愛読書スピンオフ②

❥blue box @sweetblue818

・・愛読書サイドストーリー・・ 【1】 ＊＊＊ 「はぁ？！それっていい人過ぎない？！」 「よく言われる」 枝豆を口に放る。 「隆がしっかりハルちゃん捕まえといてくれたら私だって」 「亮香と章さんはそもそも終わっとったんやろ、俺関係ない」 「ひっど！」

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【2】 仕事上がりふらっと入った立ち飲み屋で出逢って30分。フラれたもの同士仲良くやろうって俺にしてはだいぶ珍しく呼び捨て。 「結構、落ち込んでたりする？」 「結構どころちゃうって」 「だよね」 「そっちは？」 「聞かないで」 「ごめん」 「酒イケる口？」

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【3】 「その辺の男なら潰せる」 「潰さんといてな？」 ビールを追加注文した。

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【4】 ＊＊ 「けどさ、どっかで嬉しかってん」 「ん？」 「あいつが頑張ろうって踏み出したこと。いつも自信なさげで、あきらめることが癖になっててなんかオドオドしてて。小さい時からそれ見てて守ってやりたいって思うようになったんがきっかけやったんやけど」 「好きになった？」

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【5】 「うん。けどなんかなぁ。それじゃアカンねけどなって気持ちもずっとあって。背中押してやりたい、いつか俺がおらんでも大丈夫なあいつになってほしいなって」 「そう」 「だから、最初にダイビングの話聞いた時も、夢中になり始めたときも頑張れ、って嬉しかった」 「うん、」

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【7】 「けどまさか、こういう形で背中押すことになるとはなぁ」 やっぱり出てしまうため息。 「隆、いい奴だね、」 「それ結構傷つくねんで」 「違うよ、わたしが言ってるのは”いい男”のほう」 亮香は明るく笑って背中を叩いた。

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【8】 ＊＊ 「そっちは？そんだけ気が合ってて何で別れたん？」 「古文書研究員」 「は？」 「部屋から出ないで暗い部屋でずーっと古文書解読してるの。その人がきっかけ」 「…話が全然つかめへん」 だね、と明るく笑う。 「章と付き合ってたころ知り合ってね。

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【9】 何が楽しいんだか何の話してるんだか全然わからなくて。その話を章にしてたの」 「うん、」 「そしたら章が、“お前すっごい楽しそうやなぁ”って。そう言って話聞いてる章もすごく楽しそうで」 「楽しそうに他の男の話をする彼女の話を楽しそうに聞く彼氏、」

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【10】 ややこしい、と笑う。 「わたし、章の考えてることだいたい分かる。章が好きなことは好きだし、苦手なものは苦手。それは章も同じ。全部同じ。別れた理由、って聞かれたらそれなのかな。」 「その人とは…？」 「んーん！全然！」 首を振る。 「そっか」

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【11】 ＊＊ 「わたし初めてハルちゃんに会ったときすごい惹かれるな、好きだなって思ったの」 「章さんと亮香は好みが同じ」 「皮肉なもんだよ」 「章の隣にいるのはやっぱりわたしじゃなくてハルちゃんで良かったんだって思う」

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【12】 「亮香もええ奴やな」 「いい女って意味？」 「そうしとこうか」

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【13】 ＊＊＊ 「一人で帰れる？送るで」 「あー、全然平気」 …… 「ぷっ」「アハハ」 二人同時に吹き出す。 「心配されたの久しぶり」 「俺も断られたの久しぶり」 「じゃあな」「じゃあね」

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【14】 ふと立ち止まって見上げた空。 （新しい世界か） 胸の痛みは簡単に消えそうにないけど。 いつもより歩幅を広げて一歩踏み出した。 pic.twitter.com/WQx2Dbz8GC

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