デス・フロム・アバブ・UCA #1
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「そうか。素晴らしいぞ」「私はリアルニンジャですから」「そうか。飲め」「……」マイトイカラスはゴブレットを口元に持っていく。だが、傾けることができない。マイトイカラスは訝しんだ。「どうした？飲まんのか」と、メタルファルコ。「俺のサケが飲めんのか？」「いいえ。……？」「妙だな」 24
2019-08-11 23:16:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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もう一度マイトイカラスは試みる。盃を傾けることができない。メタルファルコは最小限の動きで彼の肘に手を添え、その動作を妨げていた。さりげなく、だが、断固として。「俺の、サケが、飲めんのか？」「バカバカしい真似を」「何がだ？」「子供じみた……」「カラテひとつだ、マイトイカラス君」 25
2019-08-11 23:18:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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マイトイカラスは三度試みようとした。メタルファルコは許さなかった。「このッ！」マイトイカラスは振り払おうとした。メタルファルコはその手を捉え、逆の腕に重ね、盃を奪い取った。そして頭突きを食らわせた。「イヤーッ！」「グワーッ！」よろめく！「イヤーッ！」「グワーッ！」腹に蹴り！ 26
2019-08-11 23:20:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
KRAAASH！椅子を倒し、マイトイカラスは倒れ込んだ。「ゴボボーッ！」「オイオイ……アブナイぞ、サケが溢れちまうだろう。せっかくの俺の盃をブチ撒ける気か。感心せんな」メタルファルコはゴブレットを机に置いて、マイトイカラスの後頭部を踏みつけ、吐瀉物ににじらせた。「嫉妬が、何だって？」 27
2019-08-11 23:22:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「こ、こんな事をして……」「タイクーンが黙っていないと？」メタルファルコは踏みつけの力を強める。「陛下はションベンちびりながらチクりを入れるような惰弱なニンジャに良い顔はせんだろうよ」「クソーッ！」マイトイカラスはメタルファルコの足をはね上げ、転がって起き上がりカラテを構えた。28
2019-08-11 23:26:10
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「盛り上がってきたな。来い」メタルファルコは手招きした。「イヤーッ！」マイトイカラスが殴りかかる！「イヤーッ！」「グワーッ！」マイトイカラスの顔面にハイキックがヒットした！「イヤーッ！」「グワーッ！」追い打ちのケリ！マイトイカラスは受け身を取り、再び向かっていく！「イヤーッ！」29
2019-08-11 23:28:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「イヤーッ！」「グワーッ！」掌打がマイトイカラスの顔面を捉える！「イヤーッ！」「グワーッ！」腹にショートフック！くの字に身を屈めたところ、首を抱え、締め上げる！「いいか、貴様は足手まといの青瓢箪のガキだ。二度と俺にナメたクチを訊くな」「グワーッ！」「ワカッタカ！」「グワーッ！」30
2019-08-11 23:29:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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締められながら、マイトイカラスは果敢にメタルファルコの肋を殴りつけた。メタルファルコは血走った目を笑顔に細めた。「イヤーッ！」「グワーッ！」締めたまま、膝を曲げて足を跳ね上げ、足裏でマイトイカラスの顔面を打擲！「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」 31
2019-08-11 23:32:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「もう一度言ってみろ！『ボクはリアルニンジャだぞ！』そうやって訴えてみろ！『タイクーンに言いつけるぞ』でも構わん！」「クソ……クソーッ！」マイトイカラスは食いしばった歯から出血し、瞬間的な力を爆発させ、強引にメタルファルコを投げた！「イヤーッ！」「イヤーッ！」 32
2019-08-11 23:35:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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メタルファルコは投げ飛ばされながらマイトイカラスの襟首を掴み直し、逆に床に叩きつけていた！KRAAASH！「グワーッ！」大の字になり、マイトイカラスは一瞬昏倒した。すぐに覚醒した。メタルファルコは手を差し出した。「立て」手は払い除けられた。メタルファルコは逆の手を差し出した。 33
2019-08-11 23:36:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「……！」マイトイカラスは震える手でメタルファルコの手を取った。「遊びは終わりだ」メタルファルコは机に歩き、ゴブレットを取った。「いい運動になったろ。飲め」「……」マイトイカラスは血を拭い、盃を受け取り、飲んだ。メタルファルコは頷いた。「今日からよろしく頼むぜ、お前」 34
2019-08-11 23:39:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
『座標なあ』タキは顔をしかめた。『そこまで行って何もなかったらどうすンだよ』「ある」マスラダは即答した。UNIXデッキにはコトブキがLAN直結し、IRCセッションを開設している。タタミ３枚敷きの時間貸しの小ルーム。UNIXデッキを使用したり、映像コンテンツが鑑賞可能だ。 36
2019-08-11 23:47:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ネザーキョウではインターネットが禁止だったので、コトブキはまだどこか落ち着かない気持ちだった。『お前が言ってる事はな、要は、イカレ国にもう一回帰るッて話なんだぜ』「そういう事だ。ヤマザキに戻れば面倒が起こる。このまま迂回するルートを確認したい」『……山越えはやめとけ。南下だ』 37
2019-08-11 23:51:30
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「遠ざかりますよ」コトブキが指摘したが、タキは地図にマーカーをつけていった。『あのな、まず目指すのはバンクーバーだ。本当はそのままポータル使って帰りゃいいのによ……』「バンクーバーのポータルは壊されたと言います」『まあ今はその話はいい。オレが提案するのはシンカンセンの旅だ」 38
2019-08-11 23:55:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「シンカンセン？」『バンクーバーから、ヨロシサンのシンカンセン……ヨロシンカンセンが出てンだ。大陸を横断するブッ飛んだレールウェイだぜ。それを使えばあっという間。一番近い停車ポイントで降りて、あとは多少北上すりゃ、それでライディングマウンテンに到着ッて寸法』「スゴイ！簡単です」39
2019-08-11 23:59:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
『ま、チケット取って行くのか、何か別の方法考えンのか、そのへんはお前らが勝手にやれ』「ウーン」コトブキはやや考えたが、その詳細はいったん脇においた。「バンクーバーはどんな状態なのでしょうか？」『状態ッて？』「さっきのポータルの話です。タイクーンが街を破壊したと聞いてます」 40
2019-08-12 00:06:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
『ああ。まあそういう話はある』「やっぱり本当だったんですか」『ブッ飛びだよな』タキが短時間映像を貼り付けていった。空を飛翔する邪悪な黒い龍、その背にまたがる四本腕の姿。異様であった。映像の左上には「超自然恐怖：閲覧自己責任」の文字が点滅している。 41
2019-08-12 00:09:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
龍は恐るべきブレスを吹き付け、近代兵器を洗い流すかのように滅ぼした。そして重要拠点をピンポイントで破壊し、悠然と飛び去っていく。『……ポータルがやられたのは、この時だろうな』「凄まじいものがあります」「関係ない。用があるのはギンカクだ」『あのな、こいつの国に戻るんだぞ』 42
2019-08-12 00:13:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「フィルギア＝サンは」コトブキはマスラダを見た。「大丈夫なのでしょうか。あれから連絡が取れませんが」「……そうだな」マスラダは低く言った。『一体全体どんな奴なんだ？そのフィルギアってのは』「奇妙なひとでした。でも親切でした。色々と助けてくれて……気がかりです」 43
2019-08-12 00:16:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
『人の心配してる場合じゃねえのは確かだぜ』タキはむっつりと言った。『善は急げでよ、とっととバンクーバーに行って、バーッとヨロシンカンセンの乗車手段をゲットして、ガーッと行って、ギンカクだか何だかをサクッといただいて、そんで適当に逃げろや』「そのつもりだ」『おう』 44
2019-08-12 00:19:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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マスラダの横で、コトブキは依然、晴れない顔だった。「他に何かあるか」「いえ……バンクーバーの被害について、考えていたのです」『被害？』「タイクーンが襲来して、重要拠点を破壊して、去っていったと……何のためでしょうか」『ア？調子コイたクソ野郎だろ。お望み通り、クソ動画が沢山だ』 45
2019-08-12 00:22:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「単なる示威行動で……？」『クソ野郎だからな。イカレてるんだろ』「ポータルが潰れれば、他所から入ってこられる奴は居なくななる」マスラダが言った。コトブキは思い当たった。「暗黒メガコーポの増援手段が断たれたのではないでしょうか。兵站の問題が発生して……」『イカレてるだけだ』 46
2019-08-12 00:25:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「確かにな」マスラダが頷いた。『だろ？タイクーンだか何だか知らねェ、要はイカレ野郎の目立ちたがり……』マスラダはコトブキを見た。「じきにバンクーバーで面倒が起こる。多分な」「……急いだほうが良いのだと思います」 47
2019-08-12 00:28:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
IRCセッションを終え、二人は個室カフェを退出した。エレベーターから雑居ビルを出ると、プリンスジョージの灰色の街並みが広がっている。「安い。安い。実際安い」「UCAは貴方の協力を求めています」……多少エマージェント感のある広告音声の渦が出迎える。川一つ挟んで、まるで違う光景だ。 48
2019-08-12 00:31:57