甘く解ける憂鬱 n.k

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yui @kn_km_ym

「甘く溶ける憂鬱」n.k

2018-12-17 17:45:45
yui @kn_km_ym

恋なんてしなくたって、満たされている。でも世間体でなんとなく今まで彼氏なんていません、だなんて言えない。世間体、というかただの小さいプライド。周りの友達は女子高、女子大なのに素敵な人と出会い恋をしている。羨ましいとは思う。けれど、誰かと付き合うだなんてそんな大それたこと。わたし

2018-12-17 17:45:46
yui @kn_km_ym

にできるとは思えない。大学では実習や資格の勉強に忙しくサークルにも入っていない。その上親に甘えアルバイトは近所の女の子の家庭教師を週一程度。男性と関わる機会がない。満たされていないと思うことはないけれど、「そんなんじゃ一生独身だよ!」と心配する友人。「とりあえず成人したことだから

2018-12-17 17:45:46
yui @kn_km_ym

、お酒飲みに行こう」とおしゃれな居酒屋に連れられる。友人はサークルの飲み会で何度も飲みの席に行ったことはあるらしいが、初めてのわたしにとっては異世界。「女の子2人だと声掛けられやすいから」ね?とウインクされるけど、それはあなたがかわいいからです。と言いたくなる。メニューを見ても

2018-12-17 17:45:47
yui @kn_km_ym

分からないから、とりあえず友人のおすすめのお酒を頼む。少し飲んだら帰ろう。そう自分に言い聞かせる。ーーー2時間後。お酒に慣れていると思っていた友人が酔っ払った。「もうやめておこう?」お店はそんなに混んではいないけれど、退散しようと説得するが、まだ大丈夫と聞かない。初めてわたしは

2018-12-17 17:45:47
yui @kn_km_ym

怖くて少しずつにしていたから、友人ほどではない。「〇〇はかわいいんだから、もっと自分に自信持ちなって」酔いながらもわたしの心配をしてくれている。嬉しいけど、今はどうやってこの場を去ろうかを考える。「わ!」声に驚き隣を見ると友人が手に持っていたはずのグラスが倒れている。一つ席を

2018-12-17 17:45:48
yui @kn_km_ym

空けて隣の人にかかってしまった。「すみません!」と席を立ちとりあえずおしぼりでカウンターを拭く。二人組の男の人だ。「大丈夫ですよ」とにこやかに許してくれた。よかった、こういうところで怒られたりしたら絶対凹む。ちょっと気持ち悪くなってきた、と言う友人が御手洗に行った。大丈夫かなあ。

2018-12-17 17:45:48
yui @kn_km_ym

優しい店員さんが拭いてくれ、綺麗になったカウンターを見つめる。「お友達大丈夫?」さっきの一人が聞いてくれる。「あ、はい。なんとか、、」失礼なことをしたのに心配してくれる。かっこいい大人だなあ。「川島、ごめん。俺帰らないと」男性のもう一人が席を立つ。スマホを手に謝っている。急用が

2018-12-17 17:45:48
yui @kn_km_ym

できたみたいだ。「分かった、じゃあまた」図らずも川島さんという方と2人になってしまった。「学生だよね?」はい。と答える。少し沈黙。何か聞いた方がいいかな。こういう人と話すことないからすごくすごく緊張する。「か、川島さんは?」どもってしまった。「僕は社会人です。あ、でも去年まで学生

2018-12-17 17:45:49
yui @kn_km_ym

だったよ」随分大人に見える。そういうものだろうか。「ごめん、〇〇。わたし今日ダメみたい。帰るね」お会計はしたから!と御手洗から帰ってきたかと思えば、颯爽と帰ってしまった友人。慌ててわたしも席を立つ。「ちょ、ちょっと待って!」慌てすぎて何もない所で転ぶ。い、痛い・・・「大丈夫?」

2018-12-17 17:45:49
yui @kn_km_ym

川島さんが手を貸してくれる。恥ずかしい。すみません、と言いながらその手を取る。その瞬間、ふわりと香るいい匂い。思わずぼーっとしてしまう。「大丈夫?そんなに痛かった?」心配そうな顔。「香水ですか?」それともシャンプーかな、と呟く。数秒後、はっと我に返り謝る。「すみません!変なこと

2018-12-17 17:45:49
yui @kn_km_ym

言って。今のは忘れて下さい」赤面する。うわあ、絶対変な人だって思われた。顔に手を当て不安げに川島さんを見ると、「面白いね」と堪えきれず声を出して笑っている。穴があったら入りたい。落ちたカバンを渡される。「はい、どうぞ」ありがとうございます、と受け取ろうとすれば引っ込まれる手。

2018-12-17 17:45:49
yui @kn_km_ym

あれ?「ねえ、お互い友達帰っちゃったし、もう少し話しませんか?お兄さんが奢るよ?」固まってしまう。さあさあと、さっきまで座っていたところに座り直される。何が何だか分からない。「何飲む?」と聞く横顔に見入ってしまう。スカートをぎゅっと握る。これはもしや人生最大のピンチかも、と

2018-12-17 17:45:50
yui @kn_km_ym

手に汗握るわたしは、川島さんの気持ちもこの後の展開も知るはずはない。

2018-12-17 17:45:50
yui @kn_km_ym

「こ、こんにちは」「こんにちは、緊張してる?」「そりゃしますよ!」あれから川島さんと初めて会った日に連絡先を交換した。一週間してから「デートしようよ」とメッセージが来て驚いた。デート?デートって何するの?不安になりながらも「わたしなんかで良ければ」と送った。家の前まで迎えに行く、

2019-02-25 01:19:17
yui @kn_km_ym

と言われ「いや、そんな大丈夫です」と断ったが車で行くから、と強引に迎えに来てもらうことになった。白シャツに濃いグレーのジャケット。スマートな姿に大人っぽさを感じる。こんなの緊張するなって言う方がおかしい。「〇〇ちゃんは何も心配しなくていいから、ね?」車が走り出す。川島さんはなぜ

2019-02-25 01:19:18
yui @kn_km_ym

わたしなんかを誘ってくれたんだろうか。「川島さんって、」次の言葉が出てこない。なんて聞いたらいいのだろう。「ん?なに?」メガネをかけて運転をする横顔に見入ってしまう。「いいよ。遠慮しないでなんでも聞いて?」あの夜から、メッセージのやりとりでもずっと優しい。「あの、なんでわたし

2019-02-25 01:19:18
yui @kn_km_ym

なんかを誘ってくれたんですか?」赤信号で車が止まる。ウインカーの音が響く。「〇〇ちゃんはなんで自分のこと、そんなに卑下するの?恋をしたことがないから?」ゆっくりと頷く。唾を飲み込み、自分の口が渇いていることに気がつく。ずっと緊張している。「もったいないよ、せっかくかわいいのに」

2019-02-25 01:19:19
yui @kn_km_ym

頭がクラクラする。でも目を見れば分かる。この人、嘘では言っていない。「本当は今日の最後に言おうと思っていたけど、〇〇ちゃん手強そうだから最初に言っておくね」車がどこかのお店の駐車場に止まった。シートベルトを外した川島さんがこちらを向く。「〇〇ちゃんと付き合いたいな、と思ってる。

2019-02-25 01:27:20