133文字で表現するキス22箇所

局所的に話題になったキス22箇所を1話完結で文章に起こしました。 ※キス意味がくみとれていないことがあります ※キスしていないことがあります 続きを読む
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はるじ @haruji21

<キス22箇所>髪:思慕/額:祝福、友情/瞼:憧憬/耳:誘惑/鼻梁:愛玩/頬:親愛、厚意、満足感/唇:愛情/喉:欲求/首筋:執着/背中:確認/胸:所有/腕:恋慕/手首:欲望/手の甲:敬愛/掌:懇願/指先:賞賛/腹:回帰/腰:束縛/腿:支配/脛:服従/足の甲:隷属/爪先:崇拝 

2011-04-02 15:03:55
サキ @llxsakixll

キス22開始。140文字の縛りで22題。3日くらいでおわるといいな。 しばらく書いてなかったからリハビリね、リハビリ。 #22

2011-04-13 01:12:55
サキ @llxsakixll

凛とした眼差しにいつも瞳を逸らしてしまう、だからその髪先をよく覚えていた。つややかな黒髪がしゃらりと、肩に落ちた花片と。「あ」、つい動いた指の背がそれに触れる、音そのもののような髪に。僅かに頬を赤らめて逃げた後ろ姿を追えない手。微熱をもった桜が爪の先に咲いていた。[髪] #22

2011-04-13 01:15:41
サキ @llxsakixll

老いた聖職者は蒼白になってよろめいた。霞む目の先に奪われた王冠。固唾を飲んで見守る参列者の中征服者は自らの手で悠然とそれを戴いた。静まった大広間、もう一つの冠を手に彼は膝を折る女の前に立つ。戴冠した額に接吻を。王妃は静かに瞼を上げる。かくして世界は塗り替えられた。[額] #22

2011-04-13 01:17:05
サキ @llxsakixll

荒野の前に動けずにいる足に父が促した。「さあもう往かなければ」。重い身体は動かず、ただ枯木立の焼け跡を強く目を瞑ってかき消そうとした。あれほどに豊かだった緑はすぐ瞼の裏にあるのに。豪風がゆけ、と命じる。魂の彷徨が永い列を成す先へ、つがいの鳩が東へ飛び去った。[瞼] #22

2011-04-13 22:32:45
サキ @llxsakixll

日焼けした体をベッドに沈めた。シーツと肌のコントラスト、押し倒されたのに笑い転げている。汐の音が遠く、かすかに。あなたの中に満ちみちて、それがこんなにも僕を駆り立てているのかもしれない。ああとてもおなかが空いた。その耳に囓りついたらきっと、香ばしくこぼれ落ちる。[耳] #22

2011-04-13 22:57:23
サキ @llxsakixll

花束にうもれた笑顔。ぱくりと鼻先にキスしたことに大層あわてた娘は、かわりのおはなをさがさなきゃと、不思議な理論でたくさんの白詰草を摘んできた。ママもうおはなをたべちゃやあよ。真面目な瞳に私は神妙に頷く。どうかこの子がこうして、もう暫くママの天使でいてくれますように。[鼻] #22

2011-04-14 00:25:26
サキ @llxsakixll

曇天の街角で黒い服の紳士と黒いドレスの女が逢引きする。金貨を握らせた手。安い女は恍惚と瞳を閉ざし、紳士は丁寧に女の頬にくちづける。奇妙に、静かに、瞬きもせずに。死神の鎌が振り上げられたことを未だ誰も知らない、ホワイトチャペルの黄昏が幕を開けた。 [頬] #22

2011-04-14 01:03:36
サキ @llxsakixll

「目を閉じてよ」苦笑して言われたそれに瞬いた。気恥ずかしげに頭を掻いた彼が、ほんとやりづらいなあ、やるけど。みたいに独りごちて、また肩を抱き寄せる。近づく唇、視界ゼロの温度に包まれるまで、やはり目は閉ざせない。確かに彼だと、この優しさが確かなのだと感じていたくて。[唇] #22

2011-04-14 07:46:45
サキ @llxsakixll

あなたが言葉もなくこうして僕を受け入れてくれることを時折ひどく尊く思う。一切を晒して、ただ沈黙して。少しだけ眠たげな瞳が甘えるように笑み、おいでと手招く。湧き上がるこれは愛か欲か。恐らく両方であるそれに従順に、僕は裸の喉にそっと歯を立てた。[喉] #22

2011-04-14 20:08:46
サキ @llxsakixll

濃密なラストノートを持ち帰る気はさらさらなかった。かきあげた髪で残り香を振り落とし、かわりに首筋に吹き付けたトワレを手の平の付け根で押しつける。口づけの痕を残すのはマナー違反と嘯き、纏った香に嘘をひそませて私は完成。さあもう次の顔で、愛しいあなたに逢いにゆく。[首] #22

2011-04-14 23:22:17
サキ @llxsakixll

とことことこ、と、指先が背骨を辿っているのを感じる。うららかな昼下がり。ソファに寝そべり、雑誌のページを繰る手は意地でも止めない。すっかり飽きたのか、シャツをめくって好き勝手遊んだ指先が離れ顔ごと突っ伏し、甘噛みされてとうとう悲鳴。ああまた君の、思いどおり。[背] #22

2011-04-15 00:45:07
サキ @llxsakixll

異国の歌を口ずさむ彼女の胸に頭を伏せて、遠い故郷のことを思っていた。普段思い出しもしないのにどうしてそこはいつも温もりに満ちている気がするのだろう、もう、戻れない場所なのに。鼓動を重ねることできこえてくるそれが、おかえり、という声に似ていて、彼女を強く抱きしめた。[胸] #22

2011-04-15 01:05:35
サキ @llxsakixll

傷を舐め合うように愛の真似事を長く繰り返していた。左腕の内側に印した鬱血で世界から君を守れる気がして、そんな子供じみた妄想が二人を悲劇の只中においていた。治らない傷はないことを知った今、僕は君に、世界を見にいこうと告げたい。今度こそ愛だと、衒いなく言えるだろう。[腕] #22

2011-04-15 07:38:32
サキ @llxsakixll

葉擦れの音と燕の影がカーテンの上に踊った。今はもう無垢なあなたはうっとりと午睡を続けている、まるでもう目が覚めないかのように。ベッドの脇に座り込み、ことりと落ちた手を握る。巡り巡る同じ血潮。細い手首に唇をつけ、ただそこが脈打つのを、メトロノームのように聴いていた。[手首] #22

2011-04-16 00:23:44
サキ @llxsakixll

震える足を必死に留めて王女はバルコニーに姿を現した。歓声を挙げる民衆の熱気、花吹雪とトランペット。傍に跪いた騎士の顔は見えない。この手を、祝福を授ければ彼は。よろめくように一歩出た、王女の手の甲に騎士は接吻する。祖国に勝利を。翳された剣に、王女の目は黒く眩んだ。[手の甲] #22

2011-04-16 23:14:34
サキ @llxsakixll

それだけは言ってはならなかったから両手で必死に口を塞いだ。涙が溢れるように、お喋りな唇が突拍子もないことを告げたいともどかしがる。なのに君は私のすべてを見つけてしまった、取り上げた手のひらに熱の余韻を残して。もうどうしても終われない。観念して私は、君に恋を告げた。[掌] #22

2011-04-18 00:01:04
サキ @llxsakixll

爪先に火を灯すような暮らしでも二人の心には音楽があった。夫がヴィオラを妻がピアノを、床を軋ませて躍るワルツ。幸福に形があるならきっと五線譜ねと、あどけない妻の指にただ一つ光る指輪。宝物は少なくていいの。笑う手を取り、宝物は君だと抱きしめる。さあ今日は何を歌おうか。[指先] #22

2011-04-18 09:12:10
サキ @llxsakixll

鼓動の音が響く海のまにまに、私は膝を抱えて漂っていた。水はどこまでも透明で温かく、いねむりをするのにちょうどいい。光がきらきらと射す波間、少しくぐもった優しい声で名前が呼ばれるのを繰り返し聴いていた。私はなんて愛されているんだろう。このことをずっと忘れずにいたい。[腹] #22

2011-04-20 00:49:19
サキ @llxsakixll

こんな人とは思わなかった。ぐったり畳に倒れ伏し、腰に湿布を貼った姿はとても人様には見せられない。遊び疲れて眠った子の隣で、お馬になるのもしんどいなと苦笑する。こんな人じゃなかったけれど、昔よりずっと目尻の皺が優しい。よしよしと腰をさすってあげる、私の手にも幸せな皺。[腰] #22

2011-04-19 01:51:06
サキ @llxsakixll

海辺の堤防の上でバランスを取る、君の少し後ろを歩いていた。期末だめかもーなんておどける声に曖昧に笑い返す。君の笑顔や考え方、そういうのを好きになったはずなのに、今は普段見えない角度の白い内腿しか見えていない。君のそこに蚊がとまる。何だかひどく後ろめたかった。[腿] #22

2011-04-20 09:15:42
サキ @llxsakixll

脛のでかいホクロが嫌なんだ、と言った時、その女はあたしもあるの!と自分のを見せてきた。すごいね運命かも!と興奮され、んな運命あるかと盛大に呆れた。なのに今俺の隣にその女は裸で寝ている。見つめると彼女は笑って、あたしの運命、と俺の脛にキスをした。さて、もうすぐ一年。[脛] #22

2011-04-21 22:27:06
サキ @llxsakixll

女が王の間に現れた途端、香が一面に漂う。伏す臣民に微笑するその、何という美貌。後ろ手に縛られた男は呆然と女王を見つめる。五感が支配される。陶酔する。祖国を蹂躙された怒りさえ遠のく。やがて女王が差し出した足の甲へ男は躊躇いなく口づけた。ーー玉座に絡んだ蛇が、嗤う。[足の甲] #22

2011-04-21 08:06:36
サキ @llxsakixll

すうすうとねむる赤ちゃんの、どこもかしこもふわふわなのに、わたしとおんなじ形なのがふしぎだった。右手にのるほど小さなあんよのつま先にちゅっとしてみる。ミルクの味がするみたい。そう言ったら、お母さんがお姉ちゃんてば、とわらった。 そっか、わたしお姉さんになったんだ。[爪先] #22

2011-04-21 22:28:11
サキ @llxsakixll

お わ っ た ーーー!!!一週間で22こ書いたよ!誰かほめて!

2011-04-21 22:30:02