催眠商法に携わった者の記録

hilowmix @hilowmix

なんとなく、黒歴史を書いておこうかと思う。

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いろいろあって、HD社をやめて（クビになって）横須賀を離れて名古屋の実家に戻った。N氏が主導したゲームについて、私は中盤から給料なしでマスタリングしていたのだ。

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N氏の主張・マネジメントは別として、私は狭量で原理主義的な自然回帰志向を持っていた。まあ、基本的にばかだったのだ（今でも）。

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年齢も年齢、職歴も職歴だったので、あまり仕事は選べなかった。求人雑誌で調べ、自然食品販売ということでNG社に入った。

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NG社はAというブランドの自然食品などの小売店をやっていた。しかし、その宣伝部隊というのがあった。「サテライトショップ」という言い方をしていたが、つまるところ催眠商法である。私はその先兵になった。

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サテライトショップは、空き物件を利用して4ヶ月程度の短期間展開する。名目としては「将来、小売店をこの付近にも展開したいので、自社商品の良さや必要性を広告する」というものだった。狭量な原理主義者だった私には、それも心地よく響いた。

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サテライトショップの商品棚は4つか5つほど。店舗の7割がたのスペースには椅子が並べられ、前には店長が口上をぶつ演壇が設けられる。店長以外の店員は2ないし3名。

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口上は基本的に一日3回だったと思う。ただし開店初日などは多い。初日はパンを無料進呈するなどしてなるべく人を呼び集める。彼らがいぶかしむ前に「椅子に座って口上を聞く」というスタイルを受け入れさせるのがポイントだ。

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口上は調子よくはじまる。身近な話題から食生活やら住宅環境やらの問題点を指摘し、それの改善にやくだつ商品の話につなげる。最初のうちはちょっとした食品などを販売する。これもまたスタイルを客に受け入れさせるための手だ。

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二ヶ月目ぐらいになると、口上は続き物になる。いかに寝る姿勢が大事か、などの話をする。そして…羽毛布団を売るのだ。羽毛布団は最も単価の高い製品である。

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ここまででどれぐらい顧客が残るかがポイントだ。単価も高いので来なくなる人も多い。しかし、ここで買った顧客は「自分が信頼した」ということでその後もいろいろ買ってくれることが多い。つまるところカモだ。

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たいてい口上は昼間であるから、客の大半は老人だ。専業主婦も最初のうちは来るが、徐々に減っていく。老人らはそれなりに蓄えがあるが、家族との交流が乏しく、親しげに声をかけてくる店員を少しずつ信用するようになる。

@northenEXIT

@hilowmix 読ませていただいてます…… うまく表現できませんが、最後まで読みたいです。

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幸いというかなんというか、私は口べたで人付き合いも下手だったので、あまり顧客は得られなかった。だが、ゼロではない。少なからぬ老人らに信用させた。

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サテライトショップは高単価の物品を短期間に売りつけてその地を去る。客が自分たちの選択が誤っていたのでは、と気付く頃にはもういない。さすがに私も、これは違うんじゃないか、とか思ったりもした。しかし、それでメシを食べるしかなかった。また、ころころ仕事を変えるのもイヤだった。

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職場では「ろくに商品を売れない」とコケにされ、精神病院に行くよう促されたこともあった。給料は少なく、ボーナスがゼロということもあった。

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幸か不幸か、ここで転機が訪れた。弟が運転する車で事故に遭い、骨を折ったのだ。完治するまではサテライトショップの仕事はできない。私は支社での支援業務に移った。

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支社によるサテライトショップの管理はいいかげんなものだった。ともかく短期間に売り上げを作る店長がエライのだ。在庫管理などは二の次とされていた。ごまかして儲けたりした者もいたようだ。

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支社にいると、上（NG本社）もまたぐだぐだであることがよく分かった。社長が書いた本を社員が買わされたこともある。なお買わされたすぐ後に古書店に行ったらもうその本が100円コーナーに並んでいた。

@northenEXIT

何故か泣けてきました…… RT @hilowmix: 支社にいると、上（NG本社）もまたぐだぐだであることがよく分かった。社長が書いた本を社員が買わされたこともある。なお買わされたすぐ後に古書店に行ったらもうその本が100円コーナーに並んでいた。

hilowmix @hilowmix

当時はたしかWin3.1を使っていた。パソコンは本社が送りつけてくるのだが、どういう訳かあるPCには123が、別のPCにはExcelが入っていたりして効率ははなはだ悪かった。おまけに上司はMultiplanを使うよう命令した。

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「波動」とか「EM菌」とかあからさまに怪しいものも扱っていた。F総研の名もよく出てきた。いまだにF総研やらS出版がでかい顔をしているのは不思議だ。

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とかやっているうちに、サテライトショップのスタッフらがごっそりと逃げ出したりした。支社などの支援がなくても口八丁で儲けられると考えれば、もっと実入りのいい会社でやろう、と別のところに移ったのだ。支社の売り上げはかなりダウンしたはずだ。

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そんな訳で、新たな戦略が打ち出された。かつて羽毛布団を買った顧客を訪問し、クリーニングするという名目で近づき、また買わせるという策だ。実験的な部隊に配属された人からは「寝具の専門家と名乗るよう指示されている」なんて話も聞いた。

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あからさまなウソは、さすがにイヤだった。また、支社には寝具店の娘さんもいた。彼女からは「うちだったらこんな二級品をこんな値段では売れない」とも聞いた。