後輩と彼

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❥❥年下の彼 @bluesweetie83

・・後輩と彼・・ 【1】 (はぁ…) いつもながら長い朝礼。 「つまり業績を伸ばしていくためには個々の努力が、」 (やってるって、) 「要するにこれからは、」 (何も要されてない…) さっきからずっと同じ話を聞いてる気がする。 (……)

2018-03-25 15:19:24
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【2】 話半分で聞きながら今日一日の段取りを頭の中で組む。今日は契約が取れるかどうか勝負の日。そのために休み返上で頑張ってきた。 午前中に先方に確認の電話して。こないだの報告書もあげなきゃ。10時からは別件打ち合わせ。会社出る前にプレゼンの確認もしておきたい。

2018-03-13 22:32:46
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【3】 夕方からの新人研修は頭に入ってる。彰大と一緒だ。 (こんなに朝礼って長かったっけ…) ぼんやりしてきた頭を振った。

2018-03-13 22:33:08
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【4】 ** 「珍しく短かったな、今日の朝礼」 村本くんが呟く。 「…どこが?」 「え、終わるんかなり早かったで?」 「そうだっけ」 わたしに余裕がないからか。

2018-03-13 22:33:27
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【5】 *** 「村本先輩おります?」 午前中パソコンに向かっていると彰大がやって来た。 「あ…何か言ってた」 「何て?」 (○○頼んだで、) なん…だっけ。 「俺内線で呼ばれたんすけど」 「…」 頭が回らない。 「栄斗先輩?」 「…ごめん。えっと、」 「あー俺携帯かけてみます」

2018-03-13 22:34:25
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【6】 「ごめん…」 「ええですよぉ」 部屋を出て行く彰大。 自分の仕事に戻ろうと向き直ったとき手がペン立てに触れた。 (うわ…) 散らばるペンにため息をつく。拾い集めて立ち上が… (…!)

2018-03-13 22:34:54
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【7】 ** 昼休みを告げるチャイム。 みんな席を立った。大きな仕事前に何かお腹に入れようと思いつつも受け付けない。緊張感…? (情けな…) 仕方ない。今日は抜きだ。

2018-03-13 22:35:24
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【8】 *** 「村本先輩!栄斗先輩借りてもええですか?!」 昼休みが半分くらい過ぎたころ、彰大が駆け込んできた。 「どないしてん?」 「トラブってもうて。どうにもこうにもアカンのです!」 真剣な表情の彰大。 「栄斗、」 「うん」 まだ少し余裕はある。

2018-03-13 22:36:18
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【9】 「資料室、来てもろうてええですか」 「わかった」

2018-03-13 22:36:38
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【10】 ** 部屋に入るとすでに広げられた資料。 これって… 「15分」 「え?」 「15分頑張れます?」 「?」 「説明して。今日の仕事」 「ちょっと待って安岡くん。どういうこと?」 「無理やて」 「え?」 身体を引きよせた彰大がわたしの額に手を当てた。 「帰って休んでください」

2018-03-13 22:37:53
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【11】 「彰大…ちょっと待ってよ!仕事だよ?」 「仕事やからや」 「…え、」 「勘違いせんといてください。今日どんだけ続くかわからへんのですよ。相手方とのやり取り中、倒れてもたらどうします?」 「そんなこと…大丈夫だよ」 「アカン。先輩今日、頭全然回転してへん」 「何言って…」

2018-03-13 22:38:36
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【12】 「朝からずっとフラフラやんか」 冷静な口調。 「相手に切り込んで来られたら今日の先輩じゃ応戦でけへん」 「わたしこれまでやってきたの。絶対契約取りたいの」 「せやからでしょ」 「、」 フーッと息を吐いて‟安岡くん”は続けた。

2018-03-13 22:39:27
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【13】 「俺、やれる自信あるゆーとるんです。先輩がやって来たこと無駄にはせーへん。この契約ものにする」 強い視線をぶつける。 「…急すぎるよ。安岡くん自分の仕事だって、」 「わかってます。俺かて勢いで引き受けとるんちゃう。新人研修のほうは経験あるし一人で回せます。

2018-03-13 22:39:57
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【14】 もう一つの取引先のほうにも顔はきくし、仕事内容は頭に入っとる。せやから」 「俺、やれます」 「…けど、」 「先輩。俺に任せてください」 「…、」 「たまには頼れ!!」 …… …… 「…うん」 安岡くんなら。

2018-03-13 22:40:34
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【15】 「…伝えて。うちでやらせてもらえるなら、…」 悔しさと安心感とでこみ上げてくる涙。安岡くんはグッと肩をつかんだ。 「先輩。俺も頭整理する時間ほしいんです。しんどいかもやけど落ち着いて引き継いでください」 「うん」

2018-03-13 22:41:22
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【16】 ** 部屋を出る前、安岡くんは振り返った。 「部屋で吉報待っとって」 自信たっぷりにニヤッと笑うと、扉を閉めた。

2018-03-13 22:41:49
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【17】 *** どうやって部屋にたどり着いたのか覚えていない。 (彰大…) ベッドに倒れ込んだ。

2018-03-13 22:42:22
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【18】 ** 額に感じる大好きな手の感触。 「安岡くん…?」 「んや。彰大やで」 いつもの優しい声。 「…何時?」 「んーっと8時過ぎ」 嘘。深夜をとっくに過ぎているのは空気でわかる。 「お水…」 「うん、俺持ってる」 頭が痛い。彰大の声がぼんやり聞こえる。

2018-03-13 22:43:05
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【19】 「、」 「ここにおるから」 すーっと遠くなってく意識の中。 「安岡く…」 「栄斗先輩。契約とれました。残りの仕事も完璧です。安心してください。」

2018-03-13 22:43:30
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【20】 *** 柔らかな日差しに目が覚める。 「どう?気分」 「うん…」 少しぼんやりするけど、昨日よりずっといい。 「仕事、午前休みとった。昨日の報告上げるだけやし、ここでやる」 ** 「お粥作ってんけど食べれる?」 「ん。ありがとう」 「持ってくるな」

2018-03-13 22:44:17
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【22】 彰大の話すスピードはいつもよりゆっくり。 「ふーっ」 息を吹きかけて冷ます彰大。 「大丈夫だよ、自分で食べられる」 「えーから大人しくしとき」 並んでお粥を頬張る。 「相手方、最初から決めてたみたいやで」 「え?」 「よぉ落とせたなぁ、あの人」

2018-03-13 22:44:47
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【23】 「先輩のおかげでハードル高かったわぁ。俺も必死になってもた」 クスッと笑う。 「俺の顔見たときのあしらい方ったらなかってんで?それでもどうにか取ったろ思て。OK出たときは俺の粘り勝ちや!喜んでんけど。部屋出るとき‟栄斗さんにこれからもよろしく伝えて”って言われた」

2018-03-13 22:45:24
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【24】 違う。相手はちゃんと彰大を見てた。 「あ!けど新人研修ではやらかしてもた」 「え?」 「ムカついてん」 「どういうこと?」 そんな癖がある新人はいなかったはず。 「男!俺が部屋入るなり″栄斗先輩じゃないん?“って顔してんで。アイツら仕事なんやと思てんねん!」

2018-03-13 22:46:53
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【25】 めっちゃしごいたったわ、ってちょっと本気でイラッとしてる? 「彰大もそうだったよ?」 新人研修、栄斗せんぱぁーい♡くっついてきてたころを思い出す。 「ちゃうし!俺はオンとオフはきっちりつけとった!」 「ふふっ、」

2018-03-13 22:48:12
❥❥年下の彼 @bluesweetie83

【26】 「先輩まだ熱でぼーっとしてんねん。もうちょいベッドで休んどき?」 「…ここがいい。」 肩にもたれて目を閉じる。 「ありがとう、安岡くん」 「今は彰大や」 腕を回した彰大はそっと髪に頬を寄せた。 pic.twitter.com/o8yaWBhfeB

2018-03-13 22:48:58
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