- sasasa3397
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発端
「こんにちは。スイッチは今日とても機嫌が良いです。」「スイッチも仲間に入れて欲しいです。」「スイッチの名前はスイッチと言います。」
2019-02-13 21:39:29本編
「スイッチのスイッチです」 「え、何のスイッチ?」 「スイッチにもわかりません。押しますか?」 「いや、怖いからよしとく……」 「そうですか。押したくなったらすぐにスイッチを呼んでください」 「うん……多分押さないけど……」
2019-02-13 21:51:57「これまで色々な人に、スイッチはスイッチを押さないか尋ねました」 「うん」 「押した人はひとりもいませんでした」 「まあそうだよな」 「スイッチのスイッチは何のスイッチなのでしょうか」 「スイッチも知りたいんだ?」 「スイッチのスイッチですから……」
2019-02-13 21:57:29「スイッチはスイッチですから、スイッチにスイッチのスイッチたる所以があるのではないかと考えます」 「ちょっとよくわかんなくなってきたな」 「スイッチについて知らずして、スイッチはスイッチとしてこのままスイッチしていていいのでスイッチか」 「語尾は今とってつけたよな」
2019-02-13 21:59:43「要するに、生まれた意味を知りたいとかそういうやつ?」 「キャー! スイッチはこの人に乱暴されました」 「ざっくり言いすぎたけど語弊!」 「スイッチはスイッチです」 「ごめんて」 「でも、生まれた意味とは少し近いような気もします。いいことを言いますね」 「なんで俺さっき叫ばれたの?」
2019-02-13 22:04:40「でも、もしそのスイッチが緊急停止スイッチだったり、超爆発破壊兵器のスイッチだったりしたらどうするんだ」 「超爆発破壊兵器って」 「いや、そこはいいから……」 「つまり、死や破壊そのものが生まれた意味なのだとしたら、という質問なのでしょうか」 「なんで俺さっき叫ばれたの?」
2019-02-13 22:09:29「それを確かめるためにはスイッチを押さないといけないけど、スイッチはそれでもいいのか?」 「スイッチは機体の振動を感知しました」 「ごめん、怖がらせた」 「そんな多大な可能性がスイッチのスイッチにあるとはわくわくです」 「武者震いかよ」
2019-02-13 22:13:31「スイッチのスイッチには、スイッチの思いもよらない力があるのかもしれません」 「うん」 「それがスイッチにとってどう働くにせよ、もう少しこのわくわくを取っておきたいとスイッチは考えます」 「そうだなあ、時間はもうちょいあるし」
2019-02-13 22:17:30「でも、もし何か必要があって押す時が来たなら、スイッチはあなたにならスイッチのスイッチを任せてもいいと判断します」 「……まあ」
2019-02-13 22:19:07「ほかにいねえからな! 人な!」 「救援来ませんね」 「通信届いてねえのかな……。火星方面のレスキューにずっと投げてるんだけど……」 「個人所有船の事故になどいちいち人員を割けないという判断の可能性が」 「やめて! つらい!」
2019-02-13 22:21:48「まあ、食料も酸素もまだ少しあるし、もうちょい粘るか」 「スイッチのスイッチが超光速優秀ホットラインである可能性もあります」 「超光速優秀ホットラインって」 「押しますか?」 「押さないよ。話し相手がいきなりぶっ壊れる可能性の方が怖いわ」
2019-02-13 22:24:38俺たちは三日後無事救助された。備蓄がギリギリだったので正直ホッとしたし、休養のために短期入院する羽目になった。スイッチはスイッチでメンテナンスだ。再会はさらに三日後だった。スイッチがスイッチのスイッチについて説明を受けたのかどうかは知らない。スイッチ自身は何も語らなかった。
2019-02-13 22:29:16ただ、まだ時々スイッチはスイッチのスイッチを取り出して俺に押すかどうかを尋ねることがある。当然、俺はスイッチのスイッチを押したことはない。 「まあ、別に生まれた意味なんてあってもなくても、って感じだよな」 「キャー! スイッチはこの人に乱暴されました」 「語弊! ここ人いるから!」
2019-02-13 22:32:41俺はスイッチのスイッチを押さないし、そうしてぶっ壊れた船の修理ローンをせいぜい稼がなければならない。意味などそれで十分だと思う。 「あまり観念に囚われすぎてはいけないという話ですね」 「なんで俺さっき叫ばれたの?」 星暦3694年。かつて地球と呼ばれた星が存在した、小惑星群にて。
2019-02-13 22:35:59