突発現パロSS、第三話

帰宅した鹿島と大井
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鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

自宅に一人帰った鹿島。今日は本当に色々な事があった。 会社員になって初めて出勤した日、というだけでも大ごとのはずだがそれよりも、ずっと期待していた再会が意外な形で果たされた事の衝撃は大きかった。

2018-05-30 06:56:33
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加えて業務の説明。正直よく分からなかったが、これはまた明日大井さん達に聞けば良いし、通ううちに鹿島の普通観に組み込まれていくだろうから問題ではない。 ため息をつき、少し前まで勤務していたコンビニに想いを馳せる。

2018-05-30 07:01:31
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この時間、鹿島はまだレジに立っていた。働ける年齢から公園だった場所のコンビニでアルバイトを始め、だんだん勤務時間を夜中までのばした。幼い頃の約束を信じてあの場所に通い続けたかった。 漸くそれらしいヒトが来店してから何年も経ち、ついに自分からは声をかけられず長い間店員として接した。

2018-05-30 07:07:46
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そんな関係のままいつか会えなくなるんだろうなと思っていたから、向こうから声を掛けられた時は本当に驚いた。そして暗然ともした。 「大井さん、やっぱり子供の時の事全然覚えてなさそう」 絶対また遊ぼうね、豆粒みたいな年齢の頃にそう言ったのをずっと覚えている鹿島の方が変なのかもしれない。

2018-05-30 07:12:59
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「香取姉は、どうかな」 約束をした直後、突然の長い別れになった姉の香取。変わった会社だが、働いているということはそれなりに人生上手いこと渡ってこれたのだろうか。彼女もやはり遊びの約束なんて忘れただろうか。 考え事ばかりで帰宅してから何も手につかない。ふと、大井の連絡先が目に入った。

2018-05-30 07:18:43
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——— さて帰宅するかと大井が席を立つと、ひらりとメモが落ちる。拾ってみると、大井宛に小さくありがとうございますと書かれていた。字からして香取が書いたのだろう。 何についてなのか明記されていないが、きっと鹿島に会えた事に対してだろう。 少し浮ついた不思議な気分で、大井も会社を後にした。

2018-05-30 12:44:08
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なんとなくコンビニには寄らず、まっすぐ帰路につく。 「......あら?」 大井の部屋には既に明かりが灯っていた。足早にドアに近づきドアレバーを引いてみるが、鍵がかかっている。朝、電気を点けてから出てしまったのだろうか。 大井は訝しみながら部屋の鍵を開けた。

2018-05-30 12:50:13
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「お帰り姉さん」 部屋のドアを開けると、妹が居た。 「木曾、何でヒトの部屋に勝手に上がり込んでるの」 「合鍵渡したのは姉さんだろ」 「別の家に住んでるヒトに鍵を預けろって契約にあったから渡しただけよ」 「じゃ、俺んちにも勝手に入っていいぞ」 「木曾の家って私の実家なんですけど」

2018-05-30 20:21:15
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「うちじゃ球磨たちがうるさくて休めないんだよ。仕事明けなんだ、歓迎してくれ」 返事こそ生意気だが、木曾の顔には疲れが浮かんでいる。そういえば一ヶ月丸々調査船の護衛をしていたのだったか。 「はぁ......次からは来る前に一報入れなさい」 「ああ」

2018-05-30 20:27:07
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会話を終えて、木曾は大井のベッドに座り込む。 「ごはんは食べたの?」 「ああ、ベッドだけ貸してくれればいいんだ......」 そのまま仰向けに倒れこもうとする木曾に気付き、慌てて彼女の腕を引っ張って阻止する。 「お風呂入った?」 「......あとで」 「ヒトのベッド使うのにそれは無しでしょ」

2018-05-30 20:41:39
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なんとか木曾を風呂に放り込み一息ついたところで、一気に疲れが出た。冷蔵庫には買い置きの冷凍食品があるし、食べ物は心配無い。明日もあるしゆっくり休みたい。 「なあ姉さん、着替え無いんだけど」 「烏の行水じゃない、着替えは用意するからまだ入ってて」 「わかった、寝てたら起こしてくれ」

2018-05-30 20:59:37
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木曾に着せる服は学生時代のジャージで良いな、と数秒もかけずに結論を出した。部屋を見渡すと木曾の物は靴だけで、荷物らしいものは置いていない。身一つで泊まりに来たようだ。 球磨カンパニーでは現場に出た後は一日以上休む事が義務付けられている。明日大井と共に出社するという事は無いだろう。

2018-05-30 23:09:14
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木曾が着ていたものは今晩にでも自分で洗濯してもらおう。 用意したジャージをカゴに放り、着替えを置いたと声を掛けた。返事が聴こえたので、眠ってはいないようだと安心した。

2018-05-30 23:11:43
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仕事用のカバンを整理していると、スマホにメールを受信したと表示が出ていた。 『鹿島です。登録よろしくお願いします。』 一行あけて電話番号も記載されていた。 この連絡には何か返事すべきだろうか。 考えていると、ジャージ姿の木曾が背後に立った。 「姉さん、眠い」 「髪乾かしてから寝て」

2018-05-30 23:15:25
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結局大井がドライヤーをかけてやり、そのまま眠った木曾をベッドのできるだけ端に寝かせた。 「こんなに手のかかるコだったっけねぇ」 独り言を呟きながら、大井も風呂を済ませる。 諸々明日の準備をしてそろそろ寝ようかとベッドに行くと、木曾は真ん中で安眠していた。

2018-05-30 23:19:45
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木曾を転がしてあわやベッドから落とす寸前でなんとか安置する。 大井も横になり、電気を消した。 「木曾、起きてるわよね」 沈黙。 「そのまま寝てね」 息をのむ気配。 「おやすみ、仕事お疲れさま」 「......おやすみ、姉さん」 様々な感情を抱えながら、疲労に助けられ二人は眠りへと落ちていった。

2018-05-30 23:36:25