ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン#7

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの気配を感じ取ると、巨大な獣はゆっくりと頭を動かした。Wi-Fi角が動き、パラパラと土や石の欠片が下に落ちた。今回エントラスホールに降りたのはニンジャスレイヤー1人だった。ドリームキャッチャーを見上げて、ファストストリームは静かに佇んでいた。 21

2020-01-16 23:34:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((友よ)))ドリームキャッチャーは腕を動かし、アルビノの少年に人差し指をのばした。(((そなたとの邂逅によって、私の歪んだ生命は目的を得、意味を得た。私はそう考えている。私は感謝しかない)))「……」ファストストリームは両手でドリームキャッチャーの指先に触れ、俯いた。 22

2020-01-16 23:37:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((いずれこの時が来ると、私にはわかっていたように思う。それがいつなのかはわからずに来たが、そのとき何を為すべきかはわかっていたのだ。だから今回、私の思う通りにする事を許してほしい)))「……」 23

2020-01-16 23:43:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((A-1よ。そなたがこの不毛の地にリコナーという種を撒いた。もはや我らの、彼らの意志を、アケチ・ニンジャの暴力が絶やす事は決してできぬ。彼らはいずれ、このネザーキョウの地にデータストリームの花を咲かせるだろう。花々はやがて大樹となろう。そなたと私とで、その運命を作り上げたのだ))) 24

2020-01-16 23:47:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドリームキャッチャー=サン。私は……」(((これ以上我らが話すべき事はない。上に上がり、最善を尽くせ。私はデータの海の中で永遠だ。だが、そなたがリコナー達と共に息絶えれば、それこそ私にとっての真の死が訪れる。わかるだろう。一時の感傷で、われらの辿り着いた悟りをふいにするな))) 25

2020-01-16 23:51:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ファストストリームはドリームキャッチャーの指に額をつけ、しばし無言。そして顔を離した。「……わかっている。勿論だ」彼は後ろへ下がり、オジギした。「ありがとう。オタッシャデ」彼はドリームキャッチャーに背を向けた。そのまま杖をつき、歩き進み、佇むマスラダとすれ違った。 26

2020-01-16 23:55:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダはドリームキャッチャーの眼前まで歩いた。ドリームキャッチャーが手振りで示すと、彼はその場に腰をおろし、アグラ姿勢を取った。目を閉じたマスラダのニューロンに、ノイズがさざなみを打つ。僅かな電子瞬、里の知性カラテビーストの視界を通した今このときの光景の断片が飛び込んだ。 27

2020-01-16 23:59:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リコナー達は米俵を荷車に積み、最後の旅支度を終えようとしていた。逃走ばかりではない。電磁槍やボウガン、電子戦争時代のスナイパーライフル等の機構を確かめる者たち。櫓で遠視スコープ警戒する者たち。忙しく行き来するカラテビーストたち。 28

2020-01-17 00:02:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

催事場の大テーブルでは再び谷の地図を囲み、コトブキやアーロン、何体かのカラテビーストがやり取りしている。あるいは応急処置のあとも痛々しいサブジュゲイター。彼はショーギ駒を動かし、説明しながら、ナインが差し出したバイオフィルムを受け取る。昆布チップじみた高密度バイオインゴットだ。29

2020-01-17 00:05:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

微かな逡巡の後、ナインはフィルムを収めたクロームのケースを示す。フィルムの残りはあと2枚足らずだ。サブジュゲイターはケースを受け取り、無造作に懐にしまうと、会議を継続する。もうじき、ファストストリームを迎えに行ったザックが、彼を伴って戻ってくるだろう……。 30

2020-01-17 00:09:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ボッ。ザックとファストストリームを乗せて岸に戻る船の映像のあと、マスラダのニューロンは外部と切り離され、ただドリームキャッチャーと相対して、12枚のタタミの空間で向かい合っていた。ここでは獣はマスラダとそう変わらぬ背丈だった。頭上には黄金の立方体が輝き、冷たく自転していた。 31

2020-01-17 00:14:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これが私の感じる世界だ」ドリームキャッチャーは言った。「天には黄金の太陽」頭上を指差し、「地に、銀の炎」タタミの下を指す。すると彼の注意に応ずるように、3つの銀の輝きがひときわ強くおこった。マスラダにとって、その輝きは馴染みのあるものだった。銀の火は他にもあったが、不明瞭だ。32

2020-01-17 00:19:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ギンカクか」マスラダは3つの炎を意識した。ドリームキャッチャーは頷いた。「然り。私はデータストリームの大河に身を浸し、眺め、感じ、学ぼうとした。そしてキンカクとギンカクの名を知った。……ギンカクのうち、現世に露出した端末が、少なくとも3つ。ひとつが……とても近くに在る」 33

2020-01-17 00:23:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

銀の火のひとつに無機質な衛星地図データじみたグリッドが重なり合った。マニトバ州ライディングマウンテン。……疑ってはいなかったが、フィルギアが伝えた位置と実際一致する。「貴方が目指すものは、このギンカクだろう。方向性を有する貴方の意志を、私は観測していた」「……そうだ」 34

2020-01-17 00:27:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴方の目的は……」「……」「……私にとっては重要ではない。ギンカクは貴方に属している。逆もまた然りであろう。私はそれを感じるのだ。それで十分だ。貴方はギンカクに向かわねばならない。特にこの国に現れたギンカクに、出来るだけ早くだ」「何を知っている」「見せよう」  35

2020-01-17 00:32:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドリームキャッチャーが手をかざした。「今から数電子秒間の間、どうか貴方も注意してほしい。私も最大限の警戒を振り向け、彼らに悟られぬようにする」「……」 かざした手が、マスラダの眉間に触れた。01001010011…… 36

2020-01-17 00:34:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……010010010001……ドンコドンコドンドン。ドンコドンコドンドン。ドンコドンコドンドン。複数の篝火が闇を不規則に照らす中、幾重にも円をつくって座るボンズがチャントを唱え続けている。彼らの額にはオフダが貼られ、あまりにも禍々しい。「アバーッ!」最前列の1人が血を吐き、事切れる。 37

2020-01-17 00:36:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドンコドンコドンドン。ドンコドンコドンドン。太鼓が鳴らされ続ける。仲間の死にも動じる事なく、ボンズ達はチャントを継続する。「アバーッ!」2人。「アババーッ!」3人。ボンズ達の囲みの中央には……ナムサン……0100101……解像度が定まらない。強い、強い力だ。 38

2020-01-17 00:39:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」「おやおやおや!」すぐ近くのボンズが吐いた血が装束にかかりそうになったので、ニンジャは危うく避け、呆れ返った。「これはまあなんとも大変なことだ」「仕方あるまい」包帯姿のニンジャの指摘に、彼は笑みを浮かべる。「クキキキ!この者らは畢竟、非ニンジャである故にな!」 39

2020-01-17 00:42:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドンコドンコドンドン……ドンコドンコドンドン……「ンンー?背中が、こう、背中が……」不意にニンジャは大げさな仕草で背中に手を回し、悶えた。「背中が痒いなァ?」探るような視線があちこちに飛び、やがて01001001……ドリームキャッチャーは手を離した。「ここまでだ。限界だ」 40

2020-01-17 00:47:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴を知っている」マスラダは呟いた。ドリームキャッチャーは彼をじっと見た。「友好的な知人ではないな?」「当然違う」「この地のギンカクに、あの者は何事か為そうとしている。今の光景は過去視でも予言でもない。今まさに行われている行為なのだ」「奴の目的は何だ」 41

2020-01-17 00:51:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ギンカクへの干渉……」ドリームキャッチャーはマスラダに問う。「貴方はなにか知らぬか」「……」マスラダの記憶野を不快感が駆け巡った。キンカク・テンプルの輝くシトカ。己のすべてを引き出し、燃やし、サツガイと喰らい合うイクサの陰に、邪悪なアトモスフィアと、欲望の蠢き……! 42

2020-01-17 00:59:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その感覚は、かつてのフィルギアの警告、そしてたった今見せられた光景と、容易に結びついた。自然に、マスラダの口をついて、その名が出た。「ナラク」 43

2020-01-17 01:02:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フンアー!フンアー!フンアーッ!アーッ!」KRAAASH!KRAAASH!KRAAASH!丘に刺さった巨大奇石に、木こりめいて大鎚を横殴りに叩き込むレベリングを、ファーネイスは敢えて止めはしなかった。テツバのセンシがふたたび敵の手にかかったのだ。異常事態。レベリングの困惑も尤もだ。 45

2020-01-17 01:06:33