元太くん

yui @kn_km_ym

「電話鳴ってるよ」って教えてくれるんだけど元彼からで、「うん、大丈夫」ってそのままにしておくの。「ふーん」って言いながら男の人の名前だったから気になっちゃって、その日はいつも以上に甘えたな元太くん下さい。#トラジャで妄想

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仕事でミスをして、暗い気持ちで帰宅した夜。夕ご飯を作る気力もなくて、食パンとコーヒーという朝食のようなメニューで済ませる。ふと、電話が鳴っていたことに気がつき手に取ると、大学の後輩の松田くん。よく分からないけど懐かれちゃって、こうしてたまに電話がくる。今日は電話の気分じゃ、、

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と思いながらも、彼の元気な声が聞きたくなり出てしまう。「もしもし、久しぶり」「先輩、お久しぶりです！元気っすか？」と、元気なわけないんだけど一応元気だよ、と返す。後輩たちのたわいもない現状を一通り聞いた後、「ごめん、明日も早いから切るね」と終わらそうとすると、

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「・・・先輩、実は元気ないっしょ？」と、気付かれてしまう。ドキリとして、うっかり泣きそうになってしまった為咄嗟に嘘がつけず、正直に「うん、でも大丈夫。慣れてるから、じゃあまたね」と今度こそ切ろうとすると、「待って！あの、外見てくれません？」と低い声。

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一度飲み会帰りに送ってもらったことがあり、まさかと窓を開けると手を振る姿が。「、、お邪魔しても、いいですか？アイス買ってきました」の声に、笑ってしまう。「彼氏みたいだね」と笑うと、「そう思ってもらえたら嬉しいです」だなんて言うから

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どんな顔していいかわからず困惑していると「鳩が豆食ってるみたい！」と意味不明な発言。さらに「アイス溶けちゃうー！」と大声で叫び出すから慌てて玄関へ。電話する前と全く気分が違う自分に気がつき、にやける午後9時。#トラジャで妄想

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バイトの帰り道、タンタンと聞こえる音につられて歩を進めると、1人でシュートをする元太くん。ストリートバスケしてるって言ってたっけ。煌々と照らされるライトの下、華麗にシュートを決める姿がかっこいい。わたしの影に気がついたのか振り向いて笑う。「あれ？〇〇ちゃん？」

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「元太くんこんばんは」体育のバスケで同じチームになって以来、学部も学科も違うのに仲良くなった元太くん。家が近いことはなんとなく知ってたけど、こんなバイト帰りに会えると思わなかった。うれしい。「この汗見てよ、すごいっしょ」と首元を指し、あちー！っと言う。

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着ているTシャツは色が変わるほどで、何時間していたのだろうか。「明日何限からー？」と聞くと、ドリブルしながら「えーっと、3限！いえーい、昼まで寝！れ！る！」とシュートを決める。飛び散った汗が照らされて光る。「ってかさ、こんな時間まで何してんの？」「バイトだよ」「遅くね？」

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「そう？いつもこんなもんだよ」ベンチに座るわたしに近づき、ふーんと言う。「んじゃあさ、これから時間あるときここいるから、バイト終わったら寄ってよ。家まで送る」わたしの隣に腰かけて顔を覗きながらそう言う。「え、いいって。そんなに暗い道じゃないから1人で帰れるよ」

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「いいの！俺がバスケしてるときだけ、ね？あ、そうだ連絡先教えてよ」あれよあれよと交換し「よし、じゃあ帰ろ！」と送ってくれることに。なんか上手く行き過ぎている気がする。「今日ここ来てよかったわ。穴場だなーと思って練習してたけど、まさか会えるなんて」きらきらした笑顔が眩しい。

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そんなこと言われたら勘違いしてしまう。「わたしもバスケしてるところ見れてよかった。相変わらずかっこいいね」すると急に立ち止まるから、つられて立ち止まる。なんだろう。「あー、思い出した！今日の牡羊座、1位だったんだよね。これだったか、はいはい」ひとりで納得したように喋り出す。

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牡羊座？占い？「ねえ」「なに？」「最初はグー！ジャンケン」と始めるから急いで出す。あ、負けた。「よっしゃ！じゃあ俺が勝ったから寄り道しよ、ね？はい、決まりー！」何が何だかわからないけど、楽しそうな元太くんを見ていると元気が出る。夜風が頬を撫でた。帰りたくないなあ、#トラジャで妄想

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ちなみにジャンケンで負けても、「うわー、負けたー、これはアイス奢りですね。コンビニ寄ろっか」となります。

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社会人になって半年が経った。長いようなあっという間のような。この前の通勤定期の更新で、次の半年に覚悟を入れた。正直まだまだ慣れない仕事と疲れた身体、こんな時に素直に甘えられる性格ならもう少し楽なのに、といつも思う。「明日会えるの楽しみにしてるね」元太くんとは、忙しさでなかなか

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会えずにいる。付き合うことになってからこうして連絡をしたり、たまに電話をすることはあるけれど、会うのは久しぶりだ。わたしも楽しみにしてるよ、と返事をして眠る。明日は家に来ることになっている。部屋の掃除もして、手料理が食べたいと言うから少し前から練習もした。「お邪魔しまーす、お、

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綺麗！」そう言えば部屋に上げるのはあの夜ぶりで、あの時は急だったから散らかっていたかもしれない。「どうぞ、今日はちゃんと掃除したからね」なんか緊張すんなーと言いながらも嬉しそう。後は盛り付けだけにしているから、とエプロンをしてキッチンに立つ。後ろに立ってじっと見られるから振り返る

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とにやっと笑い、「ねえ、まだー？」とねだられる。はいはい、と頭を撫でる。犬みたいでかわいい。美味しい！とたくさん食べてくれるから嬉しくなる。食後、これ持ってきた！と前に話していた映画のDVDを取り出し、セットしてくれる。コーヒーを飲みながら観ていたはずなのに、仕事の疲れが溜まって

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いるのか睡魔が襲ってくる。手を繋いでいる温度が暖かくて、寝てはいけないと分かっていながらも、うとうとしてしまう。気がつくといつの間にか、夕日が見える時間になっていた。急いで元太くんの方を見ると、わたしの顔をじーっと見ていた。「、ごめん！寝てたね、わたし。ごめんね、せっかく、」

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「いいよ。それより、疲れてるんでしょ？俺こそ疲れてるのにご飯作ってって、大変だったよね」「ううん、それはわたしも楽しみにしてたから」せっかく会えたのに、せっかく2人だけの時間なのに、再度謝ろうとすると「ねえ、たまにはさ、疲れたーとかもう嫌だーとか言っていいよ？俺ばっかり甘えてさ、

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甘えてほしいよ？頼りないかもしれないけど」ずっと溜め込んでいた言葉のように吐き出す。そうだ、わたしは自分が年上だからと上手く甘えずにいる。それを元太くんが分かっていると知りながら、きっと同じくらいに寂しいはずなのに。八の字になっている眉間を人差し指で押される。ちょっと痛い。

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笑いながら「困った顔もかわいい」と言う。「、、大変なのはわたしだけじゃないって分かってるけど、」自分の中で消化しようとしていた想いを言葉にする。「でも、頑張る。元太くんが頑張ってる人が好きって言ってたから、、」いつかの電話でそう言っていたのを、胸にしまっていた。辛い時、

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そっと思い出しては、こんなちっぽけなわたしだけど、とめげずにいられた。まるで愛しくてたまらないみたいな顔でぎゅーっと抱きしめられる。「ねえ、今日泊まっていい？こんなにかわいい〇〇ちゃんと、バイバイしたくない」彼に甘えられているようで、わたしが甘えているのかもしれないとふと思う。

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映画のエンドロールを見つめながら「いいよ、」と呟く。思っていた以上に愛されている。新しい気持ちをいくつももらっている。優しさに溺れずに、ちゃんと愛で返したい。目が合うと微笑み合う距離で、今度は眉間にそっとキスをされる。今夜はゆっくりと話せるかな。#トラジャで妄想

yui @kn_km_ym

ハミングが聞こえる、なんの歌だろう。放課後、誰もいない教室。テスト期間中なのに残ってる人いるんだ、ってわたしもその一人なんだけど。こっそり覗くとサッカー部のエースの松田先輩。黄昏れるように窓からの景色を眺めている。意外だ、普段は周りの人と騒いでいるイメージだから。ましてやわたしは