吸血鬼ジャーファルさんパロ(SS)

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桔花 @kitsuka_02

SS→「君の血液を私に分けてくださいませんか?」 寒風吹きすさぶ師走の暮れ、イルミネーション輝く駅前ロータリーで俺は突然得体の知れないにーちゃんに話しかけられた。 「最近不幸続きでついには年末の書き入れ時にアルバイトをクビになったアリババくん、私と契約して幸せになってみませんか?」

2017-12-26 23:38:15
桔花 @kitsuka_02

どうしよう、やばい人に捕まった。 つかこの人何で俺がバイトクビになった事知ってんだ!? 「何ですかアンタストーカーですか!?新興宗教なら間に合ってますんで他を当たってください!」 「ストーカーとは失礼な、私は吸血鬼ですよ。悪魔の一種です」 「吸血鬼?」 どうしよう、本当にやばい人だった。

2017-12-26 23:38:16
桔花 @kitsuka_02

知ってる、年末になるとこういう人が増えるんだ。この寒いのにコートも羽織らず見慣れない民族衣装みたいなのを着ている時点でもう怪しい。怪しすぎて周りの人誰もこの人を見ようとしてないし。 「すみません俺そういうのに興味ないんで。じゃ」 関わる前に逃げ出そうとしたら思いっきり腕を掴まれた。

2017-12-26 23:38:16
桔花 @kitsuka_02

「まぁそんなつれない事言わないで。私の契約は良心的ですよ?君ならほんの少しの血と引き換えに沢山の幸運をあげる事が出来ます」 だからそれが怪しすぎるんだって。 「幸運って例えば?」 「そうですね…では」 俺の問いに自称吸血鬼はふむ、と頷いて駅前でやっていた福引の台を指差した。

2017-12-26 23:38:17
桔花 @kitsuka_02

「あの景品の中で欲しいものはありますか?」 「え?えー…」 また変なのを指定してきたなと思いつつ景品一覧を見てみる。現実的に考えて二等の商店街で使える商品券が一番良いけれど、今の投げやりな気分でいくと。 「やっぱ一等の温泉旅行ですかね」 なんかもう現実から逃避したい。そんな気分だ。

2017-12-26 23:38:17
桔花 @kitsuka_02

「分かりました。じゃあ、これをどうぞ」 自称吸血鬼は俺の手を取って一枚の紙を握らせてきた。なんだと思って見れば、それは商店街の福引き券で。 「特別サービスですよ」 まるで悪戯でもするみたいににっこりと笑って言う相手に、俺は何とも言えない微妙な表情をした。 福引き券一枚がサービスって。

2017-12-26 23:38:18
桔花 @kitsuka_02

本気なのか冗談なのか分からない怪しすぎるにーちゃんに促され福引きに並ばされる。流されるまま列に並んで、やがて俺の番が来た。 「はい、一回ですね〜時計回りに回してください」 お姉さんの指示に従い一回転させると、真っ赤な玉が一つ落ちて来た。 「大当たり!一等おめでとうございます!」

2017-12-26 23:38:18
桔花 @kitsuka_02

「…へ?」 一等賞と書かれた熨斗袋を持って立ち尽くす俺の隣に、先程のにーちゃんが立っていた。 「ね?いい事あったでしょう?」 くすっと笑った顔は先程までとは違いやたらと魅惑的な微笑みに見えた。 …よくよく見ると、周囲の誰もこの人を見ていない。というか存在にも気付いていないようだった。

2017-12-26 23:38:18
桔花 @kitsuka_02

まさか、という考えが頭をよぎる。そんな俺を見透かしたかのように自称吸血鬼のにーちゃんはますます笑みを深めて、 「私と契約すればもっといい事がありますよ。だからアリババくん、私の餌になってくれませんか?」 断らせるつもりなんか欠片もない不思議な強さを持った口調で、俺をそう誘惑した。

2017-12-26 23:38:19
桔花 @kitsuka_02

それが、俺と優しい吸血鬼ジャーファルさんとの出会いだった。 終わり\(^o^)/

2017-12-26 23:38:19