ダイアロス食堂 第二話 『イチゴカレー』
- crosstaichi
- 719
- 1
- 0
- 0
① 世の中には理不尽な組み合わせが存在する。 美女と野獣なんかがいい例だろう。 美しさは個人によって違うからこそ、この理不尽な数式が成り立つというわけだ。
2018-03-02 20:35:14② 当店に置いていうならば美しい全裸を持つ俺の店の店員がスタイル抜群の女性ではない。 これも又、理不尽な数式という事が出来るだろう。 まあこの場合は実務優先という点があるからこそ、理不尽な数式が成り立っているのだろう。
2018-03-02 20:36:26③ さて味覚においても理不尽な組み合わせという物はある。 例えば甘い物と塩気の強いものの組み合わせだ。 どちらの味も個性が強く、両方の味を際立たせると間違いなく不味くなるだろう。
2018-03-02 20:37:16④ しかしだ。 考えて欲しい。 「スイカに塩」という組み合わせは好みの差さえあれ、味にメリハリを与えている。 そう、どんな組み合わせであっても「主役に配慮する」ことさえ気を付ければ何とかなるのだ。
2018-03-02 20:38:25⑤ そういう意味で料理とはプロモーションであるとも言えるだろう。 上手に材料を磨き、最良の状態で提供する調理人プロデューサーのような位置になるはずだ。 素材の個性を活かし、組み合わせ、驚かせる! ふふふ!滾るじゃないか!
2018-03-02 20:40:01⑥ そういうわけで今日の俺は残念レシピのリメイクをしたい気分である。 なあにシェル・レランが公表しているレシピでも実際に食うと微妙な物があるからな。 シレーナはアレンジを好まないかもしれないが、俺は別に気にしない。 他人が考えた料理まで責任は取れないからな。
2018-03-02 20:41:05⑦ そう思いながらレシピバインダーをパラパラ捲ると興味深いものが出てきた。 「イチゴカレー」である。 イチゴの戦士とやらが広めたこのレシピ。 実際はカレーライスにイチゴと練乳をぶっかけただけという、おそまつにも程がある代物だった。
2018-03-02 20:41:33⑧ よろしい。 今日はこのイチゴカレーを俺色に染めてやることに決定!! イチゴは名脇役になれ! 主役のカレーを最高に輝かせるのじゃあああああ!! ゲーーーッハッハッハ!!!!
2018-03-02 20:42:47⑨ バーン! 店員「店長おはようモニ!朝食はステーキがいいもに!!」 ゲーッハッハッハ! 店員「…」 鍋をふるい一心不乱に料理を作る全裸の俺(汗MAX)にもに子君の視線が釘付けになるのを感じる。 美しくてすまんな!!
2018-03-02 20:43:49⑩ モニ子君は椅子に座ると、重々しく一言。 店員「…訴えられたくなかったらとっとと朝食を出すモニ…」 OK、ノアスマホは手から離してくれ。 訴訟は勘弁だ。 最近ガードの奴らは俺を見ると不審者のように見るからな。 全裸の素晴らしさぐらい分かってほしいぜ。
2018-03-02 20:45:21⑪ 店長「さあ食え!イチゴカレーセットだ!」 店員「うぇぁ…!」 露骨に嫌そうな顔をするモニ子君。 店長「なぁに嫌そうな顔をしているんだね?」 店員「だって『あのイチゴカレー』モニ!? 一度食べたけどクッソまずかったモニ!」 さすがモニ子君。 本質をズバリと切り捨てる。 pic.twitter.com/eh2Xv1Stjo
2018-03-02 20:45:58⑫ 店長「まあ御託を言う前に食ってみなって」 俺が皿を前に出すとモニ子君が驚く。 店員「あれ!?これひき肉のカレーモニ! それにイチゴの香りがしないモニ!」 ふふん。 モニ子君の驚く顔を見るのは実に愉快だ。
2018-03-02 20:46:44⑬ 店長「だからセットにプレーンのイチゴといちごミルクを添えさせてもらったぜ」 店員「わっほい!豪華モニ!」 店長「サラダもあるからゆっくり食えよ?」 ワッシワッシワッシ 店員「うんめ!うんめ!うんめ!」 まるで冬眠開けのネオクのようにグリズリーのように貪り食うモニ子君。 怖ええよ。 pic.twitter.com/5EZrr3FZkQ
2018-03-02 20:49:22⑭ クッハー! 満足そうにモニ子君は食後のいちごミルクを飲み干す。 店員「それにしてもイチゴの匂いや練乳の甘みが全くなかったけど店長はこれでいいモニ? イチゴイチゴしてないとイチゴカレーって感じじゃないモニ!」 モニ子君は料理を誤解しているなあ
2018-03-02 20:50:05⑮ 店長「いいかい?ローストビーフを焼くときにハーブを使うだろ? あれは肉の臭みを消すためだ。 つまり料理は『美味しい匂いを演出する』物でもある。 それに色んな調味料を入れても『最終的に美味しい味』にならなければマズ飯だ。」
2018-03-02 20:50:30⑯ 店長「俺は美味い飯しか作りたくないからな!」 店員「店長…」 店長「この美味さを世間に広めるのが俺たちの仕事だよな!」 店員「わかったモニ!何をすればいいモニ!?」 店長「道を往く腹減ってそうなやつに食わせてやろうぜ!! レッツパーリィ!!!」 店員「パーリィ!?」
2018-03-02 20:51:47⑰ 俺の中の信念が俺を自由にする。 美味い物を新たに生み出してそれを食わせる喜び! 可能性の象徴としてイチゴカレーは末代まで語り継がれるかもしれない! その喜びが全裸が想いが。 翼となって俺を羽ばたかせる! さあ!食え! 食って目覚めるが良い! ゲーッハッハッハ!
2018-03-02 20:52:35⑱ ガード「全裸でカレーを持って何をしているのかね?」 肩を掴まれた。 店長「アホか!どう見てもカレーをご馳走しようとしている姿だろ!」 ガード「変態だろうが! カレー!? まさか何かの隠語か!」 店長「ゲーッハッハッハ!お前にもカレーをお見舞いしてやろう!」
2018-03-02 20:54:06⑲ 非凡な実績は時として理解を得難いものである。 常識になるのはなおのことであろう。 俺は大胸筋を高ぶらせながら、ガードにトレードを試みるのであった… 俺たちの昼食はこれからだ!!
2018-03-02 20:54:38⑳ …本日ビスク中央にて謎のパンデモスがフンドシ一枚でトレードを出す事件がありました。 犯人は「美味いイチゴカレーを食わせたかった。後悔はしていない。」 と容疑を認めており現在余罪を追及… 店員「通報しといて良かったモニ…!」
2018-03-02 20:55:04本日の小噺はいかがだったでしょうか。 次回は3月末を予定しております。 皆様の又のご来店を心よりお待ちしています。 あと小噺への感想などありましたらお気軽にどうぞ!
2018-03-02 20:59:14