- yuuyake_kinngyo
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岡崎泰葉「昔、公園で撮影があったんです。ドラマのワンシーンの撮影。私にとって公園って、そういう特別なところだったんです。遊園地……ってほどじゃないですけど、でも、別の世界にきたみたいだった」
2017-05-02 17:19:21「その公園に、大きな池があったんです。ううん、子供だったから、大きい池だと感じたんでしょうね。不忍池とかに比べれば、赤ちゃんみたいな池です」
2017-05-02 17:19:49「撮影っていっても、ずっとカメラを回しているわけじゃない。打ち合わせもそうですし、天気によっても左右されるんです。晴れているときと、曇っているときでは、撮れるものが違ってきますから。あ、ごめんなさい。プロデューサーさんなら、知ってますよね」
2017-05-02 17:20:19「私の出るシーンが撮り終わって、私だけ時間ができた。いつもなら、他の人のシーンでも見て勉強したりするんですけど、その日は違った。声が聞こえたんです。はい、男の子の声。それで、声のする方に歩いていくと、池があった」
2017-05-02 17:20:57「幅は20メートルもないと思います。小さな池ですけど、そのときは私なんか簡単に飲み込んでしまえそうなほど大きく感じました」
2017-05-02 17:21:45「男の子たちは池を囲う柵の少し向こうにいました。最初は一人かと思っていたんですけど、二人だったんです。Tシャツに短パンで、二人とも手には虫取り網をもっていました」
2017-05-02 17:22:35「その頃の私は子役やエキストラ以外に、同じ年頃の男の子に会ったことがなかったんです。だから、撮影に関係のない子がいるというのが不思議な感じがしました」
2017-05-02 17:24:14「声をかけるなんてことはしませんでした。むしろ、男の子たちから見られないように草陰に隠れたくらいです。見つかったらあの虫取り網で捕まえられてしまう、なんて思ってたのかもしれませんね」
2017-05-02 17:24:34「たぶん小学校のクラスメイトなんでしょう。兄弟というほど歳が離れているようには見えませんでした。でも、本当のところはわからないです」
2017-05-02 17:25:00「私に見られているとはつゆも知らないその二人のうち、活発そうな子が池に入っていきました。見ていた私は、あっ、と声をあげそうになりながら、よく見えるように草陰から顔を出しました」
2017-05-02 17:25:23「池に入っていったわけではなかったんです。池の端に杭のようなものが境界線のように打たれていた。水面から突き出た杭の頭を足場にしていたんですね。それが見えなかったから池に入ったように見えたんです」
2017-05-02 17:25:47「活発そうな男の子は、もう一人の子に向かって、こいよ、と言いました。もう一人の男の子は最初は断っていたのですが、とうとう誘いに負けて杭の上に乗りました。動きがぎこちなくて、落ちてしまうのではないかとはらはらしました」
2017-05-02 17:26:16「二人は池の端を区切るように連なっている杭の上を歩いていきます。そのまま向こうまで行ってしまうのかな、と思っていると、真ん中で止まった。すると活発そうな男の子が区切られた方の池に虫取り網を入れたんです」
2017-05-02 17:26:44「魚を取ろうとしているのかな、と思いました。私にはその池が湖のように見えたので、色んな魚がいると思ったんです。実際、鯉くらいならいたかもしれません」
2017-05-02 17:27:21「細長いゼリーみたいなものの中に、点々と丸いものが入っていました。カエルの卵です。私はそれが何かを知りませんでしたよ。でも、活発そうな男の子が、もう一人の子に向かって、これはオタマジャクシの卵だ、と言ったんです」
2017-05-02 17:28:16「私はそれを見てとても気持ち悪いと思いました。プロデューサーさんも、子供の頃は平気だったけど、いま、虫を手掴みしろって言われたら嫌ですよね。そういう気持ちだと思います」
2017-05-02 17:29:05「私はその気持ちから逃げ出すようにその場を離れました。撮影しているところに戻ると、私を入れて新しくシーンを撮ることになりました。台本にはなかったシーンです」
2017-05-02 17:29:33「それが終わった頃には池でのことなんて忘れていました。ずっと撮影が続いていたような記憶だったんです。だから、この話をしたのはプロデューサーさんがはじめてです」
2017-05-02 17:29:51