謎のモンスター「オオナイ」「賢いザト」「スノリゴスター」「ユーワーキー」の出典元について、またはジャイアントアントは何故黄金を掘るのか
この本の詳しい説明については、英語版wikipediaの該当ページがあるので、そちらを確認してたもれ。en.wikipedia.org/wiki/Fearsome_…
2018-02-25 22:44:41T&Tでの説明からして、ワニの胴体にやぶにらみのイヌの頭がついていて、子供を誘拐したりいじめるのが好きと奇天烈な設定であったが、元ネタはさらに輪をかけてぶっとんだ生物であった。何だよ尻尾にプロペラがついているって。
2018-02-25 22:47:03みょうちきりんな組み合わせの形態から、てっきり元ネタはルイス・キャロルのナンセンス詩あたりかと思っていたんだが、完全に想定外の元ネタであった。
2018-02-25 22:48:36お次のユーワーキーは社会思想社版『モンスター! モンスター!』では羽根を生やした天使みたいな姿とされているモンスター。後に出た角川版『モンスター! モンスター!』でも、この記述を踏襲して堕天使めいたモンスターにしていて、自分も似たようなイメージを持っていたのだが……
2018-02-25 22:51:25と思っていたら、T&T完全版のブック2にて羽毛が生えているとの記述があり、イメージがガラガラと崩れる。なんか最新版のティラノサウルス復元図として、羽毛恐竜の画像を見せられたような衝撃があったよ……
2018-02-25 22:52:57それはそれとして、最新版復元図というふれこみの羽毛恐竜画像は、往々にして素人の描いたイメージ図を、勝手に最新版復元図と説明としているだけのデマなことが多いので、安易にリツィートする前に調べるクセをつけような!
2018-02-25 22:56:41閑話休題。そんなユーワーキーの元ネタなんだが、こちらはボルヘス『幻獣辞典』経由で小説『ピーター・ウィルキンズの生涯と冒険』と判明。この本は岩波書店のユートピア旅行記叢書の7巻目として翻訳されている。
2018-02-25 22:59:21というわけで早速図書館で借りてきた。原典ではユーワーキーは個体名で、種族名ではないことを知る。さて、この本には挿絵があって、そこに描かれているユーワーキーの同族たちのお姿がこちらなんだが……天使でもなければ羽毛も生えとらんけ!! pic.twitter.com/r5hmj5U3w7
2018-02-25 23:01:34描写を見るに、背中の羽根は凧みたいな構造らしい。なんかもう羽毛恐竜どころではない衝撃であった。なお他の挿絵も、英題である『The life and adventures of Peter Wilkins』でググると色々と出てくるので、そちらでも見ておくれ。
2018-02-25 23:04:32ゼラズニィの小説の登場人物であった“シャドウジャック”を、そういう能力のあるモンスターの一種族として取り込んだり、ツァトゥグア神を羽根の生えたカエル型モンスターにしたりと、T&Tは元ネタから大胆な改変をして取り込むことが結構多いが、どうやらユーワーキーもそのクチらしい。
2018-02-25 23:07:45ただこれには抜け道があって、公式設定のトロールワールドは色んな世界とゲートでつながっているので、こちらの世界の原住生物を別の世界のよく似た動物になぞらえて名前を付けたとか考えれば一応つじつまは合う。
2018-02-25 23:09:50いうならば既知世界のオオカミに外見がよく似た動物だったので、全然違う種類の有袋類四足肉食獣に“フクロオオカミ”と名前を付けるようなもん。個人名であるユーワーキーが種族名として定着するというのも、ギリシャ神話のメデューサがD&Dで種族名になった例もあるし。
2018-02-25 23:12:03「ジャイアントアント」の章
さてモンスターつながりで思い出したネタがもう一つあるのでついでに投下だ。お題は『モンスターコレクション(旧版)』のジャイアントアントの項目。
2018-02-25 23:15:17この本において、ジャイアントアントには黄金を掘り出す習性のあるタイプもいると言われているが、アリが金を掘り出すわけないだろと突っ込んでいる。この黄金を掘りだすジャイアントアントというのは、CD&Dにおけるジャイアントアントのこと。
2018-02-25 23:18:17ツッコミ自体は「そらそうよ」と至極妥当なものだと思っていたのだが、早川書房の文庫版『奇怪動物百科』を読んでいたらこんな記述が見つかった。以下引用。 “プリニウスによると―― 「エリュトラエのヘラクレス神殿に吊るされているインドのアリの触角は奇跡的な大きさだとみなされてきた。
2018-02-25 23:20:19このアリはインドの北、住民がダルド族として知られている国におり、穴を掘って金を採掘する。外見は猫のようで、大きさはエジプトの狼くらいある。アリたちは金を冬に採掘する。それを夏、暑さでアリが穴に隠れるときに、ダルド族の連中が奪う。
2018-02-25 23:22:32しかし、人間の体臭を感知するや、アリたちは打って出て、彼らを八つ裂きにすることもしばしばだ。足の速いラクダに乗って逃げてもやられるのである。それほどこのアリは俊足で、獰猛で、そして金に対する情熱が凄まじい。”(引用終わり)
2018-02-25 23:24:16孫引きだけなのもアレなので、雄山閣出版『プリニウスの博物誌』を確認したら、確かにその記述がある(引用は『奇怪動物百科』より)。まさか黄金を掘りだすジャイアントアントにちゃんと元ネタがあったとは……
2018-02-25 23:26:49こうした黄金を掘り出すジャイアントアントに限らず、ユーワーキー、賢いザト、スノリゴスターなどのモンスターを見るにつけ、RPG黎明期のゲームデザイナーが、新たなモンスターデータ作成のため、色んな資料とか小説を読みこんで取り入れていったのがうかがえる。
2018-02-25 23:28:48まぁその路線の究極系は、小説内の「何か緑色の火柱が上がっている」って描写を「アレはトゥールスチャっていう神格なんですぅー!」って言い出すCoCなんだろうが。 #それはそれとしてトゥールスチャ自体は好きな神格です
2018-02-25 23:31:14ちなみに「アリと金」ならぬ「白アリと銀」については、こんな逸話もあるそうな。wikipediaだが、伝承の項目に「銀を食べるシロアリ」の話がのっている。 ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7…
2018-02-25 23:33:21真偽不明だけど面白い逸話だし、ファンタジー世界なら銀を食べる白アリもアリだろう。アリだけに。
2018-02-25 23:35:55と、しょーもないオチがついたところで今回の投稿はここまで。できれば、CD&Dで1レベルパーティーがGアントの群れに囲まれた時の思い出話とかもしたかったが、それはまた後日ということで。後でオオナイや賢いザトの話と合わせてまとめます。
2018-02-25 23:36:51