勇者たちの夢のあとさき

世は大転生時代! ―――― の10年後の話である。 そんな時代に異世界転生した新たな勇者の物語。
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帽子男 @alkali_acid

「でもなあああ!!ほかの奴等は異世界でエルフの王女とかといちゃついてんだろ?なんで俺だけこんな…何もない…おい空の色が地上と同じになってんぞ…灰色じゃん!!…ひでえ…なんでサービスレベルだけ落ちてくんだよ…」

2017-05-27 23:59:23
帽子男 @alkali_acid

「くそーエルフの姫ーエルフの姫ー…エルフの…しくしくしく…カレー食いたい…」

2017-05-27 23:59:49
帽子男 @alkali_acid

「カレー…カレーがない…エルフもない…転生やりなおして。誰かとシナリオ交換してえ…ってまたゲート開いた!!おいなんか落ちてきたぞ…血まみれでうわキモチワルイ触手みたいのがいっぱい生えてオエッ」

2017-05-28 00:00:47
帽子男 @alkali_acid

「お、おい君、だいじょぶか…」 「う…うああ…」 「だいじょぶ…かなー。とりあえずこの触手みたいの抜くね…うわ内臓出そう…なにこれ…」 「あぐ」 「ひっ」

2017-05-28 00:01:34
帽子男 @alkali_acid

「だ、大丈夫ですか?」 「ここは…」 「あー俺のいる異世界っていうか」 「そうか地獄か…俺にはふさわしい」 「失礼じゃね?」 「妙にディティールの少ない人型…ひどい地獄の悪魔もいたもんだな…まあいい俺の幻覚だとしても最後の話し相手にはなる」

2017-05-28 00:02:44
帽子男 @alkali_acid

「ディティール少ないって、あ、ほんとだ…マイクラよりひどいなこれ」 「俺は…俺が転生したのはハードな異世界だった」 「語り出したよ」 「甘っちょろいハーレムもの、ご都合主義の現代知識無双なんかじゃない…人間の悪意と…とてつもない化け物の出る」 「あー一時期はやったはやった」

2017-05-28 00:04:05
帽子男 @alkali_acid

「だが…きつすぎた…きつすぎるシナリオだった…誰もついてこれない…多分あの頃には…もっと救いのあるシナリオは売り切れだったんだろう…俺は戦って戦って、わずかな希望をさぐって戦ったが…結局全滅エンドだった」 「ありがちありがち」 「俺は思ったよ。ハードにすればいいってもんじゃない」

2017-05-28 00:06:01
帽子男 @alkali_acid

「俺は絶望の化け物に変わってしまった人類をこの手で殲滅し、たった一人で超能力すべてを駆使して最後の決戦に挑み、再生の機会をつかもうとしたが、正直無理だった」 「あれだよね。多分そこでうまくいくやつはほかの誰かがやっちゃってたんだよね」 「そうかもな…そういう訳で」

2017-05-28 00:07:47
帽子男 @alkali_acid

「最後の次元爆弾は俺を巻き込み、別の空間へと吹き飛ばした…それがここだ…くそ…どうせなら…エルフの姫のいるところに」 「わかる!」 「…」 「死んでる…」

2017-05-28 00:08:21
帽子男 @alkali_acid

「あ、塵に還ってく…すーぐこれだもんな…まあ墓掘らなくてすんでいいけど…はあ…なんかこう…もっと…エルフの姫が落ちてこないかなー…空から…お、おお、空にかなりモアレした稲妻が…また何かが…女の子だ!!!!!!!女の子だあああああああああああああ!!!!」

2017-05-28 00:10:13
帽子男 @alkali_acid

「って地表に落下したとたん塵にかえるんかーい!!くんかくんか…匂いもしねえ…匂いぐらい設定しといてくれよ…」

2017-05-28 00:10:47
帽子男 @alkali_acid

「おああああ!!また女の子だ!どんどん女の子が降ってくる…あ、また塵に…また…そしてまた…なんだってこんなに雨みたいに美少女が降って塵にかえるんだ…なにが…ぼんやり見えるぞ…静止した世界だ…でかい玉座にはうつろな美青年が座ってる…あれは…ってまた女の子だ!!今度は生きてる!!」

2017-05-28 00:12:11
帽子男 @alkali_acid

「キャッチ!ゲット!!エルフ!!これで勝つる!!」 「あ、あなたは…」 「勇者です!!」 「勇者様…そう…あなたも勇者なのですね…ではここにも後宮が」 「まだないですが!!これから作れるかも!」

2017-05-28 00:13:07
帽子男 @alkali_acid

「後宮がない…それはよいことですね…」 「へ?」 「勇者様が、世界に飽きて放置されても…皆苦しまずに済みます」 「はあ?」 「私の世界は…失敗した世界でした。勇者様がそうおっしゃっていました。ありきたりで、魅力に薄く、続けていくだけの価値がないと」

2017-05-28 00:14:17
帽子男 @alkali_acid

「ええええ?こんなかわいいのに?」 「ふふ。ありがとうございます。勇者様はおっしゃいました。転生をやりなおし、ここは永遠<エターナル>として捨て去ると」 「じゃあ一緒に行けばよかったじゃないですか」 「私たちはいらないのだそうです。私たち後宮の女に魅力がないから」

2017-05-28 00:15:25
帽子男 @alkali_acid

「だからこそ失敗だったのだと。もっと魅力ある女のいる異世界をはじめからやりなおすのだと、勇者様はおっしゃり、そしてある日、瞳から光が消え、がらんどうの人形になったのです。私達の世界はすべてが止まり、朽ち、崩れてゆきました」 「…それで…空から雨みたいに女の子がいっぱい…」

2017-05-28 00:16:39
帽子男 @alkali_acid

「私達の世界は…男が滅び、女だけになっていました。勇者様だけが唯一の男だったのです」 「え、いいなあそれ」 「でも…もう終わり…最後にお話ができてよかった…さようなら」 「ってまた死ぬんかーい!!」

2017-05-28 00:17:26
帽子男 @alkali_acid

「あーもったいない…何千、何万の女の子が空から降ってきて、全部塵になってしもうた…しかしなんか…変だなさっきから…あんまり縁起でもない客ばっかり…まるで…お、ゲートだ。結構客多いな!そこはいいとこだなこの異世界…さっきの失礼やつ!!」 「…元気だなお前」

2017-05-28 00:18:55
帽子男 @alkali_acid

「え?」 「異世界のどこもかしこも廃れ始めてるのに、そうかお前流行に後れて乗ったやつだな」 「どこも?かしこも?」 「ああ、まさかお前だってずっと異世界転生の勢いが続くと思ってないだろ」 「いや、どうだろ」

2017-05-28 00:20:18
帽子男 @alkali_acid

「終わりだよ。当たり前のことだけどな。シナリオをやり尽したら、あとはゆっくり衰退していくしかないんだ…俺はずいぶんあちこち見て回ったが、みんなくすんだ色になってきてる…勇者は皆飽き飽きしてる。うんざりだ。ばかばかしいのさ」 「いやーそんなことは」 「多すぎるのさ。転生者が…」

2017-05-28 00:21:58
帽子男 @alkali_acid

「あとまあ何百万分の一かぐらいは生き残るだろう…だがこんな規模ではやれない。みずみずしさ、生きのよさ、要するに生命ってやつがもう枯れてきてるんだ…おっと…俺もそろそろか」 「え?」 「ほら見ろよ。手がこんなふうにきらきら…砂…塵?…ああ…なかなかきれいだ…」

2017-05-28 00:23:31
帽子男 @alkali_acid

「…うわー…うわー…おちこむわー…まじおちこむわー…異世界そのものが廃れつつある?規模が縮小する?え、じゃあ遅れて入った俺はどうなるのこれ?完全にぼっち?いやないない。男の夢だって転生は…これからも…これからもずっと…どうかな…うちの会社だってずっと需要があると思ってたら…」

2017-05-28 00:24:54
帽子男 @alkali_acid

「…ああ…あー…エルフの姫…エルフの姫…きっと…またゲートだ…さっきの船だか龍だか…ああ崩れてく…あれもだめだったのか…よくできてたのに…エルフの姫…エルフの姫来てくれ…死んでないやつ…」

2017-05-28 00:27:07
帽子男 @alkali_acid

「…さ…さま」 「?」 「勇者様…」 「エルフの姫!?」 「はい?そうですが…なぜお分かりに」 「え、まじで来たこれ」 「お願いします勇者様。魔王が我々の世界を滅ぼそうとしています。あなたのお力が必要なのです」 「やった!!」

2017-05-28 00:29:05
帽子男 @alkali_acid

「やった…?」 「いやこっちの話…ほかに?女神とか?寝返って味方になりそうな魔族の女とかもいる」 「女神や魔族はおりますが」 「いくいく!!じゃあすぐ行く」 「ではどうぞこちらへ」

2017-05-28 00:29:57