マッハが売りの少女

童話道
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さんかく @File_Snake

マッハはいかがですか?マッハをどうぞ。おう何売ってやがる小娘、ごろつきが少女に絡みます。それァな、兄ちゃん、少女はにちゃりと笑みを浮かべ、激しい破裂音と共にごろつきは血を吹いて倒れました。鍛錬の果てに得た異形の拳!超音速の見えない突き……少女の掌に雪のひとひらが降りかかる……

2019-03-28 12:32:42
さんかく @File_Snake

見ていましたぜあんたのマッハ。少女の背に声がかかります。お求めのモノを売って差し上げましょう。マッハが売りの少女は獣のように笑います。何を売ってくれるって?思い切り殴って蹴っても立ち上がって殴り返す相手が欲しいンでしょう。あたいはマッチ売りの少女。ドリームマッチをご提供しまさァ。

2019-03-28 18:24:31
さんかく @File_Snake

食わせ物女房とか首取りの翁とか鍛を積んだ娘とかと戦うマッハが売りの娘

2019-03-28 18:33:19
meiha @lpaly

少女に敗れた首取りの翁があやしき竹林に見出したのは、あふれんばかりに光り輝く才を持つ、月のように美しい娘。翁は己の技のすべてを、背負う業のすべてを、娘に教え育てた。おぼろにかがようその拳が、マッハが売りの少女に襲いかかる。次回、「なよ武のかぐや姫」

2019-03-28 18:55:06
さんかく @File_Snake

未だ知らぬ敵を倒すべく修練に励むなよ武のかぐや姫、五人の求道者を破り、五つの宝を手にしたその名は五界に轟き、武を志す者にかぐや姫の名を知らぬ者はいなかった。ある夜かぐや姫の元を訪れた影、名を拳取りの翁という。首取の育てた一粒種と聞き、年甲斐もなく拳が逸る。竹林に乾いた風が吹く……

2019-03-28 19:30:23
meiha @lpaly

与える痛みだけが己の痛みを取り去ってくれる。愛するものから引き離された痛み。愛するものを奪われた痛み。痛みが、痛みが、痛みが。悪意なき加虐の吐息がマッハが売りの少女の首元をくすぐる。次回、「S型女房」

2019-03-28 19:36:45
meiha @lpaly

水底に沈んだ闇の拳が歴史の煙を巻いて現れうそぶく。人の身に寿命あれば、すなわち拳こそ慈愛、拳こそ救いと。その脚は舞い踊るように流麗、その守りは骨甲に似て堅固。しかしてその眸は淀んでいた。次回、「裏しま太郎」

2019-03-28 21:39:40
meiha @lpaly

「その拳、鬼が憑いておるな」和尚はそう言うと法力を練り上げる。。「鬼だァ?だったらどうする?」突き!突き!突き!しかし和尚の懐から飛び出した三枚の符がマッハの速度を殺し捉える!歯を剥き出して悪鬼も斯くやと嗤う和尚。「鬼は…喰ろうてやらんとなァ」

2019-03-29 01:00:20
meiha @lpaly

聡明だった女王は魔法の鏡に魅入られたのだ。闘いの狂気に浮かされ女王が唄う。「鏡よ鏡よ鏡さん、この国で一番強いのは誰?」ぐしゃりとリンゴを踏み潰し、マッハが売りの少女が答える。「昨日まではてめェだったかもな」

2019-03-29 03:00:29
さんかく @File_Snake

まともに受ければ砕け散る、超音速の拳を浴びて、それでも女王は倒れません。ヘッ、こいつは成程、不死の女王と呼ばれるわけだ。そうだ私は不毀の女王。一度も膝をついたことはない。無数の傷が刻まれた顔で、女王は凄絶に嗤います。私は不帰の女王。城に招いた強者は皆、この雪の下で眠っているのさ。

2019-03-29 18:48:22
さんかく @File_Snake

あたいはたくさんの闘いを見てきた。マッチ売りの少女の衣の下から、異形の肉体がまろびでます。マッハの、ことによるとあんたなら。御託はいいさ、やろうぜ、遊ぼう。マッハが売りの少女と、マッチ売りの、いいえ、マッチョが売りの少女。二人の強者は親友のように笑い合い、鏡写しに構えました。

2019-03-29 18:58:22
meiha @lpaly

「わたしは今、世のことすべてを忘れ利己心に身を任せようとしている」すべての無駄を削ぎ落とし、みすぼらしくもうつくしい像。その貌は異形の歓喜に歪んでいた。「御託は聞き飽きたぜ。来な」そう言った少女もまた、獰猛な歓喜をほとばしらせる。冬の曇天を燕が一羽舞っていた…。

2019-03-29 20:50:52
meiha @lpaly

「狼が来るよ、狼が来るよ。怖あい狼が来るよ」野生を取り戻した少年が殺気を靡かせ少女に襲いかかる。風を撃つ炸裂音が響き、叫びとともに新たな血の匂いが辺りに満ちる。人の居らぬ村に積もった寂寞の中、ふたつのけものが相対する。

2019-03-29 21:16:09
meiha @lpaly

魔笛の音の裊々と響く霧の夜を超音速が切り裂いた。「なあ君、なあ君、楽園を目指したくはないのかな」生命の灯火を燃やし尽くし笑った笛吹きに、少女は突いた拳を納める。「クソみてェな世界でクソみてェな奴らとクソみてェに殴り合うより他の楽園なンざ知らねェよ」マッハの残響がどこかに消えた。

2019-03-30 00:51:15
meiha @lpaly

マッハの突きが猿の顎を叩く!肋を砕く!腹を撃ち抜く!それら配下どもを一顧だにせず猿が吼える。「右翼二陣は疾く展開せよ!圧し包め、ひと時も休ませるな!」猿の軍勢の放つ恐るべき青柿の速射の中を、少女が走る。これが己の戦名乗りだと言わんばかりに炸裂音を響かせて。

2019-03-31 06:23:50
さんかく @File_Snake

はだかだ!王様は裸だ!その通り、王は裸です。狂える王の宮殿に身一つで忍び込み醜い首をへし折ったあの日から、被り続けた賢王の面を脱ぎ捨て、王はこの上なく裸でした。魔技、カラクジャク。老いた戦士の顔は峻険な冬山のようです。淑女になんてモン見せんだよ……軽口を叩きつつ少女は構えました。

2019-03-31 06:42:15
meiha @lpaly

声を殺し心を殺し一歩あゆむ度に激痛に耐え、それでも為すべきことがある。研ぎ続けた技はどこまで届くのか。己は井の中の蛙かそれとも大海の覇者か。知りたい。強者を。闘いたい。強者と。海底から伸びる腕が今少女に絡みつく。次回、「忍魚姫」

2019-03-31 07:31:09