おうとしたけど…彼の着眼点の鋭さに少し感心してしまった。 #一チョロうどん

ｍｈ @mai021126

【4*3一本】花屋の店先に並んだ、なんて歌った兄はナンバーワンよりオンリーワンだよねなんて宣っている。誰よりも認められることを欲するコイツは自覚していないのだ、あんたが求めているのはナンバーワンで、そして人のオンリーワンというやつをとっくに奪っていることを。 #一チョロうどん