#西郷どん 感想＋補足まとめ 第十五回「殿の死」殿は一回で二人死ぬ！井伊直弼大老就任。順調に進行する安政の大獄フラグ…

町田　明広 @machi82175302

西郷はなす術がなく、5月17日、斉彬の指示を受けるために江戸を発って、6月7日に鹿児島に到着、その足で斉彬に報告に伺った。ドラマでは、率兵上京など、すべて西郷が考えたことになっているが、実際はそうではなく、ドラマの進行上の演出。基本、斉彬の意志である。#西郷どん

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残念ながら、西郷自らのコメントは確認することはができないが、斉彬は西郷に対し、将軍継嗣が紀州慶福（家茂）に決定した場合、「天下の禍乱」は必至であり、上京して朝廷を守衛したいと述べたと大久保は語っている（『大久保利通文書』）。#西郷どん

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また、斉彬は今秋の琉球王子を帯同して出府する機会に、精兵3000を率いて上京し、御所を守衛する。そうすれば諸侯の去就も定まり、天下人心の向背も決するであろうと西郷に語ったとしている（高島彌之介『島津久光公』）。率兵上京は、斉彬からのプランである。#西郷どん

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この段階で、斉彬に幕府打倒のクーデターを行うまでの意思はなかったものの、何をしでかすか分からない井伊政権から朝廷を守り、場合によっては、幕府と対峙して幕政改革を要求することを考えていたのだろう。このあたりは、ドラマでも触れられていた。#西郷どん

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斉彬は情報探索と率兵上京の準備を西郷に命じ、6月18日には上方に向けて出発させた。西郷は7月7日に大坂に到着したが、事態はさらに悪化していた。あくまでも、井伊は勅許にこだわっていたものの、6月19日、岩瀬忠震ら現場の判断で条約締結が強行された。この間の事情を整理しよう。#西郷どん

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ドラマでは、通商条約問題はほぼスルーだったが、ハリスは安政5年3月5日に出府し、堀田の帰りを待ちわびたが、ようやく4月24日、会談を持った。堀田は不勅許の事実を隠蔽し、大名の総意を得るためとして、さらに6ヶ月の猶予を希望し、ハリスから90日間の猶予を引き出した。#西郷どん

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ハリスがここまで譲歩した要因は、日米交渉が継続されなければ、すでに会所貿易の線で妥協しているオランダが、日米妥結案を修正した自由貿易を骨抜きにする、日本有利な通商条約を調印する可能性があり、それを回避するためであった。ハリスも必死であった。#西郷どん

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ところが、6月13日、米国軍艦ミシシッピ号が下田に入港し、アロー戦争における英仏連合軍の勝利と天津条約の締結および両国使節の来航を告げたことから事態は急変する。ハリスは堀田に書簡を発し、英仏連合艦隊が大挙して江戸湾に来航することは必至であると伝えた。#西郷どん

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そしてハリスは、イギリス・フランスは日米妥結案での調印に賛同しないことは目に見えており、両国に対して既成事実として示すために、至急アメリカと通商条約を締結することを勧告した。6月17日、ハリスは下田を発して神奈川沖に碇泊して再度勧告を行った。#西郷どん

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6月18日、岩瀬忠震・井上清直と米艦で談判に及んだ。岩瀬は日米が結んだ通商条約をイギリス・フランスがもし拒否した場合、ハリスが調停者として取り持つことを誓約する保証書を求めた。同意したハリスから保証書を受け取った岩瀬は、それを持参して直ちに江戸城に戻った。#西郷どん

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6月19日の城中での大評議は混迷を極めた。調印先送りを唱えたのは井伊大老くらいで、岩瀬らは、現実を直視できずに逡巡する井伊を罵倒するに及んだ。井伊は、まだ約束の猶予期間が40日ほど残っており、その間に勅許を得て、さらには岩瀬ら海防掛などの敵対者の一掃を企図していた。#西郷どん

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井伊の裁断は、勅許を得るまでの調印延期であったが、岩瀬・井上は再び米艦に赴き、その日のうちに、ハリスと日米修好通商条約14箇条・貿易章程7款に調印。井伊が全権委任した岩瀬らに、窮した場合は調印をしてもよいとの言質を与えたため、彼らは調印延期の交渉を一切していない。#西郷どん

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なお、その後、藩邸に戻った直弼は最も信頼する側近の1人、宇津木六之丞に対して岩瀬らの再派遣に至る経緯を説明。宇津木が調印内諾の撤回を求めたのに対して、「公用方秘録」写本によると、井伊は「勅許を待たざる重罪は、甘じて我等壱人に受候決意につき、また云う事なかれ」と諭した。#西郷どん

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この一言は、井伊を肯定する場合に必ず引用されてきた言葉である。同時代人の勝海舟も、この言葉から、井伊は「大丈夫」と高く評価している。井伊は剛毅果断の性格で、我が国を開国に導き、欧米列強の植民地化から日本を救った偉人とするイメージも、ここから出発している。#西郷どん

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しかし、昭和60年代に入って、「公用方秘録」写本は改竄されていたことが判明。実際は真実と大きく乖離し、宇津木は朝廷から言われた通り、調印が諸大名の総意を確認してからではなかったため、朝廷を蔑ろにしたと批判する者がそこかしこに現れ、また、孝明天皇の逆鱗に触れると指摘した。#西郷どん

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それに対し、井伊はその点に気がつかなかったことは残念であるとし、大老職の辞任すら仄めかした。これまでの井伊直弼のイメージとは一線を画するもので、少なくとも、剛毅果断さは感じられない。井伊の人間臭さをそこに感じ取るべきであろうが、その評価をどうするのかは難しい課題である。#西郷どん

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いずれにしろ、事実上の通商条約締結の推進者は岩瀬忠震である。彼は目付・海防掛・外国奉行として安政5か国条約すべての交渉を主導し、実際に署名している。開国の恩人は井伊などではなく、本来は歴史から忘れられている岩瀬である。もちろん、最終的な責任を負ったのは井伊直弼だが。#西郷どん

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岩瀬忠震は、将軍継嗣問題では、慶喜を支持する一橋派に属したため、大老井伊直弼による安政の大獄で作事奉行に左遷され、安政6年には蟄居を命じられた。その僅か2年後の文久元年、死因は判然としないが、蟄居生活への鬱憤が蓄積した結果か、44歳の若さで失意のうちに病死した。#西郷どん

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井伊は岩瀬を死に追いやり、幕府の寿命を縮める役割を果たした。同時期に弾圧された大久保忠寛や永井尚志といった目付、海防掛の仲間たちが、この後、軒並み復権し、大きな足跡を残したことを考えると、余りに惜しい早世である。残念ながら、ドラマでは岩瀬忠震は不在だった。#西郷どん

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井伊はあくまでも通商条約の締結引き延ばしを志向していたが、現場判断に任せたため、調印となった。これを機に、井伊は冷徹な政治家へと変貌を遂げ、反対派の完全なる排除を画策する。老中などの幕閣の更迭を行い、6月25日には将軍継嗣は家茂に決定したと公表した。#西郷どん

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7月5日には条約調印を違勅とし、将軍継嗣発表の延期を求めて不時登城した罪で、尾張藩主徳川慶勝および春嶽の隠居謹慎、斉昭の蟄居謹慎、慶喜の登城停止を申し渡した。なお、病弱であった家定は、翌6日に没している。なお、家定は南紀派を支持しており、慶喜を継嗣に指名していない。#西郷どん

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井伊による無断調印、不時登城に対する過剰な処分の情報に接した孝明天皇は、激怒して譲位を仄めかすほどであった。朝幕関係は、一触即発の危機的事態を迎えたが、西郷は7月14日に吉井友実を伴って上京、梁川星巖、頼三樹三郎、月照らと善後策を協議、斉彬に即時率兵上京を求めることにした。#西郷どん

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吉井友実、西郷の大親友であり、国事周旋をともにする場面も多々あるのだが、今回は登場せずかな？#西郷どん

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西郷は何とか起死回生を図ろうと奮闘する西郷の許に、7月27日に至り、思わぬ訃報が飛び込んだ。西郷にとっては神のような存在、斉彬の急逝である。7月8日、斉彬は猛暑の中、軍事操練を視察していたが、俄かに発熱・下痢の症状が見え、急劇に悪化して16日には息を引き取ってしまった。#西郷どん

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斉彬の死は、当時から毒殺説が流れたが、コレラ・赤痢説が有力である。渡辺謙の登場は、回想以外ではこれが最後か。存在感抜群の謙さんの退場、残念ではあるが、西郷の成長に期待したい。#西郷どん