きみとあったかいお茶を

ななん。 @nanan5102

きっかけはほんの些細な事だった。 入学式の日、オリエンテーションも終わり後は下校するだけ。 クラスメイトたちは午後からの遊びの予定を立てるのに夢中だったけれど、むやみに馴れ合うことを嫌う廣光はひとり早々に教室を抜け出していた。 どうせ明日から嫌でも面倒事に巻き込まれる事になるのだ

ななん。 @nanan5102

クラス委員もまだ決まっていないし日直もあるだろう。無駄に関わり合うのは最小限に留めたい。 足早に校門を抜けようとして、ふと入り口の大きな桜に目をやった。 式に合わせたかのように満開に咲いたそれは華やかに青空を彩っていて、それほど花に興味のない廣光でも素直に美しいと思う

ななん。 @nanan5102

その桜の下で、ひとりの女生徒が佇んでいるのが見えた。 廣光と同じく桜の美しさに目を奪われたのだろう。うっとりと花を見つめる少女の顔はうっすらと赤らんで、まるで花に恋をしているようだった。 (うつくしい、な) 少女から目が離せないまま、するりと溢れ出た自分の思考に自分で驚く

ななん。 @nanan5102

自分には縁が無いと思い込んでいた事象。其れに浮かれる他人の話を、何処か冷めた気持ちで切り捨てていたというのに。 思いもよらぬ事態に少し、混乱する。 廣光はその、初めて目にした少女に恋をしてしまったのだった。