【現パロ】ログまとめ

ログだよ!
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野性の野良 @__noranora

ティイは始め、それを映画の撮影か何かかと思っていた。 そうでもなければ年の瀬のこの寒空、ごみ捨て場に埋もれて呆けている美形なんて、そうそういるわけがない。 ―まァ、二回目っちゃ二回目だけど― そう思いながらも、もの珍しさから彼を観察する。

2017-12-01 15:46:54
野性の野良 @__noranora

@__noranora 金髪にくるくるの癖っ毛。うなじで無造作に束ねて背中に流している。 伏せがちの蒼い目。目の前を見ているようで見ていない。 投げ出された長い足。足元は高級そうな革靴だ。 コートも着ずに、ブラックフォーマル一着きりで――彼は、白い息を吐きながらただそこに座り込んでいた。

2017-12-01 15:50:16
野性の野良 @__noranora

白い肌に、鼻の頭が少し赤い。 何時からそこにいるのだろうか、ティイが彼に気付いてから、すでに30分ほどが経過していた。 今日はクリスマスイヴ。 ヒューゴの家に4人で集まってパーティをするための買い出しの途中だった。

2017-12-01 19:34:56
野性の野良 @__noranora

ヴァレイシュがマスターと話し込みはじめてしまったから、ティイは暇を持て余して外の通りが見える窓際へと腰を下ろしたのだった。 そして、彼に気が付いた。向こうはもちろんティイに気付いてはいない。 言うなれば、格好の『カモ』だ。しかし、誰も彼もが彼の前を通り過ぎていく。

2017-12-01 19:37:15
野性の野良 @__noranora

獲物としては文句ないだろう。 下手したら、財布どころか体にも値が付きそうなのに。 様子のおかしさに、ティイは鼻の頭に皺を寄せた。 「ねェ、ヴァレイシュさん。オレ、ちょっと外に行くね?」 店の奥から、おう、と適当な返事。 それを背に、軽快なベルの音を鳴らしながらティイは店の外に出た。

2017-12-01 22:01:49
野性の野良 @__noranora

「アンタ、なにしてるの?」 「……え?」 わあ、とティイは心の中で感嘆の声を漏らす。 ティイの声に反応した彼は、とても綺麗な青い目をしていた。 ヒューゴさんみたいだ。そう思いながら、すっかり冷たくなった彼の手を引いて立ち上がらせる。 「こんなトコ、いつまでも座ってたら風邪ひくって!」

2017-12-01 22:04:33
野性の野良 @__noranora

「え、と。ちょっと待って、君は…?」 「どーしたの?迷子?財布落とした?アンタみたいな人間、珍しいからすぐにカモにされちゃうよ?」 戸惑いながらも彼は、ティイに引っ張られるまま、歩き出す。 「――それとも、帰る場所がわからなくなっちゃった?」 「………、いや、」 彼の足が止まる。

2017-12-01 23:15:06
野性の野良 @__noranora

どう考えてもわけありだろう。 表情に乏しい顔で、足を止めた彼はティイを見る。 そっと、ティイは彼の手を離した。その手で自分の口元を覆い、彼は俯く。 「帰る場所は……あるよ。帰りたくないだけ」 それがまるで自らに言い聞かせているようで、ティイは首を傾げる。 「なんで?」 「なんで、って」

2017-12-01 23:17:40
野性の野良 @__noranora

「なんで帰りたくねェの?」 無邪気な質問に、彼は困ったように視線をそらす。 「……今はとにかく、あそこには帰りたくないんだ」 「じゃ、ウチ来る?」 「え?」 軽い調子で言ったティイの顔を、彼は驚いたように見やる。 「よくわかんないけどさ。あ、ちょっと待ってて?」

2017-12-01 23:21:51
野性の野良 @__noranora

帰りたくないのならしょうがない。 帰りたいと思うようになるまで、保護してやらなければ。 だってこの人、なんとなくヒューゴさんと似てて――ちゃんと捕まえておかないと、ふわふわとどこかに飛んで行ってしまうような気がして。 「あ、ヒューゴさん?あのね、オレ――今日、そっち行けないかも」

2017-12-01 23:23:26
野性の野良 @__noranora

「……」 ティイが口にした名前に、彼の表情がわずかに動く。 「うん、そう。ちょっと、迷子の人、拾っちゃって。帰りたくないんだってさ。だから、ヴァレイシュさんとこで一晩くらい泊めてあげようかなって」 片手で彼の服の裾をしっかりと握りしめながら、ティイは通話を続ける。

2017-12-01 23:27:26
野性の野良 @__noranora

「だから、今夜は3人で――え、いいの?」 「…あの、僕はいいから、」 振りほどこうとした手を、笑いながらティイはしっかりと握り直す。 「ダーメ!あ、ううん、こっちの話。それじゃ、今から行くね?」 電話口の向こうへ甘く囁いてから、ティイは通話を終了する。 「さ、それじゃ行こっか」

2017-12-02 19:35:29
野性の野良 @__noranora

強引に手を引かれ、慌てて彼はその場に踏みとどまる。 「行くって、どこへ?…というより、僕はいいよ。まだここで」 「ダメだよ。オレ、アンタみたいな人ほっておけないんだよね」 彼と手を繋いだままヴァレイシュのいる店のドアを開け、中へ声をかける。 「ヴァレイシュさん。オレ、先に帰るね?」

2017-12-02 19:46:17
野性の野良 @__noranora

「ん?どした?」 ひょこ、と顔を出したヴァレイシュからは、彼が見えなかったようだった。 「ちょっと野暮用でさ。荷物はオレが持って帰るから、アンタは酒だけ持ってきて?」 「おう、わかった。寄り道すんじゃねーぞ?」 「それはこっちの台詞だよ、バァカ!」

2017-12-02 19:54:08
野性の野良 @__noranora

ケラケラと笑いながら応えて、ティイはその場を後にする。 彼はその手を振り解く事も出来ずに、困ったような顔でとぼとぼとついてきた。 「あ、そーいえば、アンタ、名前は?」 「名前?」 突然振り向いて名前を聞いてきたティイに、戸惑ったように彼は眉を寄せる。

2017-12-02 21:57:49
野性の野良 @__noranora

「そ、名前。一応聞いとかねェと、なんて紹介したらいいかわかんねーし」 抵抗することを早々に諦めたのか、ため息を吐いて彼は言った。 「ガラ…ガーラルド。姓は言わなくてもいいかな」 「イイよ。ここじゃそんなモン、必要ないし」 「…そう。いい場所、だね」 彼の呟きに、ティイは足を止める。

2017-12-02 22:00:13
野性の野良 @__noranora

「あのさ」 振り向いて、まっすぐに彼を見上げる。 何もかも見透かすようなティイの視線を、どこか茫洋とした瞳でガーラルドは受け止めた。 「嫌なら答えなくてもいいんだけどさ。…なんか、あった?」 「……」 それを聞いて、ふ、とガーラルドの口元が震えた。

2017-12-02 22:01:52
野性の野良 @__noranora

「…友達がね……亡くなったんだ。それがどうも、よくない感じに」 「……ああ、」 だからそんな服を着ていたのか。 「で、葬儀に行ったら、追い返されちゃって。僕が殺したんだろう、って」 泣き笑いともつかない表情を、彼は浮かべる。 「だから、顔も見られなかった」 憔悴していたのは、そのせい。

2017-12-02 22:04:17
野性の野良 @__noranora

「あの人は僕の幼馴染でね。色々あってヤクザの組長さんになっちゃったけど、悪いやつじゃなかった。周りからは散々言われたよ。彼とは付き合うなって」 立場が違いすぎたからね、と呟く。 「命を狙われている、ようなことは言ってたんだ。だから隠れているように言ったのに、彼は戦うことを選んだ」

2017-12-02 22:12:30
野性の野良 @__noranora

そこまで言って、ガーラルドは口を噤んだ。 「ごめんね。今の話は忘れていいよ。君が巻き込まれることはないだろうけど」 「ガーラルドさんは、その人のこと好きだったの?」 唐突な質問にも、ガーラルドは静かに笑う。 「そうだね。嫌いじゃなかった。僕のたった一人の幼馴染だもの」

2017-12-03 19:30:59
野性の野良 @__noranora

再び歩き出したガーラルドの腕へ、ティイは横からしがみつく。 「じゃ、今夜はとりあえず飲も!後のことは明日から考えよ!」 「え、と…?」 何時の間にそんなことになったんだっけ、と呟くガーラルドを無視して、ティイはぐいぐいと彼の腕を引く。 「こっちこっち!」 まあ、楽しそうだからいいか。

2017-12-03 19:42:30
野性の野良 @__noranora

感傷を心の奥にしまいこんで、ガーラルドは小さく笑った。 「あのね、ガーラルドさん、鍋は好き?」 「鍋?…うーん…仕事の関係でなら、食べたことはあるけど…河豚とか、すき焼きとか」 「あーゴメン、そんな高級なのじゃないんだけど。ってか、仕事って?」 「秘密」 「えー、何ソレ?」

2017-12-06 20:30:33
野性の野良 @__noranora

「言ったら、怖がられちゃうかもしれないから」 「へー、じゃあガーラルドさんもウラの仕事してんの?大丈夫だよ、ヴァレイシュさんも似たよーなもんだし!」 手を引かれて歩いていくうちに、周囲はますます雑多な雰囲気になっていく。物珍しさにきょろきょろしているガーラルドを、ティイは笑った。

2017-12-06 20:35:30
野性の野良 @__noranora

「こーゆートコはじめて?だけど、あんまり珍しそうにしてるとカモられるから気をつけなね?」 「…ごめん。なんだか、本当に珍しくて」 「中にはタチの悪い連中もいるからさ。ま、オレと一緒なら大丈夫だけど」 さっきだって、オレが声かけてなかったらどーなってたか。

2017-12-06 20:40:02
野性の野良 @__noranora

世間知らず――とは、違うだろう。 この街にいるのが場違いなくらい頭のいい人間だ、という雰囲気がある。 だからこそ、あんな場所で一人浮いていたのだけど。 帰る時もしっかりボディガードしてやらなくちゃ。 「はい、着いた。ここが今日の会場なんだ。――ヒューゴさぁん!連れてきたよー!」

2017-12-06 20:43:36
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