4時じゃない…

あじさいさんによる偉業, #4ji_janai
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紫藤はるか👺 @AzisaihS

「アハハ、なるほど四時じやないか」そう僕が言うと「お兄さまは何でもご存知なのですね」と彼女は笑つた。僕は彼女の小さな躰を抱いてやりそして小さく謝つた。光を映さない瞳に僕は嘘を吐いたのだ。 #4ji_janai

2011-01-17 02:08:44
紫藤はるか👺 @AzisaihS

彼女は屋上の縁で「世界は毎日死んでると思う」言った。訊くと「だいたい」彼女は髪を押さえ「四時くらいに」笑う。強い「私と君と、三人で」風が「心中しない?」吹いた。僕は首を横に振る。彼女は残念そうな「なるほど」嬉しそうな顔で「四時じゃないものね」僕の手を握った。 #4ji_janai

2011-01-20 01:43:35
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「私、魔法少女なの」彼女は言った。「四時を倒さなきゃ」バールの様な物を振り、言う。「なるほど四時を滅ぼさなきゃいけないんだね」理解しないまま僕が訊くと、彼女は笑顔で頷いた。世界は変わらない。彼女の魔法では世界は変わらない。翌朝のニュースが少し、変わるくらい。 #4ji_janai

2011-01-22 02:32:18
紫藤はるか👺 @AzisaihS

彼女の話をしようか。彼女は気が狂っていた。毎晩、いや毎朝と言った方がいいのかな、とにかく毎日午前四時に、僕の携帯電話に連絡を入れてきていた。「なるほど」という甘ったるい声を耳元に残していったのだ。それはもう律儀に、毎日だった。……え、どうして過去形かって? #4ji_janai

2011-01-25 01:41:14
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「一緒に死にたいね」彼女が呟いて、七十年が経つ。当時を殆ど覚えていないが、その言葉と彼女のはにかんだ笑顔だけは最期まで無くさなかった。ちらと病室の時計を見る。四時まで保つまい。七十年前。学校に忍び込み、深夜ひとり潰えた彼女。僕はようやく、謝ることができる。 #4ji_janai

2011-01-27 02:18:57
紫藤はるか👺 @AzisaihS

僕は彼女を好きになった。彼女は学校の屋上からアスファルトに落ちた。僕は彼女を好きになった。彼女は深夜四時頃通る貨物列車にひかれた。僕は彼女を好きになった。彼女は鉈で自分の手首を叩き落とした。きみが僕を好きになった。僕はまだ死にたくはないから、ごめんね。 #4ji_janai

2011-01-29 03:22:55
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「デスノートを拾ってきました」彼女は黒いノートを机の上に置く。僕は黙ってそれを見つめた。彼女はベッドに腰掛ける。「書いてみましょうか、名前」彼女の目は笑っている。誰の名前を書くのか訊いた。「大丈夫」彼女はペンをくるくるを回す。「消しゴムで消したら生き返るわ」 #4ji_janai

2011-01-30 23:59:34
紫藤はるか👺 @AzisaihS

僕は彼女の携帯にメールを送る。彼女から最後に送られてきたメールを見ると、昨日の午前四時前だった。別れを告げるメール。僕は彼女に、一度話がしたいと言った。昼間、彼女がアパートにやってきた。僕の願いは通らなかった。部屋は暗い。チロリンと、風呂場から音が聴こえた。 #4ji_janai

2011-02-01 00:54:35
紫藤はるか👺 @AzisaihS

肩を揺すられる。「四時よ」僕は目を開けた。彼女が僕の肩を掴んでいる。壁掛け時計を見ると、まだ三時だった。出るのが四時だから、三時半に起こしてくれと言ったのに。僕がそう文句を言うと、彼女はいつもの笑顔を浮かべ、腰に腕を巻きつけてくる。「なら、時間を潰しましょ」 #4ji_janai

2011-02-02 03:00:03
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「子どもの頃」彼女が僕の隣で言う。ベッドの中、彼女は僕の右手を握っている。「四時まで起きてるなんて、有り得なかった」そうだね、と同意する。「もう、子どもじゃないんだよね」まだ四時じゃないよ、と僕は否定する。彼女は涙を浮かべ笑う。「じゃ、もう少し、このままで」 #4ji_janai

2011-02-03 01:36:29
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「私、先輩のこと好きですよ」深夜の学校の屋上。「すごく、愛してます」彼女が右手を握ってくる。何か言おうとすると、彼女は首を振った。「わかってます……せめて四時まで」彼女は夜空を仰ぐ。濡れた瞳には星々が映っていた。冬の冷たい風が、彼女と私のスカートを揺らす。 #4ji_janai

2011-02-04 02:07:52
紫藤はるか👺 @AzisaihS

『ねぇ、先輩。わたしみたいなのは、生きてちゃいけないのかな。今日ね、ひどいことされたんだ。「お前みたいに価値の無いやつはせめて人様の役に立て」って。そうなのかな。ねぇ、先輩。メールください。四時まで、待ってます。お願い、します』僕は携帯の電源に指を伸ばした。 #4ji_janai

2011-02-08 00:35:24
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「……人を殺すよりも、生きる方が難しいの」隅でスーツを着たまま体育座りをしている彼女。僕が入ったときは電気もついておらず、部屋は真っ暗だった。四時程ではないが、十分に深夜だ。彼女の肩に手を押こうとする。指に痛みが走った。彼女は微笑む。「人を殺す方が、簡単よ」 #4ji_janai

2011-02-10 01:17:17
紫藤はるか👺 @AzisaihS

待ち合わせは九時だった。『待ってる』彼にそうメールを送った。駅には電気もついてない。時計は四時前を指している。私は駅の入口の前でしゃがんでいた。寒さに震える指でメールを確認し、すぐに携帯を閉じる。私は立ち上がり歩き出す。カンカンと、踏切の警報が聞こえ始めた。 #4ji_janai

2011-02-11 03:39:58
紫藤はるか👺 @AzisaihS

腕を動かそうとすると、痛みが走る。最後の記憶があるのは昨夜の四時前だ。周りを見回す。自分の部屋だ。腕が動かない。ガチャリと扉が開く。足を引きずる彼女は僕に近づき、口移しで何かを食べさせてきた。その味には覚えがあった。吐き気がした。それが何か、わかったからだ。 #4ji_janai

2011-02-14 02:23:16
紫藤はるか👺 @AzisaihS

雪のベッドで指組み眠る制服の少女。彼女はもう呼吸をしていない。「愛の誓いの翌日に、朝と夜の境界に生まれたの」そう笑った彼女は、数時間前に睡眠薬を飲んだまま、動かない。僕は彼女の傍らで白い息を吐く。せめて、少女が生まれたという四時まで、こうしていようと思った。 #4ji_janai

2011-02-15 02:32:14
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「先輩」唇に触れる彼女の体温。呼吸が止まる。どのくらい経ったろう。今の時間がわからない。夜十時かもしれないし、朝の四時かもしれない。どのくらいたったろう。離れた彼女は、いたずらっぽい笑顔を浮かべてる。「なにを」僕が喘ぎ喘ぎ訊くと彼女は、「地球温暖化防止です」 #4ji_janai

2011-02-21 22:36:18
紫藤はるか👺 @AzisaihS

カチリという音と共に紫煙が立ち上る。「吸うんですね」僕が言うと先輩は目を細めた。「……色々あったんだ、私」「……いまは何してるんです?」彼女はややして「サービス業」と言う。店は十二時で終わりだから、と続けた。先輩の伏せた目を見ると、なんだか胸が苦しくなった。 #4ji_janai

2011-03-24 03:02:20
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「本当はね、四時に呼び出されたの」彼女は打ちっ放しのコンクリートの上にぺたりと座り言う。僕は携帯を握ったまま、彼女を見下ろす。「あやしいなって。だから、先に来て」僕がここに着いたときには、全てが終わっていた。彼女の傍らに転がるアイアンが月明かりを反射してる。 #4ji_janai

2011-03-24 03:19:08
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「お兄ちゃん」彼女が窓の外を指差す。「千年前の人たちも、あの月を見てたんだよね」「四時近くまで起きてないだろ」僕が言うと、彼女はロマンがないとふくれて、「……千年前の人たちも、月を見ながらこんなことしたかなって思うと、燃えない?」同時に頬に温かい感触がした。 #4ji_janai

2011-03-24 03:31:04
紫藤はるか👺 @AzisaihS

お気に入りの赤い靴に白いドレス。お客さんの前でお辞儀します。今日もお客さんと踊るの。楽しい楽しい、せんせいから教わった踊り。あら隣から泣き声が聞こえるわ。私は大丈夫よ。こんなに上手に、お客さんと踊れるのだもの。あの時計が四時を指すまで、お客さんと踊るのよ。 #4ji_janai

2011-03-24 03:47:46
紫藤はるか👺 @AzisaihS

「不老不死?」ベッドの中で僕が訊くと、彼女は真剣そうに頷く。「私は本当は八百歳を過ぎてるの」彼女は続ける。「だから私に四時は来ないのよ」僕はそれを鼻で笑って、彼女の素肌の肩を抱く。「……貴方、おばあ様の写真を見たことあって?」彼女は低い声でそう、わらった。 #4ji_janai

2011-03-24 04:13:12