ニャンニャスレイニャー：ワンハンドレッド・エイト・ニャン・パンチズ
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ネコサイタマ公園には野放図なサイバネティクスと資本主義がはびこり、花壇や噴水やベンチ等には所狭しとネオン看板が溢れ、極彩色の蛍光が夜空を染める。猫と人間のコミュニケーションなど稚気じみた夢。公園の猫たちは空のサンマツェッペリンを見上げ、夜な夜なネオン幻想の電脳世界に逃避する。1
2017-12-31 22:41:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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2017年も年の瀬……。ネコサイタマ公園の一角、ネコネコ寺に続く道には、新年を祝う準備に、無数の屋台が並ぶ。それらの陰、後ろ暗い藪の中で、綿アメやマタタビのハスリングに精を出すものがいた。かれらは、ニャンニャ。平安時代から日本の猫社会をニャラテで支配してきた闇の野良猫たちであった。2
2017-12-31 22:44:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「タノシイくじだよ、タノシイくじあるよ」屋台のおやじがかすれた声を張り上げる。ヒモを引いて、当たれば合体オモチャも当たる。一発チャンスなのだ。なけなしのお小遣いを握りしめた子供が背伸びして、「一回……一回やらせてください！」と言った。「はいよ」おやじはニヤリと笑った。3
2017-12-31 22:50:06
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もうすぐ年越し。除夜の鐘が鳴る。親に連れられ、眠い目をこすりながら、なんとか賽銭箱に10円を入れて甘酒をのむタノシイ・イベントをやり遂げようと、必死の子供だ。真剣にひもを選び、引く。……「はい、はずれ」おやじはニヤリと笑う。子供の表情が濁った。 4
2017-12-31 22:51:55
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「ウッ……」子供の眼に涙が浮かぶ。綿菓子を買ったりもできたはずなのに、合体オモチャの欲に目がくらみ、100円をフイにした。あまりに過酷な大人社会の洗礼である。おやじは「ンンー、どうしよっかなあー」と腕組して呟いた。子供はおやじを見た。やがておやじは言った。「もう100円で3回やれるよ」5
2017-12-31 22:53:58
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「エッ！？いいの？」「だって、おじさん、かわいそうになっちゃってさ。特別サービスで、3倍チャレンジさせてやるよ。あるか、もう100円？」「あ……ある！」これで最後のお小遣いだ。おやじはわざとらしく合体オモチャの箱を揺らした。「やる？」「はい！」100円！3回！全外れ！「あー残念だねえ」6
2017-12-31 22:55:51
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子供は声を上げて泣くこともできず、すごすごと帰っていく。おやじは息をついた。「フー、お、いけねえ……遅刻したらどやされちまう」彼はアガリの入ったセカンドバッグを手に、寺の裏に向かった。「ド……ドクマル＝ニャン。いらっしゃいますか」恐る恐る声をかけると、軒下から大柄な猫が現れた。7
2017-12-31 22:58:29
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「おう。来たか」猫は前肢をなめながらおやじを見た。おやじは震える手でセカンドバッグを差し出した。「い……いかがでしょう」ずしり。「おう。いいじゃねえか。しっかり励めよ」「ありがとうございます！」土下座！ニャムサン！人間が猫に土下座したのだ！ 8
2017-12-31 23:00:22
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読者の皆さんのなかには、この2017年・年の瀬闇社会の真実をご存知の方もおられよう。ニャンニャとは、平安時代をニャラテで支配した半神めいた存在。彼らにとって、人間など、非ニャンニャのクズ同様、アゴで使う奴隷種族でしかないのだ。ニャムアミダブツ！ 9
2017-12-31 23:03:34
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一人また一人と寺にはテキヤが現れ、ドクマルに上納金と土下座を献上していった。この事態を念頭に置き、今一度、寺の前の屋台ストリートをご覧になっていただきたい。見よ。そこには甘酒を傍若無人に飲み散らし、イカ焼きを半かじりで路上に投げ捨て、浮かれ騒ぐニャンニャ達が数多い！支配種族！ 10
2017-12-31 23:07:49
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「ああ！何て事だ！」用事から帰ってきた甘酒係は、荒らされた甘酒コーナーの様相に震撼した。「ナーゴ」「ナーゴ」ニャンニャ達が甘酒の鍋をなぎ倒し、ピチャピチャと舐めている。マタタビと交互に味わうものもいる。退廃極まれり！「やめないか！」「ナオーッ！」「ウワーッ！」ひっかかれ負傷！ 11
2017-12-31 23:11:05
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次々にニャンニャが甘酒係に飛び掛かり、襲い掛かる！事情を知らぬ一般市民は眉をひそめて遠ざかり、闇社会を知るテキヤ達はニヤニヤと笑って見つめるばかりだ。これも年の瀬の掟か！だがその時だった。「ヤメロ！」声が飛んだ。狼藉ニャンニャ達が睨んだ方向、ブチ柄のニャンニャが現れたのだ。 12
2017-12-31 23:13:39
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「なんだァ」「やっつけられてえのかテメェ？」ニャンニャ達がすごんだ。しかしブチのニャンニャは怯まずアイサツを返した。「ドーモ。ブチです」……悪のニャンニャ達がざわついた。（ブチ＝ニャンだと？）（バカな……）彼らは渋々アイサツを返す。「キャンディです」「ピッコです」「メロンです」13
2017-12-31 23:17:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「ちょっと水道のパトロールに手間取っている間に、ずいぶんデカいツラする奴らが増えたじゃねえか」ブチは睨んだ。どこからともなく手下のニャンニャ自警団が現れ、威圧する。「フーッ……」「ここでお前らのハスリングを許した覚えはない」「うるせェー！」キャンディが飛び掛かった！ 14
2017-12-31 23:20:28
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「ナオーッ！」「フギャーッ！」ブチの鮮やかな反撃に、キャンディは吹き飛ばされて腹出し降参した。腹出し降参したニャンニャはもはや負け犬。駄猫としての人生が待つばかりである。「ち」「畜生……」ピッコとメロンが後ずさった。「ボスに報告だ！」「おぼえてろ！」彼らは走り去った！ 15
2017-12-31 23:23:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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……「ネコサイタマ公園はかつてソウカイ・ニャンジケートが支配する無法地帯だった。だが、ラオモト・ニャンが腹出し降参して以来おとずれた平和はいまだ弱く、かりそめだ」裏の藤棚で、ブチは自警団に言って聞かせる。「気を抜くと、次代のラオモトを狙う悪いニャンニャがすぐに忍び込む」 16
2017-12-31 23:27:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ブチは使命感に燃えていた。「俺はあのとき、強いニャンニャに教えられた。真の勇気をな。だから、平和を守り育てなきゃいけない。皆頑張ろうぜ！ニャンニャは人間と共存すべきなんだ」「さんせい！」「さんせーい！」自警団が同意の挙手をした。「おやおや、やってるね」そこにお婆さんが現れた。 17
2017-12-31 23:29:29
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「アッ！清掃員のお婆さん！」「いつも助かるねえ。野良猫の狼藉もあんたらが来たら一発で沈静化した」お婆さんはにこにこ笑った。「さあ、おたべ」お婆さんは差し入れのチューブ入り猫餌、ニャールをニャン数ぶん差し出した。「やった！」「ありがとう、お婆さん！」ニャールを受け取る自警団！ 18
2017-12-31 23:33:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ニャールは魔術的な旨味で知られ、マタタビ中毒のニャンニャがマタタビ絶ちを果たすほどだ。当然、ブチら自警団のニャンニャもニャールが大好きだった。彼らはチューブを剥いて一心不乱に舐め始めた。効果は一分もせずに現れた。「あ……？」ブチ達の表情が虚ろになり、次々に倒れ込んだ！ 19
2017-12-31 23:36:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「ククク……ククククク」お婆さんは肩を揺らして笑った。様子がおかしい！「ざまァないねえ、駄猫ども！」「バ……バカな」ブチはかすむ目でお婆さんを見上げた。力が入らない！「トシお婆さんと俺たちは力を合わせて公園を守る約束を…」「トシ！？そんなババアは今ごろ歌合戦でも見ておるわ！」 20
2017-12-31 23:38:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「ニャンだと！」「ヒヒーッ！」お婆さんは割烹着を脱ぎ捨てた！すると、ニャムサン！そこに居るのはもはやお婆さんではない！卑劣な長毛を逆立てたニャンニャが侮蔑的に笑うばかりだ！「自警団などと粋がって、なるほど噂通りのアホどもよのォー！」「貴様は……！」「ドーモ、ニャメレオンです」21
2017-12-31 23:40:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「そんな……！」「トシ婆さんはもう清掃は仕事納めだ！」ニャメレオンは笑った。「ワシは変装が得意でな。貴様らを騙すなど朝飯前よ。うまかったか？過剰マタタビ入りニャールの味は！」「ウッ……頭が……味が……」自警団は力が入らない！「畜生ーッ！」「ドクマル＝サンに逆らうからこうなる！」22
2017-12-31 23:43:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ニャメレオンは長い爪をきらめかせた。「ワシ一人で貴様らを一網打尽にすれば、ドクマル＝サンも、さぞかし報酬を弾んでくださるじゃろうのォ……！ハッピーニューイヤー待ったなしじゃわい！喰らえーッ！」「畜生ーッ！」その時だ！「Nyasshoi！」 23
2017-12-31 23:46:06