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light_snow
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「ガラスの靴を履けた者が昨夜の貴婦人……王子、畏れながらそれは早計。舞踏会で脱げなかった靴が、なぜ階段で脱げるのか。その靴はレッドヘリングです。昨夜の靴は、ガラスという靴に不向きな素材ながら、ダンスのステップに耐えた……王子、当たるべきはガラス職人、それも最高の技術を持つ者です」
2017-06-03 06:34:05![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「この森は隔絶されているので、毒殺犯は我ら七人の中にいる……王子、それは理屈が通りません。王子や姫がここに来られたからには道は存在し、外部犯の可能性も残るのです。そして王子は高貴な生まれゆえにご存じないが、この林檎は輸入品。この林檎が手に入るのは港がある……たとえば、王都ですな」
2017-06-03 06:43:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「王子、あなたが用いたのは、最も卑劣な凶器です……善意ですよ! 困った人を助けるために力を貸して欲しいと言われ、彼はあなたの善意を信じたからこそ、精一杯に力を尽くし、そして冬に間に合わず死んでいった……殺されたのだ! いまになってみれば皮肉な名前ですな……幸せの王子とは!」
2017-06-03 06:48:37![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「被害者は絞殺されていますが、凶器は現場に残されていたロープではありません。ノン、断じて違います。では、ロープ以外に充分な強度を持つ、長くて細いものは、この塔のどこにあるのでしょうか。……おや、どうしました、ミス・ラプンツェル。顔色が悪くていらっしゃる」
2017-06-03 06:52:55![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「この事件ばかりは私にも解けません、完全にお手上げです。犯人の足取りはほぼ全て証拠が指し示していますが、彼女が……女性です、明らかに! しかも足取りのたどたどしい女性!……最後にどこへ消えたのかがどうしてもわからない。泡にでもなって消えてしまったとしか思えない……海の泡に……」
2017-06-03 09:23:04![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「違います。すべての手がかりは王が絞殺犯だと示していますが、王ではない。おわかりになりませんか……黄金製の果物、食器、テーブル……飢えた王……呪いの神託……そうです、(傍点ツキ)王が触れたものは全て黄金になってしまう(傍点オワリ)、ゆえに王が被害者を絞め殺すことは完全に不可能!」
2017-06-03 09:26:22![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「君ともあろう者がどうしたんだ。あの時、王様は裸だったじゃないか」 「裸? 馬鹿を言うな、王はちゃんと服を着ていた……いや待て……もし裸だった、正確には、大多数の人間には王が裸に見えたのだとすれば……す、すべて説明が付く! そうかッ、仕立屋だ、仕立屋がすべての鍵を握っている!」
2017-06-03 09:31:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「では、あのマッチは? いかにも怪しいとお思いになりませんか?」 「……真実を明らかにすることが常に最良だと、もう信じることができないのだ。……この小さな亡骸を弔ってやろう、寒そうで見ていられない……。この娘はマッチを擦り、炎の中に幸せな夢を見た。……それだけでいいじゃないか」
2017-06-03 13:46:02