提督、平和ってなんですか?

わからないんです。
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同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「地元に帰るとみんなが聞いてくるんです。"これからどうするんだい?"って。もう戦争は終わった。艦娘は必要なくなったんです」 彼女の告白は、聞いていて痛々しかった。 提督の様に、平和のうちに子供時代を過ごした世代には別の人生もある。だが艦娘には、戦争しかない。それが人生の全てだった。

2019-05-02 21:46:36
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「私は艦娘です。そうなりたいと思って育ちました。それ以外のことは何もしていない。深海棲艦と戦って、どこか遠く離れた海の底に沈むのだと思っていました。そこから先なんて、考えたこともありませんでした。終わるなんて思っていなかった。私も、皆も、戦争はいつまでも続くと思っていました」

2019-05-02 21:47:57
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「でも、終わってしまいました」

2019-05-02 21:48:21
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

彼女は手を軽く握って、何かを掴み上げるようにあげて、開いた。何かを放り捨てるように。 「艦娘は、お払い箱になりました」 「確かに軍縮は避け得ないが、必要とされる艦娘も……」 「いえ、提督」 私の欺瞞を、彼女は最後まで聞かなかった。 「艦娘はもういらないと思われているんです」

2019-05-02 21:50:15
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「みんな、戦争にうんざりしていました。平和を…豊かな世界を戦争に消費されることに、うんざりしているんです」 彼女は肩をすくめた。 「どうして文句が言えるでしょう?戦争は終わって、消費の目的は無くなりました」

2019-05-02 21:54:13
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「家族は…なんと?」 「私が生きて帰ってきたことを喜んでいます。妹達が戦争に行くことがなくなって、嬉しく思っている。そして…憂鬱そうな私に戸惑っています。私は一瞬で、世界から取り残されてしまいました」 彼女は暗い表情で頭をふった。

2019-05-02 21:55:21
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「私は戦争が嫌いです。憎んでいると言ってもいい。誰か知らない人が死ぬのも我慢ならないし、友人達が沈んでいくのはいつだって耐え難い。でも、私はそれしか知らないんです」

2019-05-02 21:55:45
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「提督、平和ってなんですか?私は何も知らない。わからないんです、どうすればいいのか。私という存在は、もう求められていないんです」

2019-05-02 21:56:07