【竜殺しの剣士】

新章第2話
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

艦隊これくしょん-雪花伝- 新章第2話「竜殺しの剣士」

2017-08-25 00:06:51
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ハハハハハッ!」天龍は必死で碧色の刀を振り回して暴れ回る深海棲艦の剣を捌き続けた。暴れ回る、とは言うが、実際は彼女の剣はもっと精巧なものだ。一振り一振りが竜の波動を纏い、細身の剣であるはずのそれは巨大な広刃剣のようにも見える。そのために実際の剣の動きよりも乱雑に見えるのだ。

2017-08-25 00:08:48
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「おい、増援はまだか!?こいつ意味わかんねえ強さだぜ!」「ちょっち待ちいな!今繋いどる!」龍驤は天龍の乱暴な言葉を適当に受け流し、本隊との通信を図った。だが通信ホログラムは起動する様子を見せない。非常用回線もお陀仏だった。

2017-08-25 00:10:11
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「む!」深海棲艦が動きを止めた。彼女の剣の周りに鮮やかなグリーンの光がまとわりついた。雲龍の幻獣、風の精霊シルフだ。シルフが剣を抑えてる間、龍驤の通信が復活した。 「急いで」「りょ!」雲龍は通信がすぐに切れることを暗黙のうちに語った。

2017-08-25 00:11:32
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

龍驤は必要最低限の情報のみを送信して意識を戦闘に引き戻した。「SOS」ただこれだけでいい。救援を求めていることが伝われば居場所は菊月が探知してくれる。 「目障りな!」深海棲艦は刀を乱暴に振るってシルフを払い除けた。シルフ達は霧散して超自然の時空に還った。

2017-08-25 00:12:20
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「ふむ、竜の剣士に竜の召喚士…面白い!」深海棲艦は3人を品定めするようにまじまじと眺めたあと、刀を振り上げながら、得意げにポーズをキメて叫んだ。 「お前達を倒し、私は伝説を作る!さあかかってこい!竜の艦娘たちよ!」

2017-08-25 00:13:20
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「「「……。」」」4人の間に不自然な沈黙が流れた。 「……ん?私何か変なこと言ったか?」「いや、お前誰だよ」天龍が正論を投げかける。この深海棲艦は西方ジャム島海域の任務で、天龍、雲龍、龍驤が本隊と別行動をしていた時に出会ったのだ。

2017-08-25 00:14:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

1人で放浪していた彼女を心配し、天龍が声を掛けた。だが天龍達が名を名乗った途端、急にテンションが上がり、襲いかかってきたのだ。 「む…これはシツレイ。名を名乗っていなかったか。ボスに怒られてしまうな…」深海棲艦は1度刀を鞘に収めて天龍達と距離を取り、再び刀を抜いた。

2017-08-25 00:15:05
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「この剣の名は、ドラゴンスレイヤー!そして私の名もドラゴンスレイヤー!つまり!私は竜殺しの使命を帯びた深海剣士なのだ!」 「何言っとんのコイツ」要するに、こいつは自分たちの名前に「龍」が入っているというだけで襲ってきたのだ。迷惑極まりない話だ!

2017-08-25 00:16:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「そんなに竜の相手がしたいなら山にでも登ったらどうだ。この世界、ワイバーンくらいならそこらの山を探せばいくらでもいるはずだぜ」「そう言うな!竜殺しの前に竜の名を冠する艦娘が3人も現れたんだぞ!これは天啓に違いない!」「嫌な天啓だな…」

2017-08-25 00:17:38
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天啓という部分は否定しなかった。事実、ドラゴンスレイヤーと出会ったのは全くの偶然だ。瑠奈花の割り当てがたまたま自分たちを出会わせてしまったのならそれは間違いなく運命だ。 「しゃーねえなあ…」天龍は剣に衝撃波を纏わせてドラゴンスレイヤーと対峙した。

2017-08-25 00:19:18
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「どうする気?」雲龍が尋ねた。「一戦くらい相手してやるよ。さっきは不意打ち気味で戸惑っちまったけど次はそうはいかない。1回負かしてやれば気も済むだろ」「せやな」龍驤が同意した。天龍がこの発言に見合った実力を持っていることを龍驤はよく知っていた。

2017-08-25 00:20:57
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天龍は決して愚かしいビッグマウスではない。天を掴む龍の名にふさわしい天才剣士なのだ。 「おお!相手になってくれるか!」ドラゴンスレイヤーは眼を輝かせた。彼女も一筋縄ではいかない強敵だが、天龍なら勝てるだろうと龍驤は踏んだ。 「そう上手くいくかしら」一方で、雲龍は懸念を抱いていた。

2017-08-25 00:22:18
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「どした?天龍が負けるとでも?」「そうではないけど、警戒は必要だと思う。あの剣」雲龍が示したのはドラゴンスレイヤーの剣。碧色の刀身が美しい、所有者と同じ銘の刀だ。「さっき、シルフがあの剣を抑えている間だけ、通信が復活したわね」「せやね」

2017-08-25 00:23:03
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「あの剣には何か力があると私は思う。通信だけじゃない。あいつが現れてから私達は艦載機も使えていない」 指摘の通りだ。ドラゴンスレイヤーと邂逅してから、3人は艤装が使えなかった。元々あまり艤装に比重を置かない天龍はともかく、龍驤と雲龍も魔法で戦うことを余儀なくされていた。

2017-08-25 00:24:54
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「それに、さっき「ボス」と言っていたのも気になる…」「察しがいいな、雲のお姉さん」雲龍の考察にドラゴンスレイヤーが反応した。 「この刀は我らのボスから頂いたのだ。ボスが作り出す武器には艦娘と深海棲艦の艤装を無力化する力が備わっているらしい。よくわからんが」

2017-08-25 00:26:54
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「らしいて…ともかく、それでうちらの艤装と通信を無力化した訳か」「私は竜の艦娘らの本当の全力に勝ちたいのだ。だから艤装なんて面倒なものは捨ててかかってこい!」 「面白え」謎の超理論はともかく、天龍にとっては久々に全力を出せる相手だ。昂る気持ちを剣に込め、天龍は一気に斬りかかった。

2017-08-25 00:28:57
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龍驤からの救援信号を追ってきた長良は、突如空に響き渡った重低音の咆哮に思わず耳を抑えた。出処はすぐにわかった。進行方向に(島影に隠れてこそいたが)2体の巨大な翼を広げた竜が召喚されていた。これまでは数分全力疾走する毎に菊月に龍驤の居場所を確認していたが、もうその必要はないだろう。

2017-08-25 00:30:53
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竜の足元がが時折緑と青に煌めいている。その光は激しい剣戟で散った火花によるものだ。長良は部下の艦娘達に隠密行動を指示した。龍驤と雲龍が竜を召喚する程の相手に何の策もなしに飛び込まない方がいいという判断だ。

2017-08-25 00:31:57
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長良は島影から慎重に様子を伺った。そして息を呑んだ。敵はライトセイバーを彷彿とさせる程に輝く竜の波動を纏った剣を振るい、天龍と互角の戦いを繰り広げていた。互いの剣がぶつかる度に波動が霧散し、強烈な閃光が辺りを襲うが、天龍は怯む様子を見せない。

2017-08-25 00:34:09
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しばらく観察を続けていると、戦いは互角ではなく、敵が僅かに上をいっていることに気づいた。敵は天龍の剣を受ける傍らで、不定期に襲いかかる竜の火球ブレスをその都度打ち返していた。恐るべき反応速度だ。

2017-08-25 00:36:29
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「ああ!竜がこんなに!テンション上がってきたァ!」「竜がいるほど強くなるとは、まるで破壊剣士ね」雲龍はある神話で語り継がれる破壊剣の使い手を思い浮かべながら、長杖を振って竜に攻撃指示を下した。竜は空中で速度を上げ、ドラゴンスレイヤーを強襲した。

2017-08-25 00:37:53
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「おお!?」ドラゴンスレイヤーは寸でのところでジャンプして強襲を躱し、そのまま首に飛び乗った。 「ほうほう!」竜は嫌がって暴れたが、ドラゴンスレイヤーになだめられて大人しくなっていった。 「なんやねん。竜殺しの癖に竜を手懐けとるわ」「仕方ない…」

2017-08-25 00:39:24
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雲龍はなるべく竜を高所まで昇らせてから、使役状態を解除して超自然の時空へと還した。 「楽しかった!もう終わりなのか?」竜が消滅したことにより、興奮したドラゴンスレイヤーが落下してきた。落下地点は雲龍の真上だ!

2017-08-25 00:39:54