【《白露改二》実装記念】「くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき」

長年を共にを過ごしてきた《白露》。この間,彼女は練度を上げ,髪を少しずつ伸ばし,そして改二となった今日,長髪を煌めかせる…。連想したのは伊勢物語の23段「筒井筒」の「くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき」という和歌。この和歌を下敷きにして,脳裏に浮かんだ映像を書き出してみました。
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篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

長年を共にを過ごしてきた《白露》。この間,彼女は練度を上げ,髪を少しずつ伸ばし,そして改二となった今日,長髪を煌めかせる…。連想したのは伊勢物語の23段「筒井筒」の「くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき」という和歌。この和歌を下敷きに何か書きたいですね。

2018-07-13 13:31:33
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

ちょうど夏ですし,夏祭りを舞台にして書いたらいいですかね。

2018-07-13 13:36:02
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

場面1:舞台は鎮守府近辺の夏祭り。提督と《白露》は二人で出掛けることにしていた。執務室から見える祭りの火。それを眺めているところに,浴衣姿の《白露》が来る。彼女はこの梅雨明けに待ち望んでいた改二になった。今のこの姿を見るのは初めてで,感慨に浸る提督は彼女との今までを振り返る。

2018-07-13 13:48:18
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

場面2:提督が《白露》と出逢ったのは,鎮守府を開設して間もない頃のこと。まだ鎮守府近海の制海権も覚束なかった頃にとある出撃中,邂逅した。自らを白露型駆逐艦1番艦と名乗り,事あるごとに一番であることに強調した。なぜそこまで拘るのか不思議だったが,それは彼女が自身の言葉で教えてくれた。

2018-07-13 13:56:15
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

あたしは確かに白露型の1番艦だけど,元々は長女じゃない。元はまだ逢えていない《有明》の姉妹で,有明型の3番艦だった。それがある日突然,有明型という括りがなくなり,あたしを長女とする白露型が生まれた。長女って何?一体あたしは何をすればいいの?妹たちのためにあたしは何を目指せばいいの?

2018-07-13 14:01:00
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

答えはなかなか見つからなかった,《初春》や,《時雨》と共にお世話になった《比叡》にも話を聞いてもらった。そうして朧気ながら見つけたのが「一番であること」だった。それはもちろんあたしが出来ることを増やすために一番頑張るということでもある。でもそれだけじゃなくて…

2018-07-13 14:06:20
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

いや,それ以上に,あたしが妹たちの止まり木,疲れた時に帰って来られる場所になるという決意なんだ,と。「北極星のように,一番いい航路にみんなを導いてあげられるように,かな」と彼女ははにかみながら答えてくれた。

2018-07-13 14:10:02
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

場面3:「一番いい航路にみんなを導いてあげられるように」。そう言った彼女に悪魔のような試練が訪れた。その日,物資輸送のために,《白露》を旗艦とする高速護衛艦隊を送り出していた。随伴するのは《時雨》《村雨》《夕立》《五月雨》《涼風》の5人。

2018-07-13 14:14:05
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

彼女たち6人が運ぶのは,来るべき大規模作戦に備えた陸上航空基地用物資。航空基地で必要とする燃料,弾薬,そして貴重なボーキサイトである。事前の索敵では,航路は安全なはずであった。しかし…突如そこに現れたのは,空母ヲ級flagshipを旗艦とする深海棲艦機動部隊であった。

2018-07-13 14:17:26
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

敵の陣容を見て愕然とする。空母ヲ級flagshipを含めてヲ級が2隻,重巡eliteが1隻,軽巡ツ級が1隻,駆逐イ級が3隻。自分たちだけであってもとても逃げ切れない。ましてや貴重な資源を満載した輸送船団を護衛していては。そこに敵艦載機群が押し寄せる。

2018-07-13 14:23:17
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

がむしゃらに弾幕を張る。輸送船団へは近付けさせまいと前へ出る。浴びせられる急降下爆撃。そして放たれる雷撃。艦娘たちに少なからず被害が出る。まもなく敵艦砲の射程。随伴する艦娘たちに絶望が押し寄せる。…そんな時。

2018-07-13 14:25:29
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

「あきらめない」。大きくはなかったが,しかししっかりと聞こえる《白露》の言葉。「あたしが挫けてしまったら,みんなも挫けてしまう。だからあたしだけは何があっても元気でいなくちゃいけないんだ!」そして妹たちのほうを振りかえり凛とした表情で照らす。それは濃雲から差し込まれた一条の光。

2018-07-13 14:30:07
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

絶望的な状況でも,決して士気を喪失しない《白露》。そんな彼女を見て,《涼風》が「おう,そうだよな」と言い,《村雨》が「ちょっといいとこ,見せてあげる」と言い,《夕立》が「ひっくり返してやるわ」と言い,《五月雨》が「わ,私だって」と言い,《時雨》が「よし,行くよ」と言う。

2018-07-13 14:30:43
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

《白露》の作戦はこうだった。方法はただ一つ,輸送船団がやられる前に敵を食い破るしかない。よって,最大戦速で突入し,敵旗艦を撃破,指揮系統を混乱させる。

2018-07-13 14:36:42
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

布陣は前衛に《白露》と改二改装が完了している《夕立》。前方に狙いを定めて脇目も振らずに突破するのが役目。中央に《五月雨》と《涼風》。側面と上空の敵を牽制するが役目。後衛は《村雨》と改二改装なったばかりの《時雨》。後方の敵を牽制するのと,戦場の状況を把握するのが役目。

2018-07-13 14:37:56
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

姉妹たちの得意分野を把握し,適切な布陣を敷く。そして彼女は号令を発する。「一番に突っ込むよ!ついて来てー!」と。

2018-07-13 14:38:59
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

「いやぁ,あの時は本当にだめかと思った」とは《白露》が後から話してくれたことである。結果として,《白露》と《夕立》の急先行により深海棲艦艦隊は攻撃の間合いを崩されることとなった。敵輪形陣内に突入し,敵が同士打ちを躊躇っている隙を狙って魚雷を一斉射。

2018-07-13 14:48:29
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

空母ヲ級flagshipを撃沈こそできなかったものの,機関停止の上大破炎上させ,見事に指揮系統を混乱させた。艦隊運動も航空機攻撃もできなくなったところを《五月雨》と《涼風》が襲撃して撃沈。その後,《時雨》と《村雨》が追撃を牽制しつつ,輸送船団を含めた艦隊全艦は無事に離脱した。

2018-07-13 14:48:30
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

場面4:輸送船団襲撃の一見を経て,《白露》は自分のやるべきことを確信したようだった。彼女は秘書艦立候補し,艦娘たちの止まり木になるべく努力を始めた。困っている子を見かけるととことんお話に付き合ったり,何かいい提案があれば実現に向けて手配したり。

2018-07-13 14:57:25
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

その甲斐もあって,かつてよりも危険に直面する頻度は格段に減った。そして艦娘たちの数も増え,新兵装や新戦術も開発された今となっては,鎮守府近海の制海権確立のために四苦八苦していたのが嘘のようだ。本当に《白露》には感謝してもしきれない。

2018-07-13 14:59:17
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

「提督?どうしたの,ぼーっとしちゃって?」。白露が不思議そうな顔で覗き込んでくる。そしてニヤリとした顔をする。「もしかして,あたしに見惚れちゃった?この姿で浴衣着るのは,今年が初めてだもんね」。本当にそうだ,と提督は思う。彼女は私を,いつも導いてくれる。

2018-07-13 15:03:01
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

「少しずつ伸ばしてきた自慢の髪,今日は結い上げたのかい?」 「ふっふ~ん。いつものロングヘアーもいいけど,お祭りの時はこういうのもいいでしょ?」 そして《白露》は提督の元に駆け寄ると,その胸元に頭を寄せて小さな声で続ける。「提督のために,してみたんだよ」と。

2018-07-13 15:11:51
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

「くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき」 あなたと長さを比べ合ってきた私の髪も型を過ぎました。あなた以外の誰のためにこの髪を結いあげましょうか。

2018-07-13 15:11:51
篠ノ目くぬぎ_CNS @CrushedNumbers

《白露》の背中に両手を回して抱きしめる。彼女もそれを待っていたかのように抱きしめてくれる。こんな幸せな時間がこれからも続いていけばいいのに。そう思わずにはいられなかった。

2018-07-13 15:11:51