ここは大都市ムーヨークの郊外、ニンサイタマ。今日も空き地には、ストリート・バスケットをする子供達や、フリスビーをする子供達があふれていた。
2019-04-01 12:49:07「それでね、豪華客船クルーズっていうのはさ、船の中にプールとかスムージーとかがあって、それらのサービスを好きに受ける事ができちゃうんだなあ。パパとママはアロマセラピーしてリラックスしてるから、僕なんてビュッフェでローストビーフつい食べちゃって」今日もコネマキの自慢!
2019-04-01 12:51:25「えー、すごいね」ムメカちゃんがスマホをいじりながら感心した。タキシは気が気ではない。(クソッ……コネマキのやつ、親が有名なスマホ企業のCEOだからってあの態度……ムメカちゃんのあのスマホもコネマキがただでプレゼントしてアピールしてるんだ。このままじゃ僕は何一ついいところがない!)
2019-04-01 12:54:05「オイ!それはスゲエな!」そのとき、野太い声!空き地でもっとも恐れられているヒュージEだ!「コネマキィ!お前にもらったスマホがアプデがうまくいかなくてよォ。暴力するぞ?」「じょ、冗談きついよヒュージE。ほら、ここをこうすれば……」「おお、直った!豪華客船クルーズに俺を連れてけよな」
2019-04-01 12:56:51「そ、それは一旦持ち帰らせていただいて……」コネマキはタジタジだ。タキジはこっそり帰ろうとするが……「おうタキジ!いたのかよ」「アッ」「わかってんだろうな。今週末の草ドッジボール、頭数が足りねえんだ。ありがたく参加させてやるけど、足引っ張ったら暴力だぞ」「アイエエエ!」
2019-04-01 12:59:10タキシは散々な気持ちで帰宅だ。「ニンジャモーン!コネマキが自慢するしヒュージEが無茶な事を言ってきて僕はどうしたらいいかわからないんだよォ!」タキシは階段を駆け上がり、自室に飛び込んだ。「ニンジャモーン!」……フスマがゆっくりと、開いた。そこには……。
2019-04-01 13:00:45ナムサン……!押入れの中にはフートンは無い。そこに居たのは、赤黒装束のニンジャである。アグラ姿勢で座り、微動だにしない。「忍」「殺」のメンポの字体は恐ろしい。タキシは失禁をこらえる。これがニンジャモンだ。ニンジャモンはゆっくりと目を、開いた……。「……グググ……愚かなりタキシ」
2019-04-01 13:02:31ニンジャモンが何故タキシの部屋に居候する事になったのか、思い出そうとすると頭がぼんやりする。なんらかのショックのせいだ。だが、ママはおおらかで気にしないし、パパは単身赴任しているので、とにかく今、この恐ろしい存在はタキシの部屋に同居しているのだった。「毎日泣きながら帰宅、笑止」
2019-04-01 13:05:09「だってコネマキがクルーザーで……ムメカちゃんも……」「グググ……オヌシはボンノにまみれ過ぎだ。船に乗ってどうする。オヌシは毎日オンラインゲームばかりやっておる。船に乗ってもやる事は同じ也」「それにヒュージEがひどいんだ。暴力で脅すんだ。やっつけてよニンジャモン!」
2019-04-01 13:08:15「やっつけるだと?」赤黒の装束の背がざわめいた。「何故この儂がコワッパ一匹にわざわざカラテを振るわねばならんのだ。儂を安く見るでない」「そんなあー!」タキシは泣いた。「ドッジボールは人に球を当てる暴力的スポーツで、生きた心地がしないよお!」その時だ。「おやつの時間よ!」ママの声!
2019-04-01 13:10:42「おやつか……」タキシは涙をぬぐい、下に降りる。「ググググ……儂のニンジャ嗅覚が好物のにおいを伝えてくるぞ」のそりと押入れから出て来たニンジャモンがタキシに続く。「この前、ニンジャモンがまだ足りなそうだったから、たくさん作ったわよ!」パンケーキの山!「ママ=サン、ドーモ」
2019-04-01 13:14:15ニンジャモンは椅子の上で正座し、パンケーキを食べる。メンポが牙の口の形になり恐ろしい。タキシは横目で見て顔をしかめる。(クソッ……ママはニンジャモンの事がけっこう好きなんだ。こんな奴、コネマキの自慢に対抗する物をくれないし、ヒュージEをブチのめしてくれない無駄飯ぐらいじゃないか)
2019-04-01 13:16:55「お茶も飲むわよね?」「ググググ……イタダキマス」ニンジャモンはお茶を飲んだ。タキシは溜息をついた。「どうしたのタキシ。食欲がないじゃない。病気なの?」「大丈夫……ハア」「グググ……愚かなりタキシ。適切な栄養摂取は児童の成長に不可欠……だが要らぬのなら儂がもらう」「食べるよ!」
2019-04-01 13:20:18「ハア……ハア」しきりに溜息をつくタキシの襟首を、おやつを食べ終えたニンジャモンが掴んだ。「善哉。ゆくぞ」「エ?どこに?」「決まっておろう。ヒュージEの件だ」(ま……まさか!ニンジャモンが僕の不憫さに共感して一肌脱いであいつをブチのめしてくれる気になったんだ!ヤッタ!) 15
2019-04-01 13:23:12ゴウウウ……。風が吹き抜ける。十分後、タキシは河原の高架下、所在なさげにキョロキョロしていた。目の前にはニンジャモンが腕組みし、ジゴクめいた眼差しで立っている。「あの……ここは?」「ヒュージEの件だ」彼は足元をしめした。そこには、おお、ナムサン……!大量のバスケットボールがある!
2019-04-01 13:25:13「これは一体!?」「カラテ也!」ニンジャモンは目を見開いた。その恐ろしさにタキシは失禁しかかった。「アイエエエ!」「日頃黙って聞いておれば、オヌシは儂にああしてほしいこうしてほしいと笑止千万。恥をかきたくなければ事前に訓練せよ!」「訓練!?まさか!」「そのまさか也!」
2019-04-01 13:28:21「嫌だよお!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ボールがタキシの頬に命中!「アイエッ……!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ボールがタキシの頬に命中!ニンジャモンは第三球を準備!「始まっておるぞタキシ!イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」つぎつぎ投げ込まれる球!
2019-04-01 13:30:24「イヤーッ!」さらに投げ込まれる球!偶然それはタキシの胴体にジャストで飛来し、タキシはうまく受け止める!「……アッ!」タキシは瞬きした。身体を手応えと爽快感が突き抜けた。「……」ニンジャモンはやや不満げな表情をしたが、「儂の狙い通りよタキシ。その感覚を胸に刻め。繰り返すのだ!」
2019-04-01 13:33:56「イヤーッ!」「イヤーッ!」タキシは再び投げられた球を受け止めた!「ヌウーッ……」ニンジャモンは新たな球を掴み、投げつける!「イヤーッ!」「イヤーッ!」キャッチ!「や、やった!」「イヤーッ!イヤーッ!」フェイント二球同時だ!「グワーッ!」「見たかタキシ!油断するからそうなる」
2019-04-01 13:36:25「ひどい!許せないぞ!」タキシは球を掴み、ニンジャモンに投げ返した。ニンジャモンはチョップで球を弾き飛ばした。「笑止!」「イヤーッ!」「笑止!」「イヤーッ!」「笑止!」「イヤーッ!」二球同時フェイントだ!「グワーッ!卑怯な!」「お互い様だ!」タキシとニンジャモンは激しく投げ合う!
2019-04-01 13:38:42……夕方!タキシはニンジャモンを背負い、商店街を歩かされていた!「どうしてこんな事を僕がしなきゃいけないんだ」「負荷トレーニング也!そしてママ=サンから今夜のおかずの買い物をたのまれておるぞ。これはアジのタタキだな。グググ……善哉」(ママにすりよってお使いで点数稼ぎまで!)
2019-04-01 13:42:06彼らはスポーツショップの前を通る。店頭に陳列されたハイテックスニーカーにタキシの視線は吸い寄せられた。あれはマイキ社の新製品「ドミネイター速度2」。履くだけでキビキビと動けるようになり、足の速さも向上する話題アイテムの最高級ラインだ。子供ヒエラルキーにおいて足の速さは絶対!
2019-04-01 13:48:07