デス・フロム・アバブ・UCA #9

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「現在、不測の攻撃を受けていますが、発車時間を繰り上げるので車内の皆さんはご安心ください。間に合わない方は払い戻し規定を参照してください。キャンセル費が戻ってくるケースについては事前にしっかりと確認し……」「ウワーッ!」ザックは改札ゲートに殴りつけられながら前へ転がる! 20

2019-09-14 23:00:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スッゾコラー!」クローンレンジャーが警棒を振り上げてコトブキに襲いかかった。「チョットスミマセン、イヤーッ!」「グワーッ!」サガサマがショルダータックルでクローンレンジャーを打ち倒し、コトブキとともに改札を越えた。「行きましょう!」「ハイ!」 21

2019-09-14 23:02:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピョルルルルルル!電子ファンファーレが鳴り響いた。車両ガラスケース内でスモトリがシコを踏むと、パイロが噴き上がった。流線型のノーズを誇るクローム・アンド・ヨロシグリーン・ペイントのヨロシンカンセンが、ゆっくりと、無慈悲に走り始める横を、三人は絶望的にダッシュした。 22

2019-09-14 23:06:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その列車……その列車待った!」走りながら、サガサマが必死に呼びかけた。その時だ!KA-BOOOM!DOOOOM!DOOOM!立て続けの爆撃が再び襲った!「アバーッ!」ガラスケースごと、最後尾車両のスモトリが死亡!その破砕箇所をサガサマは指差す。咄嗟に彼はザックを抱き上げた!「行きますよ!」  23

2019-09-14 23:09:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOM!DOOOM!爆撃の中でヨロシンカンセンの加速に支障が生まれるなか、彼らは無残な最後尾車両に……「イヤーッ!」「ハイヤーッ!」……飛び移った!「や……やった!やったんだろ!」ザックが興奮した。「恐らくは……」サガサマが眼鏡を直し、上空を振り返った。 24

2019-09-14 23:12:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」後ずさる彼らの眼前、上空から滑空してきた二人のカイトニンジャがピンポイント着地した。「シューッ……」彼らはメンポから無慈悲な息を吐き、カタナを抜いた。残忍な目が光る。このまま乗客を殺しながら先頭車両まで走り抜ける算段なのだ!ナムサン! 25

2019-09-14 23:15:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サガサマとコトブキは緊迫した視線をかわし、身構えた。カイトニンジャ達は目を細め、メンポの中で舌なめずりした。「オイオイ……」「ヤッチャウヨ?」カイトニンジャ達はカタナを……「Wasshoi!」その時である!カイトニンジャ達の背中に、キリモミ回転する質量が衝突した!「「アバーッ!」」 26

2019-09-14 23:18:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

赤黒い火花と血飛沫を撒き散らしながらニンジャスレイヤーは連続前転し、無残なありさまの最後尾車両にエントリーした。アケチ紋を発光させ、カイトメジャーゲニンが爆発四散する中でゆっくりと立ち上がった赤黒の姿に、ザックは腰を抜かした。「……遅くなった」ニンジャスレイヤーは言った。 27

2019-09-14 23:23:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大丈夫だと思ってましたよ」コトブキが確信的に微笑んだ。「こちらはサガサマ=サンです。色々とお世話になりまして……」「ドーモ」サガサマはオジギし、名刺を差し出した。張り裂けた最後尾車両にはコンテナ類が雑然と積まれている。客室車両であれば被害は一層無残であっただろう。 28

2019-09-14 23:29:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らがアイサツする間に、コトブキはコンテナの陰でスーツケースを開き、客室乗務員の服装に着替えて現れた。「アイスクリームは、いかがですか?」コトブキはにこやかに首を傾げた。そして請け合った。「わたしが案内めいて先導すれば、誰も疑わないと思います」 29

2019-09-14 23:34:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……バイクを失った」ニンジャスレイヤーは車両後尾の破砕の外、レールラインを振り返った。「シグルーン=サンは……」コトブキは悲しげに俯いて、しばし考えを巡らせた。「……賢いバイクです。きっと、なにか方法があるはず」 30

2019-09-14 23:39:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの表情が動いた。彼の訝しい視線はレールラインのさらに向こう、荒れ地の地平線に向いていた。彼は足早に車両後尾の裂け目の縁まで歩いた。「どうしました?」「……」ニンジャスレイヤーは右腕を振った。フックロープが床を打った。彼は巻き取るように動かし、振り始めた。31

2019-09-14 23:47:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何?どうしたの?」ザックが駆け寄ろうとするが、コトブキがそれを止めた。「フックに当たると危ないです。……あの、ニンジャスレイヤー=サン、まさか……」彼女はこめかみに触れた。彼女は反応を感じた。「まさか」ヒュンヒュンヒュン。ニンジャスレイヤーはフックを振り回す速度を上げる。 32

2019-09-14 23:49:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨロシンカンセンはカーブを曲がりながら、少しずつ速度を上げていく。KA-BOOOM……DOOOM……!付近にカイトニンジャの爆撃がいまだ落ちる中、ニンジャスレイヤーは近づきつつある影に焦点を合わせていた。トップスピードで走りくる無人のモーターサイクルに。 33

2019-09-14 23:51:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨロシンカンセンはスピードを上げてゆく。走り迫るモーターサイクルは……シグルーンは、徐々に引き離されてゆくだろう。だがそれを待たず、ニンジャスレイヤーはフックロープを力強く投擲した。「イヤーッ!」燃える鈎がフロントカバーを噛み、ピンと張った。 34

2019-09-14 23:55:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウーッ……!」ニンジャスレイヤーがニンジャ膂力を発揮すると、「理解可能」シグルーンは電子音声を発し、やがて殺人マグロ一本釣りめいて跳ねた。コオオオオ……!モーター音が鳴り響き、バイクが近づいてくる。コトブキは感動あらわに、ザックとサガサマは驚愕と共に、そのさまを見つめた。 35

2019-09-14 23:58:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KABOOOM!KABOOOOM!レールラインを襲う爆撃も、いまや頻度は減り、執拗に追随するカイトはもはやない。ニンジャスレイヤーは最後の力を込めた。「イヤーッ!」ドルルルン!シグルーンが跳び、車両内に飛び込んできた!KRAAASH!コンテナが破砕し、積み荷の箱入りナナイモバーが散乱した。 36

2019-09-15 00:02:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「や……ヤッター!やりました!」コトブキが歓声をあげて駆け寄り、シグルーンを抱え起こすと、ナナイモバーの箱をコンテナに戻す作業に没頭し始めた。「……ヌウーッ……!」ニンジャスレイヤーは呻き声をあげ、その場にアグラで座り込んだ。そのまましばし、彼は西の空を凝視していた。 37

2019-09-15 00:06:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『オイ、合流できたかよ?どうだ?全てうまくいったか?』「大丈夫です!」『そうか!全てオレの計画通りだ。オレに感謝して、あとはうまくやるんだぞ!このままヨロシンカンセンで東へ弾丸ルートだ!』IRC端末から聞こえるタキの喚き声を聞きながら、ニンジャスレイヤーは呼吸を深めていった。 38

2019-09-15 00:11:21