全員死ぬやつ

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2日目の夜。入間銃兎が死んだ。遺体があったのは元山田一朗の部屋、碧棺左馬刻の遺体のすぐ隣だった。入間銃兎の遺体は今までの遺体とほぼ同じだったのだが、右手にペンを握っており、左手には山田一朗の所有物であったライトノベルが握られていた。

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山田一朗のライトノベルのページにはただ一言、「いくな」と書かれていた。 「銃兎は左馬刻と仲が良かった。置いていかれたくなかったのだろう。」「いち兄……二郎……」 夢野幻太郎はしばらく俯いていたが、急に叫び声をあげたかと思うと二階の窓から飛び降りた。

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高さはそれ程高くなかったが、当たり所が悪かったのだろう。夢野幻太郎の四肢は生きている限りはありえない方向に曲がり、周りには鮮血が広がり始めていた。毒島メイソン理鶯は無駄だとわかってはいたが、階段を駆け下り手当をしようとした。山田三郎は、笑っていた。

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「毒島さん」 まだ若い声が語りかける。 「少年、救急車を呼んでくれるか」 まだ幼さの残る痩躯の影が揺れる 「毒島さん」 「無駄なんですよ。」

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普段の毒島メイソン理鶯ならば、避け切っただろう。しかし、彼は迷った。唯一生き残った哀れな少年に、拳を振り上げることを躊躇った。毒島メイソン理鶯の視界は半分塞がれ、残された右目からは左目に突き刺さる包丁の柄が見えていた。

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「この包丁、兄に買ってもらったんです。中学生になったから、セラミック包丁は卒業だなって。嬉しかったんですよ。よく切れるでしょう、毒島さん。料理が好きなんですよね。僕はお腹がすきました。何か作って下さいよ。」 返事はどこからも帰ってこなかった。一人ぼっちの少年はその場に座り込んだ。

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山田三郎は数時間、数十分、彼の体内時計はもうとっくに狂っていて、空腹も感じなかったためもしかしたら数日だったかもしれない長い間大人しく涙を流していた。彼の自宅は山田二郎の遺体が見つかったことで、警察の捜査区域となっており、入間銃兎が人払いしたため、誰にも見つかることはなかった。

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ようやく泣き止んで、僅かな正気を取り戻した山田三郎は家の電話のダイヤルを110で押し込んだ。死んで償おうとは思わなかった訳ではなかった。しかし、兄に会いたかった。罪を背負って死んでしまえば兄達には二度と会えなくなる。ぐちゃぐちゃになった感情の中で彼なりに思考し、出した答えだった。

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「ここが今日から貴方の家よ」 山田三郎はその年齢と心神喪失を認められたことから、罪に問われることは無かった。テリトリーバトルに関わっていたこと及び関係者が次々と死んだ連続変死事件の現場に居たことなどは全て隠され、記憶喪失の養子として新しい人生を歩み始めたのだ。

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「ありがとうございます」「そんな他人行儀にならなくてもいいのに…」「でも、あの……」「今日はお姉ちゃんと散歩に行ってきなさいね。あなたが通う予定の高校まで案内してくれるらしいわよ。」「それにしても貴方頭がいいのね。神童なんて言われちゃうんじゃないかしら？」

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淑やかな継母とは対照的に、姉は快活なタイプだった。大きな口を開けて笑い、叱るべき時はきちんと叱ってくれる。そんな姿に、山田三郎はいつしか失った兄の姿を見るようになり、同時に強く惹かれて行った。

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「姉の私より良いガッコ行くなんて、ほんと出来た弟よね！」「ありがとう、あの、姉さんって呼んでもいい？」「嫌だ」「えっ……？」「……下の名前で呼んで。」

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2人が男女の仲になるのにそう時間はかからなかった。親が居ない、人の目がない、そんなタイミングもいくらでもあった。山田三郎自身も実際にそうなることをその瞬間までは確かに望んでいた。

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初めて山田三郎が性交渉に及んだ時に抱いた強烈な違和感、それはことが進むにつれてパズルのピースが自然にはまって行くように繋がり始める。兄の遺体、死んで行ったタイミング、入間銃兎の残した「いくな」というメモ。しかし、それに気付いて回避するには初めての彼には時間があまりに無かった。

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突然思考が全て停止するような快楽、もう逆らう事は出来なかった。自分も2人の兄と同じように死ぬのだ。1人で死んだ2番目の兄は可愛そうだったかもしれない。1番目の兄は碧棺左馬刻の目の前で死んだ。その意味に少し腹が立つけれどどうせあの男だって死人なのだ。もういい。山田三郎は、笑っていた。

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これは僕がずっとあっためていた「射精したら精液が止まらなくなって死ぬ違法マイク」です。

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山田一郎の字間違えてごめんなさい。今気付きました。深くお詫び申し上げます。