Love Is Blue〜エイトの夏休み・安田編

レオナ @leo_msk_tdys

1. 「終わってもうたなあ…」 興奮を引きずりながら、ベッドの上で一人呟く。 今日はツアーのラスト。 ラップで大倉からと、さっきメシ行ったとこで、1日早い誕生日を祝ってもらって、生まれてきた幸せをこの上なく感じていた。 おまけに一週間の夏休みなんて。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

2. 突然空から、いやジャニーさんから降って湧いたご褒美。 せっかくやから、青い空と海を求めてこのまま南へ行こうと、ほろ酔いのふわふわした頭で、スマホを開いた。 「那覇・石垣・宮古、どこにしよかな…ん？」 時刻表上でふと目に留まった、一つの地名。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

3. 「そういや、行ったことないなあ。…え⁈飛行機で40分で行けんの？」 意外と近いんやなあ。 「決めた」 これも何かの縁や。 時刻はとっくに24時を越えて、9月11日。 両親への感謝と未知の場所へ行くワクワク感を抱え、目を閉じた。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

4. 福岡を発ち、再び地上に降り立つと、心なしか潮の香り。 行き先に選んだのは福江島。 五島列島を構成する島の一つで、最大の島。 右も左もわからん土地。 まずは空港内の観光案内所に立ち寄ってみる。 すると人の良さそうなお母さんが出迎えてくれた。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

5. そこで宿をいくつか紹介して貰って、空港近くのホテルを選んで部屋を取った。 いくつか観光パンフレットを貰って、タクシーに乗り込んだ。 島内の交通は路線バス。気ままな旅には少々不便や。 街に出てレンタカーを借り、後部座席にバッグとギターを積み込んだ。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

6. 「えっと…」 空港で貰ったパンフレットを広げて、ざっと目を通す。 「高浜ビーチかあ、ここ行きたいなあ。えーと、こっからやとーー」 ちょっと距離あるなあ。 ビーチまでのルートを確認していると、途中、白い壁が印象的な建物の写真を見つけた。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

7. 「うん、ここ行ってみよ」 時間はたっぷりある。のんびり行くとしますか。 シートベルトを締め、カーステレオのスイッチを入れて、メロンシャーベットのような色の小さな車で、国道を走り出した。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

8. 「ふわぁ、キレイやなぁー」 しばらく車を走らせて着いたのは、入江を見下ろす高台に建つ教会。 木々の緑と、空と海の抜けるような青に映える、白い木造の建物。 見ただけで心が洗われるようや。 一歩中に足を踏み入れると、礼拝堂の心地いい静寂に包まれた。 #LoveIsBlue pic.twitter.com/aE1Ompuqht

拡大

レオナ @leo_msk_tdys

9. 奥へと足を進めようとすると、祭壇の前に人がいるのに気がついた。 跪き祈りを捧げる女性が一人。 静かに立ち上がりこっちへ振り向くと、ハッとした顔をした。 「あ、すんません。びっくりさして」 長い黒髪と大きな瞳の、エキゾチックな顔。 #LoveIsBlue pic.twitter.com/367orlG04U

拡大

レオナ @leo_msk_tdys

10. 「あ、いえ」 澄んだ声とこっちに歩み寄る足音が、礼拝堂に静かに響く。 「観光ですか？」 「あ、はい、東京から。関西弁ですけど」 一瞬キョトンとして、「ほんとですね」とふっと笑った彼女に、思わず見とれた。 なんか…マリア様みたいや、なんて。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

11. 「五島は昔からキリスト教徒の多い所なの。私の家もそう。 そんなに熱心な訳ではないけど、時々こうやってお祈りしに来るの」 礼拝堂を出て入江を望み、挨拶を交わした彼女は、俺より少し年下。 彼女は色々話してくれた。 島のこと、自分のこと。 #LoveIsBlue pic.twitter.com/N6Df7twJy0

拡大

レオナ @leo_msk_tdys

12. 小さい頃から体が弱いこと。 島から出たことがなく、島内もあんまり遠出はした事がないということ。 「あ、でも普通に生活はできるよ。運転もできるし。 体に負担がかかるから長時間は控えてるけど」 その時、一つの想いが俺の中に生まれた。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

13. 「じゃあ、俺に付き合ってくれへん？」 もっと彼女の笑顔を見たい。 もっと彼女を知りたい。 「今、夏休み中やねん。この島、案内して？」 「こんな時期に夏休み？」 「っ、そう！夏は掻き入れ時で！」 と、なんだかおかしな言い訳をした。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

14. 翌日、レンタカーの後部座席にギターを、助手席には彼女を乗せて、昨日と同じ海岸沿いを走った。 「どこ行きたい？」 「どこって、お客さんは章大くんでしょ」 「そうやけどーー」 だって、君にもたくさんの景色を見せてあげたい。 そう決めてん。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

15. 「「きれーーい！」」 二人声を揃えて叫んだ。 着いた先は、俺が一番来たかった高浜ビーチ。 陽の光にきらめく白い砂に、エメラルドグリーン？セルリアンブルー？の海。 都会ではありえへん、目の前に広がる天然色に、非日常を実感する。 #LoveIsBlue pic.twitter.com/xuvHUjaVGn

拡大

レオナ @leo_msk_tdys

16. 「すごいすごい！」 そう言って、隣にいた彼女が駆け出した。 「あっ、ちょっと！走ったらアカンて！」 追いかけてその腕を掴む。 「あ、ごめん。つい」 嬉しそうに、無邪気に笑う彼女が可愛かった。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

17. 次の日もその次の日も、二人で過ごした。 色んな所へ行った。 美味しいものを食べた。 俺のギターを楽しそうに聴いてくれた。 彼女の笑顔をたくさん見れた。 時間を重ねるごとに、俺は彼女に惹かれていった。 でも、島を離れる日は当たり前に近づいていた。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

18. 東京へ帰る前の日、彼女とギターを乗せて、またビーチへ来た。 砂の上に座り、変わらぬ青い海を眺める。 「もう明日、帰っちゃうんだね」 前を向いたまま、彼女が口を開いた。 「ん…また、会いに来てもええかな…？」 彼女から返事は聞こえなかった。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

19. 「…なあ、俺「章大くん」 俺を遮って、海を見ていた顔がこっちを向いた。 「ありがとうね。すごく楽しかった！ …ねえ、最後にまた何か聴かせて？」 彼女は言わせてくれなかった。 俺はギターを抱え直し、弦を弾いた。 ♩ ♩ ♫ ♩〜 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

20. あなたに愛言葉届くかな 思い浮かべてわたし照れ笑い #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

21. 恋の歌が、なんだか哀しく響いた。 ギターが鳴り止むと、聞こえるのは波の音だけだった。 彼女は立ち上がると、ありがとうと言って微笑んだ。 その目に光るものを見たのは、気のせいだっただろうか。 その日はどれだけ夜が更けても、全く寝付けなかった。 #LoveIsBlue

レオナ @leo_msk_tdys

22. 飛行機の窓から外を眺めて、この数日間を思い返す。 彼女との出逢いも、あの笑顔も、言えなかった恋心も、夏の終わりのまぼろしか。 すぐに秋が来て冬になる。 時間が流れても、俺は忘れないだろう。 あの空と海の青さを。 終 #LoveIsBlue 〜エイトの夏休み〜 pic.twitter.com/j5aZ96PjDD

拡大