- torigoya96
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ある日の夕方、黒の出目金を掬ってきたみつよ。ソくんが「どうしたんだソレ」って聞いたら、買い出しについて行った時に、万屋のある通りに金魚売りがいて、自転車の荷台に一匹だけ残ってて可哀想だったっていうやつ……。
2018-08-24 20:45:29「あのな兄弟。それは多分、他の金魚は別のとこに置いといて、わざと一匹だけ目につくようにしてたんだよ。兄弟みたいに優しい客が、勘違いして買うからさ」 「……からくりは、知っている」 「あ?」 流石にそこまで世間知らずじゃあない、ってもごもご言うみつよに、ますます怪訝な顔をするソくん。
2018-08-24 20:50:11じゃあ、ことさら何で買ったんだ。ノリで生き物を飼うような馬鹿ではないし、そもそも小さな生き物の類には、鳥を連想して苦手意識がある兄弟がどうして、ってなるソくん。 「……"一匹だけ"だったんだ」 「……」 「こいつだけ、紛れてたから。連れて帰ったんだ」
2018-08-24 20:57:54そういって突き出されたビニールの袋の中のちいさな住人を、霊力を乗せてよくよく視れば、黒い鱗のほかに、金色じみた模様もゆらめいて見える。”そう”と言われなければ、普通の金魚にしか見えなかったのは、弱ったあやかしの類だった。 「……金魚売りは人間だったから、気付いてないと思ってな」
2018-08-24 21:05:43「それで買ってきたのか」 「ああ。……少し元気になったら、自分で"流れ"に戻ると思う」 「ふーん…」 いそいそとガラスの鉢に水を入れて(汲み置きしていた水を持ってきた辺り、魚を飼うための心得はどこぞで学んだらしい)、そこにちゃぷんとビニール袋を浸ける兄弟はどこか上機嫌に見えた。
2018-08-24 21:16:13その日から、生まれて初めてちいさな生き物(※あやかしだけど)の世話をする、ってのに分かりやすく張り切ってるみつよにソくんはとてももやもやする……。遠征から帰っても出目金の様子を一番に聞くし、朝起きてソくんにおはようって言ったらすぐ出目金の世話始めるし、なんか取られた気分になるやつ。
2018-08-24 21:25:44まあでも逸話のトラウマもあるし、兄弟楽しそうだし……で、表面上は「兄弟よかったな~」って言いつつも、内心は出目金相手に嫉妬しまくりでブスブスやってて(さっさと元気になって兄弟を返せ~)ってするソくん……。遠征中の世話とかはちゃんとやったけど。
2018-08-24 21:31:15それが続いたある日、寝てるソくんはとてつもない違和感というか衝撃で覚醒する。布団の上でめっちゃボフボフ飛び跳ねる何かが、いる。短刀の誰か……包丁あたりの悪戯だろうか、それにしては軽いような……いやそんな事どうでもいい、俺の安眠を妨げるのは誰だ!!って半ギレで飛び起きるソくん。
2018-08-24 21:36:52うるさいぞソハヤ…って、眠い目を擦るみつよくんの眼に飛び込んできたのは、己が兄弟と布団の上で大暴れする子供の姿だった。みつよは目を疑った。黒い髪に黒の浴衣、どこか金を散らした黒の兵児帯。心当たりがあるどころではない。 まさか、お前。そう呟いたみつよに飛びつく子供。絶叫するソハヤ。
2018-08-24 21:45:42「本音:ポッと出がベタベタくっついてずるいだろ!!!(建前:兄弟から離れろ!!)」 「ソハヤ……(やや引き)」 ……っていう、あやかしの金魚を拾ったらみつよの霊力吸って人型取るようになった(みつよ似)挙句、ソとみつよの取り合いするようになる感じの……そういう……夏の終わりの小話……
2018-08-24 21:53:23群れという物を知らないひとりぼっち金魚のあやかしだったので、本丸の大人数生活を楽しむだけ楽しんで、最後は満足してあるべき流れに戻っていくやつ……
2018-08-24 22:02:26あやかしちゃん、『みいけのあにさま!』ってみつよの事を慕うので、ソはしょっちゅう「表に出ろ」ってオーラ出すしぶっちゃけ口にも出す……
2018-08-24 22:06:02『みいけのあにさま!🌸』ってみつよのことは慕うけど、ソくんのことは『えのころぐさ』『きんいろけだま(※きんいろけむしって言ってたらみつよに怒られたので毛玉になった)』『すすきしっぽ』って言って、端的にいうとかなり舐めている……
2018-08-24 22:52:16『あにさまがいないときに、ちからをわけてもらったのは、そはやのあにさまからですから。……そのときに、いっしょに、"あにさまがすき"っていうきもちも、たくさんわけてもらいました』 『だから、ぼくのなかの、あにさまを"すき"っていうきもちは、そはやのあにさまに似たんです』
2018-08-24 23:20:48それ聞いてぽかんとしてるソくんを、しっぽみたいな帯のはしっこでぺしって叩いて『きんいろけだまがまぬけづらをしています!』って笑ったあやかしちゃん……
2018-08-24 23:22:05あやかしちゃん、みつよの膝の上を大抵占領してるので信濃くんの反感も少し買った。前田くんは圧倒的なみつよぢからの摂取で尊みを感じて死んでいた
2018-08-24 23:28:25あやかしちゃんがソを舐めている理由なんですけど、要するに、あやかしちゃんの中に、ソからみつよに対するのと同じ種類の"好き"も内包されているので、それでライバル視みたいなのが入ってたのも原因なんだよっていう そういうはなし
2018-08-24 23:34:00本丸を去り際にあやかしちゃん、いきなり成長したあげく全身金色のきらきらになって、やや"ソみを感じる見た目"でみつよの唇の横にキスして、悪戯っぽい笑みを浮かべて通り雨に乗って去って行ったんだ……
2018-08-24 23:38:31しばらくその金色のきらきらがちょっと光世に残ってて、古い刀連中とかは「粋な置き土産だな」って笑ってたんだけどソはもう気が気じゃないというか、空っぽになった花器をみつよと片づけながら、今夜兄弟を染め直してやると強く決意をした、という話。
2018-08-24 23:41:40「"金魚"。"錦のさかな"、"黄金(こがね)のさかな"、……なるほどなぁ、晴れ着にはぴったりの、よい金色だ。一張羅をもらったのだな、おまえ」って通り雨の去った方向見てにこにこしてる三日月さん…
2018-08-25 00:02:00別れ際に唇そのものを奪わなかったのはね、あやかしちゃんがソくんから感情をもらった時点で、ソくんにかなわないのを最初から知ってたからだよ。
2018-08-25 00:17:13