5/3 反英雄メイジスローターとの邂逅戦+α

#GC異聞絶望 イベントにて、魔術師虐殺者との邂逅戦のまとめ。加えて、かつてルゥインが仕えていた「王」の君主グランツァと、戦友の魔法師ヘルムート、彼と行動を共にしていた君主(=寡黙な弓使い)についてなどの小話(予定)。
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ルゥイン(跡地) @gc_luyin

その日も竜は戦場に現れた。 味方がいれば敵を屠り、邪紋使いがいれば殺して混沌を奪う――そんなことを繰り返しを続け、しかし。 その日は竜の眼は躊躇の色に染まり、竜の爪は止まった。 「馬鹿な」 敵の姿の中に、見覚えがあるものがいた。 →

2017-05-03 18:43:50
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

「ヘルムート……」 それは君主の元で生きていた頃、幾多の戦場を共に駆け抜けた魔法師の姿。 レオンハルトに王領を襲われたあの日、そういえば彼は交渉のためにと君主を一人伴って出かけていたか。 呼びかけ、しかし彼に己の姿は分からない。 斬ってしまうのは、燃やしてしまうのは簡単だが。 →

2017-05-03 18:44:01
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

竜の爪が鈍る間にも、彼の魔法に対抗しなければならない味方の魔法師が苦戦している。 早く、早く止めないと――いや何故、彼が条約に敵対する勢力に? せめて自分の手で殺すべきか。 そう悩んでいる間に、彼方から「その男」が現れたことに竜は気づけなかった。 @mageslaughter

2017-05-03 18:45:14
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin そして 「がふっ…」 ヘルムートが、背中から衝撃を受けよろけた。 …背後から、何者かに刺された。知っている限り、ヘルムートは魔法抜きでもそこそこの白兵戦闘技能を持ち、また優れた探知魔法の使い手だった。決してむざむざ戦場で、こうも簡単に背後を刺される術者ではなかったはずだが…?→

2017-05-03 18:57:59
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin ドン、とヘルムートは突き飛ばされ、ルゥインにぶつかるようによろけた。 そこにいたのは、夜色の髪と瞳を持つ、20代後半の男。 夜色の眼と瞳…噂で聞いたことがある、あの反英雄の一人とされる魔法師の特徴と、一致していた。 「魔法師は、殺す」 一斉に光弾が現出し、二人に殺到した。

2017-05-03 19:03:28
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 全く、信じられない。 目の前で起きたことを理解するのに時間が必要だった。 「……ヘルムー、ト」 受け止めたその身体は、温かく美しい赤を溢れさせながらもまだ呼吸をしていた。 だがその傷を、その様子を見れば誰もがこう判断するだろう――彼は、もう助からないと。 →

2017-05-03 19:24:42
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 助からないだけの一撃を、ただ一人の魔法師が、正確に、静かに、あの強かったヘルムートに、与えたのだ。 しかしかつての友の死を悼む時間は与えられなかった。 「メイジスローター!」 噂で知っていた。彼の姿を、彼の名を。 魔術師に圧倒的な死を与えるその漆黒を。 →

2017-05-03 19:24:58
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 竜は受け止めた身体を抱えて地面に伏せる。全身の混沌で鱗を盾にしながらも、無数の光弾を受け止め続けて、しかし内側から修復を続けて、翼には穴が空き、尾の先は焼き切れ、爪は欠けて全身の鱗はところどころ溶けていた――己が黒の混沌を持たぬ身であったなら? →

2017-05-03 19:25:44
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 焦げた匂いを漂わせて、白黒の竜はぐったりと地面に倒れる。 「……き、さま、は」 焼けた喉を絞るようにただ一言発した。

2017-05-03 19:26:02
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin 「…頑丈だな」 反英雄である魔法師虐殺者が出現した僅か数十秒、その僅かな時間だけで、互いに譲らぬ戦況だった場は一変した。 広範囲に降り注ぐ光弾。熱衝撃波の暴威は条約だけでなく、戦っていた敵軍の兵士にも注がれた。 彼は1人で双軍をまとめて殲滅するつもりなのだろう。そして、

2017-05-03 19:53:29
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin#反英雄との遭遇【タグ付け忘れ】) 「さて…次の魔法師は」 竜と、冷たくなっていく魔法師から視線を外し、辺りを見回す。 …すでに殺した相手には眼中にないかのように。魔法師を殺す以外に何の興味もないかのように。 魔法師の虐殺者は、次の獲物を探すかのように、視線を移した。

2017-05-03 19:58:11
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter まるで興味を失ったらしい「魔法師虐殺者」の眼は、追撃するばかりかこちらの方を見もしなかった。 己が少なくとも投影体か邪紋使いであることは一目瞭然であろう。この身に渦巻いているのはただ混沌のみと、黒を纏う彼が気づかぬはずもない。 →

2017-05-03 20:27:31
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 戦場はただ屍広がるだけの荒野と化していた。 なんだ、これは――魔術師ばかりではない。全てを、力持たぬ兵士をも焼き尽くした光。 死の匂いばかりが広がるその光景を、竜は以前にも見ていた。 「……なぁ、メイジスローター」 もう耳を貸す気もないかもしれないが。 →

2017-05-03 20:27:42
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 「魔法師を狩り尽くして……その後に、何を成す?」 あの男は、レオンハルトは、混沌核を己のために掻き集めていたが。 底知れぬ不気味さに、問わずにはいられなかった。

2017-05-03 20:27:50
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin 条約軍の魔法師を含めた部隊を、光弾により殺傷する。 「…殺してからその後に何かをしなければいけないものなのか?」 その口調から、嘘をつく訳でも、とぼける訳でも、嘲る訳でもない響きがあって。 「私はただ、『出来る事』をしている。魔法師が居なくなった後は、まあ好きにしてくれ」→

2017-05-03 21:03:30
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin 魔法師の素質は天賦の才であり、誰もが魔法師となれるわけではない。魔法師となる為の知識の伝承が失われても、自然魔法師の存在があるかのように、ごく少数の魔法師は居続けるだろう。 …聖印も弱り、魔法師とその知識が失われれば…人はやがて文明を獣と変わらぬほどまで退化させるだろうが。

2017-05-03 21:10:44
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 「ただ、魔法師を……殺す」 困るなぁ、と、そう呟く。 光弾の盾となるには癒えきらぬ竜が首をもたげて、魔法師の血に染まった鱗を晒す。 「実は、訝んでおったのよ、あなたは倒すべき敵なのか」 竜は救うことを諦めた。むしろその場所に「救う」命などどこにも残っていないと悟ったがゆえに。 →

2017-05-03 22:30:31
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 竜は朋友の身体を腕に抱えながら宙へと舞った。 「邪紋使いが邪紋使いを……君主が、君主を殺す。それと、何が違うのかと――だが、私の考えは甘かった」 ただ逃げるための飛行の前に、黒の混ざった混沌の血をぽたり、垂らしながら笑った。 「困るな……ふふ、魔法と叡智は、憧れでな」

2017-05-03 22:31:02
ティアシアちゃん仮面@大迷宮(通常は反英雄魔法師虐殺者) @mageslaughter

@gc_luyin 「そうか」 敵対宣言を、しかしただ頷くだけ。 「空を舞い言葉を話す竜が、憧れるほどではないと思うが」 魔法師の息は既に無い。ならば、それを持って逃げる竜を止める必要はない。埋めるのか喰うのかはわからないが。 「では、さらばだ」 虐殺者は立ち去った。 【こちらはこれで終了します】

2017-05-04 01:20:15
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@mageslaughter 立ち去る黒い姿を見つめ、彼が次はどこで魔法師を狩るのかと思うと漠然と心が痛む。 「……また、な」 まだ穴の開いたままの翼で、白と黒を遠い空に浮かべて消えた。 (こちらからも以上です。ありがとうございました。)

2017-05-04 01:33:42
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ヘルムート。魔法師の才をもちアカデミーで十分に学んでいたにもかかわらず、その名と能力を偽って傭兵として仕官したという変わった男だった。能力を偽ったと言ってもそれは魔法の力を隠しただけで、傭兵としての――白兵戦においての実力は本物であった。 #逆理飛旋

2017-05-04 19:31:40
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

彼と出会ったのは彼の真の名が暴かれ、魔法師として正式に、改めて登用された時期のこと。 戦場を翔ける白い翼を、彼は覚えていた。 「竜人さん」 初めて呼びかけられたのは、親しみの籠るそんな言葉によってだった。 #逆理飛旋

2017-05-04 19:32:17
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

その時には君主グランツァの傍に仕えるようになっていた私は、異例の事態の中心人物であった彼を知っていた。 「ヘルムート殿」 無論その名を知っていたのは随分と前からのことで、大柄というわけでもない彼の口から零れる低い声にも聞き覚えはある。 #逆理飛旋

2017-05-04 19:33:07
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

「ご存知でしたか」 名乗る用意をしていたヘルムートは苦笑した。 「……あなたにひとつ、お願いしたいことがありまして」 真っ白な、何も書き込まれていない羊皮紙の束を差し出しながら。 「歌を。書いてくれませんか」 ひどく真剣な眼差しを向けられた。 #逆理飛旋

2017-05-04 19:33:28
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

「……歌?」 私は文筆家ではない、王の抱える詩人に依頼した方がいいだろうと断るも、しかしヘルムートは引き下がらない。 「あなたの歌を聴きました。あれはあなたの声でしょう、白翼さん」 いつかの帰陣の時だ。一度だけ、ふと口をついて歌がこぼれたことがあった。 #逆理飛旋

2017-05-04 19:34:08