ツブレアヒルバットチャンけいかく

ツブレアヒルチャンとズバットチャンを交配させてツブレアヒルバットチャンをつくってみよう
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どくどくウール @poisonwool_2

ピーッ…ピーッ…薄暗い部屋の中で何らかの電子機器が一定のリズムで音を鳴らしている。あたりを見渡してみると、ケミカル刺激臭を放つ紫色の液体がそこかしこに飛び散っている。部屋の中心には手術台めいたベッドがあり、拘束具によって顔面の陥没したアヒルが縛り付けられていた

2017-11-08 19:57:44
どくどくウール @poisonwool_2

「コーッ…シュコーッ…センセイ、どうやら失敗のようです」「…ズバットの因子が優ってしまったか。このままではアヒルチャン因子は遠からず駆逐され、ただのズバットになってしまうだろうな」白衣にガスマスク姿の異様な人物と、同じく白衣にメンポの異様な人物がアヒルを眺めながら言葉を交わす

2017-11-08 20:01:12
どくどくウール @poisonwool_2

「シュコーッ…どうしましょう?」「顔面の陥没を固定しておこう。そうすればアヒルチャン因子はギリギリの瀬戸際で生き残る。ツブレアヒルチャンバットけいかくは続行だ。この個体の処置はキミに任せる」「ハイヨロコンデー」白衣にメンポの人物はガスマスクにそう告げると、部屋を後にした

2017-11-08 20:04:33
どくどくウール @poisonwool_2

白衣にメンポの人物、どくどくウールは手術室を出てすぐに色付きの風となって廊下を駆け、「あずかりや」と書かれた部屋に四連続側転でエントリーした。「イヤーッ!」「アイエエエ!?」あずかりやの管理を任されたりかけいのおとこが悲鳴を上げる。ここにきて日が浅く、ニンジャに慣れていないのだ

2017-11-08 20:15:19
どくどくウール @poisonwool_2

どくどくウールは怯えるりかけいのおとこにツカツカと歩み寄り、紫色の目だけでどろりと微笑んだ。口元はメンポで覆われている。「計画は一歩前進です。貴方は良いブリーダーですね」「アッ…ハイ…そう、そうですか。それはよかった!」りかけいのおとこは次第に落ち着きを取り戻し、饒舌になり始めた

2017-11-08 20:21:31
どくどくウール @poisonwool_2

「実際今回は最高のセッティングでした!センセイのズバットチャンと九代目ツブレアヒルチャンの相性もベリーグッド!どのタマゴからも素晴らしい才能を秘めたアヒルバットチャンが…!」「ええ」どくどくウールは適当に相槌を打って聞き流しながら、部屋の中心でじゃれ合うズバットとアヒルに近寄る。

2017-11-08 20:26:20
どくどくウール @poisonwool_2

その顔からは先ほど見せたおぞましい笑みは消えうせ、慈愛に満ちた眼差しであった「ヨシヨシ、今日もありがとうねズバットちゃん」「キキー」「アヒルチャンもガンバったね」「ファイ」「センセイ!!聞いておられますか!今回のデータを元に次はより素晴らしい個体を」「イヤーッ!」「アバーッ!?」

2017-11-08 20:33:41
どくどくウール @poisonwool_2

「私のズバットの毛並みが乱れている。ブラッシングを怠ったな?」「そ…そんなことは」「イヤーッ!」「グワーッ!?」ナムアミダブツ!りかけいのおとこはどくどくウールに手首を捻り上げられ、悶絶する!そして…おお、見よ!その腕が瞬く間に毒々しい紫色に変色していくではないか!コワイ!

2017-11-08 20:38:24
どくどくウール @poisonwool_2

「アバババーッ!」「確かにお前は腕の良いブリーダーだが、捨てるのが惜しいというほどではない。ワカルな?」「グワーッ!?」りかけいのおとこはどくどくウールにもう片方の手首を捻り上げられ、悶絶する!そして…おお、見よ!その腕が瞬く間に毒々しい紫色に変色していくではないか!コワイ!

2017-11-08 20:44:42
どくどくウール @poisonwool_2

「アーイーエーエエエ!」ドロドロと溶ける両腕を見て発狂した男を尻目に、どくどくウールはポケギアで通話を始めた「モシモシ、私だ。やはり孵化作業は私自ら行うことにする。実験はそちらで進めておいてくれ」「キー…」「ファイ」「頼んだぞ…ああっゴメンね二人とも!すぐご飯の用意するからね!」

2017-11-08 20:53:59
どくどくウール @poisonwool_2

ぱたぱたと走りよったどくどくウールは右腕からくろいヘドロを生成してエサ皿に盛り付け、二匹が仲良く食事する様子を穏やかな眼差しで見つめていた。「デザートにウタンの実もあるからね。今の時期は程よく甘酸っぱくてオイシイよ」「キー!」「ファイ!」「アバーッ!」その後ろでりかけいは溶解死!

2017-11-08 21:02:32
どくどくウール @poisonwool_2

「ハァーッ!ハァーッ!…ゲホッ!ハァーッ…!ハァーッ…!」ウシミツ・アワー。森の中を一人の陥没アヒルヘッド女性が、しきりに後ろを気にしながら息を切らして駆けていく。薄紫色の病衣を身につけたその姿は、明らかに夜のジョギングを楽しむ市民ではないことを匂わせていた。

2017-11-09 17:33:41
どくどくウール @poisonwool_2

やがて体力の限界を迎えたのか、アヒルは木陰に座り込んで休み始めた。その顔色は黄色い「ハァーッ…ハァーッ…追っ手は…ゴホッ!来ていない…よかった…」然り。彼女はつい先ほどまで5匹のアリアドスと5人のクローンけんきゅういんに追われていたのだ。一瞬の隙を突いて研究所から脱走したがために

2017-11-09 17:40:13
どくどくウール @poisonwool_2

アリアドスとけんきゅういん達は恐るべきチームワークで以て陥没アヒルを追い詰め、あわや捕獲寸前というところで急に引き返して行った。アヒルには何が起きているのかまるで理解できなかったが、脇目も振らずに走り出し…こうして研究所の敷地内から脱出することに成功した。追っ手も撤退したらしい

2017-11-09 17:45:54
どくどくウール @poisonwool_2

「フゥーッ…これであのファッキン・ラボラトリーともオサラバ…私は自由だ…!」徐々に落ち着きを取り戻した陥没アヒルヘッド女性は脱出成功の喜びを噛み締める。安堵感から力が抜け、顔面の陥没も幾分かやわらいだ「ウップ…まだ腹の中でグルグル言ってやがる…ヘドロなんて食えるかってんだ…!」

2017-11-09 17:58:28
どくどくウール @poisonwool_2

ヘドロを?食べる?読者の中には耳を疑った方もおられよう。だが彼女は実際そのような責め苦にあっていたし、「調整」と称して日々毒々しい紫色の薬品を投与もされていた。全ては三日前、謎の白衣ニンジャに拉致されてからだ。そして…そのときの「彼女」はまだ、陥没アヒルヘッド男性でもあった

2017-11-09 18:06:49
どくどくウール @poisonwool_2

続々と身の回りの人物が美少女、あるいは美女に変化していく怪現象に密かに憧れた陥没アヒルは、望みを叶えてあげましょうという白衣ニンジャの甘言に耳を貸してしまった。そのまま謎めいた研究所に足を踏み入れ、謎めいた薬を飲み、意識を失い、次に目を覚ましたとき、彼は望みどおり女性となっていた

2017-11-09 18:12:12
どくどくウール @poisonwool_2

喜んだのも束の間、白衣ニンジャが一匹の♂のズバットを連れて彼女の病室を訪れる瞬間までだった。そこから先のことはうすぼんやりとしか覚えていないが、しばらくそのズバットと過ごしたことと、いつの間にかドッジボールほどの大きさのタマゴを抱いていたことは記憶にある。あまり思い出したくはない

2017-11-09 18:15:54
どくどくウール @poisonwool_2

謎のタマゴに困惑していると、突如として白衣ニンジャが四連続側転で部屋に入ってきたことは覚えている。ニンジャはズバットを撫で、アヒルにどろりと微笑むとタマゴを受け取って六連続側転で部屋を出ていった。何がなんだかわからなかったが、程なくして彼女は通常病室に移され、「調整」を受けた

2017-11-09 18:19:40
どくどくウール @poisonwool_2

やがてニンジャが満面の笑みをたたえて【毒々毒々毒々毒々】陥没アヒルヘッドのコウモリを【毒々毒々毒々】連れ【毒々毒々毒々毒々】オツカレサマドスエと私に告げ【毒々毒々毒々毒々】ジツを【毒々毒々毒々毒々毒々毒々毒々毒々毒々毒々】「ピヨーッ!」アヒルは自らが上げた苦悶の声で目を覚ました

2017-11-09 18:24:06
どくどくウール @poisonwool_2

「ハァーッ!ハァーッ!眠っていたのか!?クソッ!気を抜きすぎだ!せめてもう少し…開けた場所…に…」そこで彼女は言葉を詰まらせた。見てしまったからだ。ドッジボールほどの大きさのタマゴを

2017-11-09 18:27:00
どくどくウール @poisonwool_2

「タマゴ、ナンデ」理解が追いつかなかった。そして恐怖を感じる前に、自分のものではない声を聞いた「ドーモ、Φ=サン。どくどくウールです」「ぱふぁー」紫色の瞳が四つ、アヒルの隣に浮かんでいた「ニンジャ、ナンデ」「アリアドスが教えてくれました。エライね、お前は」「ぱふぁー」「アイエ…」

2017-11-09 18:33:29
どくどくウール @poisonwool_2

悲鳴を上げる前に片方の紫色の瞳…アリアドスから放たれた糸によって口が塞がれた。それと同時にもう片方の紫色の瞳…どくどくウールが語りかける「怖がらないでください。貴方を連れ戻すだとか、始末するだとか。そういうことをしにきたわけではない」「ンーッ!ムーッ!」「タマゴを、受け取りに」

2017-11-09 18:38:38
どくどくウール @poisonwool_2

「シューッ」タマゴは既にアリアドスが回収していた。どくどくウールはにっこりと微笑んでタマゴを受け取るとアリアドスを撫で、アヒル…Φにどろりと微笑んだ「オツカレサマドスエ。これが最後のタマゴだったので」「ンンーッ!」「ああ、心配無用です。貴方の腹から出てきたわけではありませんから」

2017-11-09 18:46:03