エッジ・オブ・ネザーキョウ #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オマタセシマシタ」店員がネギ・ビールのオカワリと、マスラダが頼んだ追加スシの桶をテーブルに置いた。階には既に談笑が戻ってきていた。「ギンカクは何処だ、フィルギア=サン」あらためてマスラダが問い正した。「……3日もらいたい」フィルギアが言った。「いや、一週間。確証が欲しい」 23

2019-07-11 23:28:29
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「事態は差し迫っているのでは?」コトブキは怪訝そうにした。フィルギアは頷いた。「ネザーキョウのこの辺は呑気なものだが、国の中に入っていけば、話は別。俺もそこそこヤバイ橋をわたる。キミらの答えを知るまでは運試しはしたくなかった」「その間、どうすれば?」「宿を取っておくよ」 24

2019-07-11 23:38:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……どうしますか」コトブキはマスラダを見た。マスラダはスシ桶の蓋を閉めた。「どちらにせよ、足を直す必要がある」然り。シグルーンだ。騙し騙し乗ってきたが、限界である。「ガレージはあるでしょうか?」「インターネットは無いが、鍛冶屋や修理工はあちこちあるよ」フィルギアは請け合った。25

2019-07-11 23:43:05
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「……お前が戻ってこなかったら、どうする」マスラダは言った。フィルギアは数秒、沈思黙考した。彼は懐からオリガミを取り出し、アドレスらしきものを走り書きして、フクロウを折った。「IRCで、ここにアクセスして」「インターネットは?」「そん時ゃ、どうにかして確保してくれ。ヒヒヒ……」 26

2019-07-11 23:48:47
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テン、テン、テテテン、テンテン。窓の外から、三味線の音がかすかに聞こえてくる。フィルギアは窓の外を見、二人を促した。「見てご覧よ。綺麗なもんだ」「まあ……!」コトブキは感嘆の声をあげた。川の水面をランタンが流れてゆく光景だった。さらに、ドオン、パリパリパリ……。夜空に破裂音。27

2019-07-11 23:52:26
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花火だった。この前線都市において、それは如何にも挑発的な行いではあった。ドオン、ドオン、ドオン。桃色、赤、緑。入り交じる「偉大なるタイクーン」「カラテが粉砕する」といった飾り文字プロパガンダは奥ゆかしさを損なうものだったが、それでも美しかった。 28

2019-07-11 23:54:12
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「UCAに鉄拳制裁」「オオカゲの炎」「対岸見ているぞ」。「イヒヒ……ハハハハ」フィルギアはひとしきり笑うと、二人に向き直り、予約札を差し出した。「よし。行ってくる。宿はここ」「あまり待たんぞ」と、マスラダ。フィルギアは微笑み、窓から飛んだ。フクロウが羽ばたき、飛び去った。 29

2019-07-12 00:00:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドオン。ドオン。パリパリパリ。宿の外では、道の向かい、釣具店の木桶の横に座り込んで、薄汚い子供が空の花火を睨んでいた。子供は「アベ一休」のTシャツを着ていた。「店の前で邪魔だぞ、ガキめ!」店主が咎めると、強く睨んで、立ち上がった。 30

2019-07-12 00:04:36