空想の街 とある冬の一日・期間外

こみや@空想の街 @Ne2_co

「昨日のさー……あれなんだけど」 手の中の椀に落とし込むように。 「いや別に怒っちゃいないよ？あの子らにちゃんと伝えてくれてたしさ…さすがにちと驚いたから、できたらやる前に言っといてほしかったなーって。そんだけ」 視線を上げれば、彼女が小さく頷いた。#空想の街 #籠ノハナ屋

こみや@空想の街 @Ne2_co

つ、と上げられた指先が、こちらを指す。 「え、おれ？」 彼女はおもむろに懐の帳面を取り出すと、そこに何事かを書き付けてこちらへ見せる。—―『なまえ』。 「おれの？名前？」 長い、長い、沈黙。 #空想の街 #籠ノハナ屋

こみや@空想の街 @Ne2_co

「……何、だったっけ」 #空想の街 #籠ノハナ屋

こみや@空想の街 @Ne2_co

「うーん？今じゃ籠屋で花屋だし、籠屋で花屋になってからもずいぶんだろ。えっちょっとまってその前は？その前っていつ？あれか？どっかのご城下にいたころ？もっと前？」 本格的に考え込んでいると、彼女が堪えきれないといったふうに笑う。そこに音はないけれど。#空想の街 #籠ノハナ屋

こみや@空想の街 @Ne2_co

「……ま、いっか。おれ、おまえといればうまくやっていけっしな。籠屋に花屋で別に困んないし」 忘れてしまうくらいなら、大したものではなかったのだろう。 「あんがとな、一緒にいてくれて」 店の中に揺蕩う花の香—―いつでもひどく懐かしく、慕わしい。 #空想の街 #籠ノハナ屋 〈了〉

ルイス・ビスケット記者 @hutahiron

#空想の街　#ナントナクオリティ　 【Matchsora -街空- 編集部】 シドウです😊 #BAR330 さん大変お待たせしました！💦　 ルイスくんとカン先輩の合作です💪 今度は私もお伺いさせてください〜💕 pic.twitter.com/CjA6h8nEeb

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ルイス・ビスケット記者 @hutahiron

#空想の街　#ナントナクオリティ 【Matchsora -街空- 編集部】 続きましてカンディです！発見🔎空想の街特集やっとできましたー！長かった！！ あとはお悩み相談の追加ですが、その節はすみません… pic.twitter.com/wMhyW77duk

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こみや@空想の街 @Ne2_co

「ちーどーりー、ちどりってばー」 「なーに」 「何っていうかさー……おこってる？」 「怒ってるよ」 ずいずいと中央へ向かう道すがら。言うほど怒っているようには聞こえないけれど、それは多分そのほこ先が自分ではないからで。ただ、必要以上に落ち着いている。#空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「……昨日のこと？」 「そう、昨日のこと」 めじろは籠屋さんが大丈夫だと言っていたので大丈夫だということにしておこう、というのが正直なところだ。けれど、どうやらそもそもあの場所へめじろを引っ張って行ったちどりは違うらしい。#空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「……やっぱりさ、ああいうときはちゃんと言っとくべきだって思うの。いくら相手が籠屋さんだからって、あんなに怖がらせたらかわいそうじゃない」 怒っている。昨日、どうやらちどりは自分より多くの何かを感じ取っていたらしいので、そのせいもあるだろう。#空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「ごめんね、付き合わせちゃって」 「んー……」 ちどりの声にやっと苦笑の色。めじろは少し考えてにこ、と笑う。 「まーね、大人だってちょっとは怒られないと、だよね！」 二つの影が地面を蹴る。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編 〈了〉

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ただただ、ぼんやりとしている。花の香りの中で聞いたあの話。あの明るい声。その残響を聞きながら、あゆ子はぼんやりと机に向かっている。結局何と言って帰ってきたのだっけ。また来ます、と。それに彼女は――もういつものように黙って微笑んだはずで。いや、その前に。 #空想の街 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

――いいんです。それなら。あなたが、皆さんが……幸せなら。 本当によかったのだろうか、と思う。もっと言うべきことが、もっと取るべき態度があったのでは、と。 「……駄目だなあ」 本当に、自分のことばかりで。#空想の街 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「—―何が駄目だって？」 いきなり降ってきた声に心臓が止まるかと思った。最近この手の状況が多い！ 「ヒキフネさん！」 「表開きっぱなしじゃないか。もう日も落ちてるッてのに」 黒い長羽織に中着は紫の裾濃。紅の花模様の襟巻はこのひとのお気に入りだ。 #空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

「で、何時化てんだい？」 「う……」 するり、と机の向かい側に座りこんだ相手の楽しそうな顔。言葉を選びつつ口を開く。 「抱えきれそうにない打ち明け話を聞いた時どうすればいいかわかります？」 ヒキフネさんは少し考えて口を開く。#空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

「……ものにもよるけどサ。まずは『どうにかしてほしい』話なのか『ただ聞いてほしい』話なのかだよねェ」 これいい？と机の上の容器を指して訊かれたので首肯する。金色の飴がひとつつままれていった。相手の髪の毛がすっかり濡れ羽色で、やっと外の時間を思う。#空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

「聞いてほしかっただけならそれでおしまい。よく噛んで呑み込むなり、酒に溶かすなり、場所を選んで吐き出すなり。どうにかしてほしいなら考えるのはそっから、きちんと向き合って。そんなもんじゃあないの？」「……ありがとうございます」「そう？」「はい」 #空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

ところで、と相手を見やる。「何かご用でした？」「そそ、一緒に繰り出そっかナ、って」「は！？」よく見れば相手はわりとめかしこんでいる…あの羽織よく見ると黒糸で刺繍してあるんですけど。「安心しなよ先生とだからしっかりしたお店にしか行かないってエ」#空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

「えっどういう趣旨のお誘いなのかわかりかねるんですけど」「そんじゃあちょいと聞いてほしい話があるってことにしとこうか」有無を言わせぬ空気。けれどそれも、ふ、とろうたけた笑顔に和らいで。#空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

「ひとりでぐるぐるしてるンならお外の空気を吸うくらいしたほうがいい、と思うんだけどネ？　なァに、話の種はいくらでもあるんだ。そいつに混ぜ込んじまいな」そんな風に言われてしまうと――動く心もあるわけで。「……それじゃあ、お供させていただきます！」#空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘

こみや@空想の街 @Ne2_co

「そうこなくっちゃあ」 上着と襟巻きを取ってこなければ。あゆ子は立ち上がってひとつ、伸びをする。何の話をしようか。そう、それなら――まずはあの懸想文の話、とか。 #空想の街 #はなのえ文庫 #曳舟荘 〈了〉