日向倶楽部世界旅行編第75話「バルバトス加賀」

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「待たせたなァ、始めようぜ、バリスゲェステージをォ…」 日向倶楽部、この後21:00！ pic.twitter.com/FsTp5hy0Qs

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【前回までの日向倶楽部】 準決勝第一試合、Wヴィーストとデスメタルピースの対戦は、大量の艦載機と音による仕掛けを有するデスメタルピースの有利で進んだ。 しかしその最中、攻撃のカラクリに気付いた足柄が身を呈して突撃、戦況は五分となる。 だがその時、加賀が叫んだ。

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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第75話「バルバトス加賀」

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〜〜 怪物の咆哮を思わせる叫びが、スタジアムに響く。青空を引き裂き、荒波を起こす、凄まじい程の、声。 雷の如く落ちたその声に歓声は引っ込み、スタジアムは静寂に包まれた。しんと静まりかえり、さざ波の音だけが残る。 その声を発したのは、加賀であった。 「和枝…お前、声…！」

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背中を反らし、天を仰ぐ加賀に、吉田は震えながら話しかける。ずっと沈黙していた加賀が、叫んだのだ。 「頭にキたぜ…すっげぇよ…」 加賀は天を向いたまま呟く。 「茂人ォ…すっげぇんだ…頭にガンッガン響いてよォ…バリスゲェ感覚が、身体中を巡ってやがる…」

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彼女は、身体の奥から絞り出すように息を吐いた。 「アー……この感覚だぜ…この、どうしようもねえくらい、ムカムカしてビリビリして、魂の震えが止まんねえって、感じのよォ…」 そう言うと、加賀は裂けんばかりに口角を上げ、ゆっくりと正面を向いた。

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「マジに久々だァ…この、感覚…叫ばずにはいられねえ。」 加賀はギターをひと鳴らしし、舌舐めずりをする。 「飢えてんだ…どうにもならねえっていう、目の前にデッケェ壁が、そいつをぶっ壊してェっていう、感覚なんだよ…」 またギターを鳴らし、彼女は凄まじき笑みを浮かべる。

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だがそんな呑気してる彼女を、最上達が見過ごすはずもない。 「なんだ、あいつ…」 最上はそうボヤきながら、足柄と共に彼女を撃つ。しかしそれはあっさりと、最小限の動きで避けられた。 「アー……良ーい弾だァ、すっげぇ良い…昔よく飛んで来たのより、良い奴だ…」

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加賀はおぞましさすらある笑みを浮かべ、飛んで来る弾丸を次々と避ける。その動きは先程までとは一転し、素早くしなやかであった。 「こんなシケた格好じゃあ、震えねえもんなァ…」 彼女は避けながら、着ていた着物を脱ぎ捨て、肩を出し、袈裟懸けだけになる。

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「何のつもりだ、あいつ…」 悠長にお着替えなど始めた加賀に、最上は狙いを定める。しかしそれは、突如攻撃してきた艦載機達に阻まれた。 「茂人…お前のも借りるぜ…」 加賀がそう言うと、空中で待機していた吉田の艦載機が編隊を組み、加賀の周囲を飛び始めた。

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「アー…こうだなァ、こう、してよォ…」 その艦載機達に守られながら、加賀は手にべっとりとついた血で髪にメッシュを入れ、余ったものを顔に塗りたくる。 「フーッ…中々、キマッてやがる…今のアタシにピッタリの、イカしたメークだ…」 彼女はそう言うと、血の付いた顔に白い歯を見せる。

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そして加賀は、その笑みを浮かべながら最上達に言った。 「待たせたなァ、始めようぜ、バリスゲェステージをォ…」 一旦、艦載機達の攻撃が止まる。 訪れる静寂、それを引き裂くように、加賀は叫んだ！ 「ぶっちぎって行くぜ…Aメロでダウンしても、演奏は止まらねえからなァァァァッ！！！」

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ガコンッ！と大きな音が響き、加賀のギターは姿を変えた！リュートだったものがギターに、そしてギターだったものは、凄まじきギターに！ 響き渡るディストーション・サウンド、絞り出される悪魔の叫び！ 悪魔が現れた、雷鳴の如き咆哮がスタジアムを震わせる！ 加賀が襲い掛かってきた！

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【加賀】 声を取り戻した加賀、興奮に駆られ、狂喜の笑みと共に襲い来る。 吉田のものも含めた、通常の艦娘を凌駕する程の艦載機を操作するため、飛行甲板型のリュートは放熱板を開放し、巨大な異形とも言えるギターへと姿を変えている。 艦載機運用能力のみならず、単純な戦闘力も極めて高い。 pic.twitter.com/fLTLcyZT6x

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「響け！響け！響きやがれェェェェッ！！！」 勢いのあるギターサウンドと共に、加賀の艦載機達が最上達を目掛け動き出す！その動きのキレは、先程までより更に増している！ 「ペースを取り返される前に突っ込むわよ！」 「潰しに行くしかないですね！」

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加賀に打撃は与えている、あとは攻め切れば勝ちなのだ！最上達は素早く前進、艦載機を突っ切って加賀の元へ向かおうとする！ しかし！ 「アッハッハッハッハ！！良いぜ良いぜ良いぜ良いぜェェェッ！？もっとだ、もっとアタシに叫ばせろォォォッ！！」 加賀が勢い良くギターを鳴らすと！

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「ッ…！」 艦載機達の攻撃が一気に激しくなる！最上達は進路変更を余儀なくされた、加賀への接近が行えない！ そんな、攻撃を避けた最上達を見て、加賀は不機嫌そうに言った。 「アアー……やるなァ…。大体、ここで終わっちまうんだよ…まだ足りないってのに、ここで終わっちまうんだ…」

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だがすぐ、その表情は狂喜の笑みに変わる！ 「でもお前らは終わらなかった…ここで、終わらなかった…。アー……だから、まだ戦いが終わらねえって事なんだよなァッ！アハハハハハッ！！！」 高笑いと共に、加賀のギターは激しく揺れる！音が、波を作る！空気の波、海の波、魂の波！

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「アイツなんだ！？黙ってたと思ったら急にベラベラ、薬でもやってんのか！？」 最上は若干引きながら吐き捨てる。 だがいつまでも悪態を吐いている余裕はない、加賀が強い音色を響かせると、艦載機達もそれに同調する様に激しく攻め立ててくるのだ。攻撃は熾烈さを増していく。

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その攻撃には、あの足柄ですら涼しい顔をしていられない。 「幸い距離は近い…けど、当てるにはもっと寄らないと…！」 叫び始めた加賀は、攻撃だけでなく回避のキレまでもが増していた。艦載機攻撃を凌ぎながらの片手間な中距離戦では、有効弾を送り込むのは極めて難しかった。

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(アポロ∞は使ってしまった…どうやって奴に近付く…？捨て身で動いても、辿り着く前に蜂の巣になる可能性すらあるというのに…) 鮮やかな回避を繰り返しつつ、足柄は思考を巡らせる。二対二という試合ルールに対し、加賀の艦載機攻撃は質も量も桁違い、むしろ耐えている足柄達も異常な試合だった。

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だが最も異常なのは間違いなく、ギターをかき鳴らして叫び続ける加賀だろう。 「この潮の匂い…何度嗅いだか分からねえ懐かしい匂いだ…。」 加賀はブツブツと呟く。 「でもよ、でもそれだけじゃ足りねえんだ。潮の匂いなんてのは、何処にだってあるんだ…海の近くなら、なおの事よォ…」

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低音を響かせる加賀、だが次の瞬間また、ギターは激しく唸り出す！ 「海の上だッ！海の上なんだぜ、いつだって戦いの風が吹くのはなァッ！！来る、そいつらを潰す！それが、それが一番クるんだよォォォォォッ！！！」 加賀の艦載機攻撃がまた強くなる！また、いやまだ強くなる！

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(歌っていうか、叫んでるだけじゃないか！あいつ本当にミュージシャンなのか！？) 口を開けば舌を噛みそうな戦い、最上は心の中で激しく毒突く。 「アアアアァァァァッ！！！」 加賀は狂ったように叫び続けていた、音に合わせるでもなく、ぐちゃぐちゃに叫んでいるだけだった。

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その様子には、放送席も若干引き気味であった。 「さあバルバトス加賀、激しい攻撃を続けていますが…いやはや、凄い迫力ですね。」 実況のケンは取り繕うように言葉を並べる。その間も加賀の攻撃は続く、永遠と思えるほど衰えぬ攻撃が続く。