へるげえむアリス・ロンド『与える者。奪う者』

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はるか @Kurosu_Haruka

「同じ手は使えない!?」 「ええ、お姉様」  わたしとゆりかとホルンは、机を並べてのんきに教室で作戦会議をしていた。なんだかこういうお喋りの時間は楽しい。 「白い人に言われました。次は『死の強制力』を強めると」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 16:47:16
はるか @Kurosu_Haruka

「時間を……止めてようが異世界にいようが……勝利者以外には強制的な死を与えるってさ……」  ゆりかはため息混じりにぼやく。 「き、聞いてなかった」  その話の間、わたしは花子に謝っていた。冷たくしたこと。拒絶したこと。夢を諦めたこと。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 16:49:24
はるか @Kurosu_Haruka

でも花子は、わたしを拒絶した。  夢を捨てた桜は許さないと。もしゲーム中に出会ったら敵同士だと。彼女は、わたしへ言い放ったのだ。 「お姉様。人はわかりあえない場合もあります」 「うん、わかってる。わかってるけど」 「……お姉様」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:14:11
はるか @Kurosu_Haruka

ホルンは青い瞳を真っ直ぐ、わたしへ向けている。心底心配してくれている。たった一度。わたしが落ち込んでいた彼女の心を救った。それだけの理由で。 「それより、今回は一人しか生き残れないなら」 「……だね。ボクたちの中で一人しか生き残れない……」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:16:48
はるか @Kurosu_Haruka

「でも」 「お姉様がいなかったら生きていても意味がないのです」 「な、なにを言って」  ホルンは幸せそうに微笑む。 「どうして、そこまで……」 「仲間と思っていた人間全てに裏切られ、腐っていたあの日。あなたはわたくしの演奏を素敵と言ってくれました」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:30:58
はるか @Kurosu_Haruka

「先輩……」 「誰一人、わたくしの天才的な感性を理解できず、真の美を享受せず、世界の摂理に背いている愚民たち。お姉様は違っていました」  彼女は目を細め、優しく微笑む。なにを言ってるのかさっばりわからないが、心底慕ってくれていることだけは伝わってくる。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:33:26
はるか @Kurosu_Haruka

「私が命の終焉を迎え、真なる美を愚民どもへと伝導する責務を果たせなくなるのは全人類の損失です。心苦しいのですが、ですが──」  ホルンは、わたしを強く抱きよせる。 「お姉様を失うのは世界の崩壊です」 「ホルン先輩、そこまで、わたしのことを……」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:37:35
はるか @Kurosu_Haruka

「お姉様のため。灰咲ホルン、『トロフィー』を集めて参ります」  彼女はわたしから離れ、こちらち背を向ける。 「先輩、まさか一人で」 「すべて集め終わった暁には、私を殺して『トロフィー』を奪ってください」 「そ、そんなことできるわけ!」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:40:11
はるか @Kurosu_Haruka

「どうかご無事で。必ず、お姉様を探し出し合流します」  ホルンは去り際に、ゆりかへと目配せした。 「ああ……桜はボクが守る」  どうして。平和な世界なら、きっと仲良く友達になれたはずなのに。もしかしたら、みんなでバスケもできたかもしれないのに。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:42:38
はるか @Kurosu_Haruka

「よっしゃ、トロフィーゲットぉ!」 「この調子でクリアーしちまおうぜ!」  左足をもぎ取り、僕たちは死体を足蹴に勝利に酔いしれていた。 「彰といれば、僕はなにも怖くない」 「俺もだぜ、翔矢」  僕たちは無敵のコンビだ。三人を殺す試練も簡単に突破できた。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:50:41
はるか @Kurosu_Haruka

からだアツメげえむ。 トロフィー保持者。 頭→枝垂桜 胴体→? 右腕→? 左腕→? 右脚→香坂桔梗 左脚→二河翔矢 生存者二十二名。 生存者上記外名前あり。 星川きらり。加賀彰。百合鴎ゆりか。華村花子。香坂桔梗。彼杵ソノ。灰咲ホルン。 死者三名。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 19:56:30
はるか @Kurosu_Haruka

なら。今度のゲームもきっと頑張れば二人で突破する道も──  その瞬間信じられないことが起きた。彰の首が笑顔のまま宙に舞う。 「え……?」 「あは! その表情、悪くないね〜」  首を失い、鮮血を吹き出している彰の背後に、忽然と女が姿を現した。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:11:17
はるか @Kurosu_Haruka

「男にしては朝可愛いよぉ〜」  笑いながら、女は彰の体を蹴り、こちらへ傾ける。吹き出る鮮血が僕の顔へと直撃する 「うわ! 目が!」 「ぷっ、なぁに、そのアホらしいリアクション!」  にゃはっ。そう笑い、彼女は僕に剣を振り下ろす。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:16:46
はるか @Kurosu_Haruka

「およ? 目んめ、めーないはずなのに」 「なぜかわせるかって?」  ──それはね。  僕は剣を靴底で受け、さらに逆の脚で彼女の頬を蹴り飛ばす。 「ぎゃい……!?」 「仇を討てと! 彰があなたの位置を教えてくれるからさ!」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:24:06
はるか @Kurosu_Haruka

視界共有。それが僕の力だ。彰の死体。彼の目はまだ死んではいない。そこから映る情報を僕は見、そして── 「せりぃあああ!!」 「にゃぎ……!?」  彼女の顎を蹴り上げ、さらにその腹部へ回し蹴りを叩き込む。 「視界を奪っても無駄だよ」 「て、てんめぇ」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:27:34
はるか @Kurosu_Haruka

「その声は星川きらりさんだね」 「いかにも」 「僕は女性の命を奪うのは好まない。たとえ彰の仇でもね」 「ふーん」 「さっさと逃げたまえ」 「あのさぁ……」 「うん?」  彰の視界から見える彼女の表情。不快感いっぱいといった顔だ。 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:30:48
はるか @Kurosu_Haruka

「命に男も女も関係ねェだようがよォ!!!!」  きらりは口からなにか液体のようなものを、こちらに向かって吐き出す。 「溶けろ、この男尊女卑やろ──」  僕は右足を軸に回転し、なんなくその液体をかわす。 「僕は女性を尊んでるよ」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:33:55
はるか @Kurosu_Haruka

「ああ? テメェの発言、きらりちゃん、いちいちムカつくんですけどぉ〜」 「不快に思ったなら謝るよ」 「どうせ、テメエも女と見ればヤることしか考えて──」  きらりは剣を構え前傾姿勢で突進してきた。 「ねぇんでしょうかよォ!!!!」  激しい斬撃。   #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:37:21
はるか @Kurosu_Haruka

僕は右脚の蹴りで剣撃をすべていなす。 「断じてそれはない」 「あん?」 「僕は女性と性的関係を持つことに興味はない」 「なんだお前。男はみんなヤりたがりのクズでしょぉ?」 「僕は違う!!!!」  視界が戻り、僕は学生服を脱ぎ捨てる。 「な!?」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:39:47
はるか @Kurosu_Haruka

「見たまえ! このスクール水着を!」 「お、女物だって!?」  そう。僕は制服の下にスクール水着を着用している。 「な、なんでスク水きてんのぉ?」 「何故ならば、彰がスク水フェチだからさ」 「ほ、ホモさん?」 「それも違う。彰は女の子が好きなんだ」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:41:42
はるか @Kurosu_Haruka

「ごめん。私さ、自分のこと大概頭おかしいって思ってるけど、あんたってなんていうか。正気ですか!?」 「僕は正気だよ!」  強い言葉に、きらりはたじろぐ。 「僕はね、女性とスケベをしたいなんて思わない」 「そ、そっか」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:43:52
はるか @Kurosu_Haruka

「スク水を着ている僕に欲情した彰に襲われたいんだあ!!!!」 「ほんまもんのアホだーーーーー!!」 「それなのにあなたは僕の彰を……」  愛していたのに。心から。 「なんかすまんね……」 「仕方ないさ。彼と僕はもともと、どちらかは死ぬ運命だった」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:45:25
はるか @Kurosu_Haruka

「……なんか、しらけちゃったなぁ」 「おや? 逃げてくれるのかい?」 「うんにゃ。しばらく、あんたについてくわ」 「な、なんだって?」 「あんたみたいな男、初めて見たからさ」 「僕はよくいる普通の美少年だよ」 「多分、奇特なタイプだと思うよ」 #へるげえむアリスロンド

2017-05-12 20:47:57