仮面ライダー“蝕”第2話『その名はバロン』

以前書いたシャドームーン異世界転生の続き。
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元ゴリラ @isonozexal

-前回のあらすじ- 秋月信彦が目を覚ました時、そこは世紀王ブラックサンRXが支配する恐怖の世界だった。信彦は不完全なキングストーンを完全な形へとするべく、別世界から呼び寄せられたのだ。しかし、窮地のシャドームーンは仮面ライダー“蝕”へと変化し、それを撃退。信彦の戦いが始まった。

2018-11-21 00:48:37
元ゴリラ @isonozexal

関東荒野は広く、所々に人々の集落が存在した。信彦は旅の途中、集落に立ち寄っては情報を集めている。 (ここも、ゴルゴムの支配地か……) 多くの人々は工場で働き、ゴルゴムの活動を支援する。させられている。逆らえば怪人に殺されるからだ。そんな恐怖政治がもう、10年以上続いているという。

2018-11-21 00:53:33
元ゴリラ @isonozexal

僅かな食料を買う必要も、信彦にはない。改造人間である信彦のエネルギーは、全てキングストーンから蓄えられる。だから、ロクに水も入手できないような世界でも、信彦は活動を続けることができる。 しかし、それと「何かを食べたい、飲みたい」という感情は別だ。 今、信彦は小さな酒場に来ていた。

2018-11-21 00:58:58
元ゴリラ @isonozexal

理由の一つは情報収集だが、今こうしてフルーツパフェを食べているのも、シャドームーンだった時には死んでいた、人間としての感情が蘇っている証拠だろう。 「あんた、見ない顔だけど旅人かい?」 酒場の支配人が、人のいい顔で信彦に尋ねる。 「ん、ああ。人を捜しててね」 「そうか……」

2018-11-21 01:03:21
元ゴリラ @isonozexal

「……その捜し人は、あんたの大事な人かい?」 「ああ」 南光太郎。仮面ライダーBLACK RX。いや……世紀王ブラックサン。彼ともう一度会わなければならない。俺が彼にしてもらったように、人でなくなった親友を、この手で……。 「……もしかしたら、“仮面ライダー”なら何か知ってるかもな」 「……」

2018-11-21 01:11:12
元ゴリラ @isonozexal

この世界はゴルゴムの支配下に置かれているが、そんな中でも抗う者達がいるらしい。その中でも特に強く、反乱分子達の筆頭となっている存在。それが、“仮面ライダー”と呼ばれる3人の改造人間だという。誰も、彼らを怪人とは呼ばなかった。 (……俺や光太郎以外にも、“仮面ライダー”がいるとはな)

2018-11-21 01:18:59
元ゴリラ @isonozexal

「その“仮面ライダー”とやらは、所詮都市伝説さ。美味しかったよ」 すく、と立ち上がり信彦は会計を済ませる。その時だった。 「た、大変だ坂東さん!」 若い男が、酒場に押し入る。 「ゴルゴムが、来る。ここがレジスタンスの拠点だと疑われてる!」 「何だと!?」

2018-11-21 01:25:37
元ゴリラ @isonozexal

「…………安心しろ。この集落に奴らは近づけないさ」 そう言って、信彦は歩き出す。 「な、何をする気だ!?」 「うまかったフルーツの例をする。それだけさ!」 駆け出し、信彦は集落を後にする。改造人間の超人的な視力には、もう迫り来るゴルゴム怪人が見えていた。あれは…… 「マンモス怪人!」

2018-11-21 01:31:01
元ゴリラ @isonozexal

「人間よ、そこを退け!」 マンモス怪人は、その巨体で信彦に迫る。 「退くわけにはいかないさ。お前がゴルゴムである限りはな!」 その巨体による突進を信彦は虚空より召喚した、世紀王の剣で受け止めた。 「そ、その剣は!?」 「気づいたようだな。俺はかつて、お前達の王だった男さ。変身!」

2018-11-21 01:38:37
元ゴリラ @isonozexal

「仮面ライダー“蝕”!」 銀色の鎧から、生物的な皮膚が露出した“仮面ライダー”へと変身した信彦は、変化したサタンサーベル……スコルケインをマンモス怪人へ突き刺す。 「これで、終わりだ!」 今までも、多くの怪人をその一撃のみで粉砕してきた蝕だ。だが、 「この俺は、ゴルゴム最強の怪人!」

2018-11-21 01:43:43
元ゴリラ @isonozexal

「!? これは……」 スコルケインの刺された傷口から、じわじわとスコルケインが、そして蝕の腕が凍りついていく。 「俺の身体には全身に冷凍ガスが眠っている。剣を刺した時点で貴様の負けだ。仮面ライダー!」 「クッ……!」 手が、離れない。ならば、足だ!

2018-11-21 01:48:26
元ゴリラ @isonozexal

蹴り上げようとしたその瞬間、氷柱が生えて蝕の両脚を突き刺す。 「ぐぁぁっ!?」 身動きの取れなくなった蝕。 「無様だな、仮面ライダー! 貴様の力を吸収してやる」 マンモス怪人は、その長い鼻を蝕の腹部へと吸い付ける。 ガクッと力が抜ける感じを、蝕は覚えた。 「こ、これは……?」

2018-11-21 01:52:15
元ゴリラ @isonozexal

力を、吸われている? 「エキスだエキスだ! パワーアップだ!」 反面、マンモス怪人の力はより増していく。 「クッ、このままでは……」 その時だった。ブォォォン。ブォォォン。とけたたましいモーターの音。 何度も聞いた、バイクの音だ。 見ればバイクに乗った男達が近づいている。

2018-11-21 01:54:46
元ゴリラ @isonozexal

男達の見た目は特徴的だった。全員垢を基調とした、ロングコート。そして肩にはスパイクがついており、バイクも皆、赤と黄色でコーディネートされたものだ。 「レジスタンス!?」 マンモス怪人が、声を上げる。 おそらく、この地区のゴルゴムはこのレジスタンスに苦戦していたのだろう。

2018-11-21 01:57:31
元ゴリラ @isonozexal

だから、怪人が派遣された。 バイク集団の先頭に立つ男は、バイクから飛び降りると、マンモス怪人の前へとおどり出る。 「よせ、危険だ!」 「フン、敵の術中に陥った奴が何をほざく。見ているがいい!」 男は、錠前のようなものを取り出すと、ベルトへ装着。そして、 「変身!」

2018-11-21 02:03:54
元ゴリラ @isonozexal

時空を裂くようにして、巨大なバナナが男の頭に覆い被さる。そして、バナナがカットされていくと、それは鎧へと変形した。 西洋騎士を思わせる。赤き鎧。 「バ、バナナ!?」 マンモス怪人が叫ぶ。 「俺の名は、バロンだ!」 高らかに歌い上げるような声が、どこからか木霊する。 『Night of spear』

2018-11-21 02:09:23
元ゴリラ @isonozexal

マンモス怪人は、バロンへと向き直ろうとするが、蝕を凍らせて固定したため、うまく曲がれない。 「ぬぅ!?」 その僅かな隙に、バロンはベルトの錠前をカットする。 『バナスカッシュ!』 バロンの持つ槍が、オーラを纏う。そしてマンモス怪人の隙は、その槍で貫くのに十分な時間だった。

2018-11-21 02:16:03
元ゴリラ @isonozexal

「バカめ! 貴様も凍らせてやる!」 マンモス怪人の冷気はしかし、バロンに届かない。そのままバロンの大槍は、マンモス怪人を完全に貫いた。 「貴様が凍らせたのは果汁に過ぎん!」 「何だと!?」 「今だっ!?」 その瞬間、身体を凍らされ、足を貫かれた蝕が動く。 「キングストーンフラッシュ!」

2018-11-21 02:20:08
元ゴリラ @isonozexal

その時、不思議なことがおこった。 キングストーンの放つ膨大なエネルギーは、マンモス怪人の冷気を一瞬で蒸発。そして、月夜の度に力を蓄えていた月の石は、蝕に更なるパワーを与え、復活させたのだ。 「な、何故だ! 貴様の力は吸い取ったというのに!?」 「俺は月の王子、黒き太陽を喰らうもの!」

2018-11-21 02:26:39
元ゴリラ @isonozexal

蝕が、地を蹴り飛び上がる。空中で一回転すると、そのまま足を前へと突き出し、全体重を込めた強烈なキックをマンモス怪人へと打ち込んだ。 「イクリプス・キック!」 「弱者は、滅びろ!」 それと同時に、バロンは槍を引き抜く。 断末魔の悲鳴を上げて、マンモス怪人は爆発した。

2018-11-21 02:34:08
元ゴリラ @isonozexal

戦いが終わった後、変身を解除した信彦と、バロンの男は互いに顔を見合わせる。 「……君が、“仮面ライダー”なのか?」 「俺は改造人間などではない。この力は、改造手術に頼らずに戦う力」 男は、そう言って一枚のカードを出す。スペードのエース。 「強化装甲騎(アーマードライダー)バロン!」

2018-11-21 02:44:19
元ゴリラ @isonozexal

「強化装甲騎(アーマードライダー)……」 改造手術に手を染めず、怪人と互角に渡り合える力。確かに、ゴルゴムが放っておくわけがないか。 「貴様、“仮面ライダー”を探しているのか?」 男は、続ける。 「ああ。俺はゴルゴムと共に戦う仲間がほしい」 「フン。一人でここまで戦っていながら、仲間か」

2018-11-21 02:47:44
元ゴリラ @isonozexal

「そうだ。俺は弱いから、仲間が必要だ」 「…………」 男の沈黙を、「続けろ」と解釈して信彦は言葉を重ねる。 「例え一人一人が強くても、ゴルゴムという組織に敵いはしない。だが、我々も組織になればどうだ? 世界を敵に回してでも人々の味方をする者が集まれば、ゴルゴムとて簡単にはいかない」

2018-11-21 02:50:41
元ゴリラ @isonozexal

「……ついてこい」 男は、バイクに跨る。 「!?」 「“仮面ライダー”に会いたいなら合わせてやる。だが、奴は決して人間の味方なわけじゃないし、俺もそうだ」 男は、仲間の1人からバイクを借りて、信彦に渡す。 「ザック、ペコ。俺の留守中はお前たちにチームを任せる」 「ああ。行ってこい」

2018-11-21 02:55:46
元ゴリラ @isonozexal

「待ってくれ。まだ互いに自己紹介もしてないだろう。俺は秋月信彦。君は?」 「……駆紋戒斗」 戒斗。そう名乗った男の言う通りに、信彦はザックと呼ばれた男のバイクを借りる。久しぶりの感覚だ。光太郎とツーリングしたあの頃を思い出す。 「…………」 「どうした?」 「いや……」

2018-11-21 02:58:55