@cleanwc 「俺、サッカーしててよかった」思い切り抱きついたら、三上が困ったような顔をして言った。ばかだなあ。こんなときは嬉しくて笑うか、泣くか、どっちかだろ。「俺、武蔵森に入って、本当に、よかった」三上が震えた声で言うもんだから、俺の方が先に泣けてきた。鼻の奥が熱い。
2011-06-08 23:06:50@cleanwc 「ばーか。お前、泣き過ぎだよ」笑いながら言われたけど、ねえ、三上。お前の目も真っ赤なの、俺の見間違えじゃないよね。みんな三上の周りに集まってきて、とにかく嬉しくて、楽しくて、ひたすら笑った。ほんとうに、武蔵森でサッカーしててよかった。
2011-06-08 23:09:10@m10mkm 今まで感じたどんな感情も打ち消してしまうほどの感情。嬉しいという言葉なんてとっくの昔に超えてしまっている。遠くで笛の音が響くのを聞きながら、全力でガッツポーズを取っているのが分かった。大声で吼えれば、頬を伝う水。雨。一生に数えるほどしか降らない、嬉し涙という、雨。
2011-06-08 23:34:16@cleanwc 何度味わったって、絶対に慣れることのない快感。ああ、勝つって気持ちいいなあ、なんてぼんやり思う。ピッチの上を見渡していれば、みんなにもみくちゃにされている三上先輩。やっと解放されたかと思えば、俺に飛びついてくる。めずらし。「…やったな」と呟いた声は微かに震えて。
2011-06-08 23:48:03@cleanwc 「よかったねえ、勝って」なんてちょっと他人事みたいな俺の言葉に驚いて、三上先輩が顔を上げる。下がった目尻からぽろり落ちる涙。この人の涙が見られただけでも、今日勝った価値はあるかな、なんて。(甘いのは分かってる、よく分かってる)
2011-06-08 23:48:23@cleanwc 歓喜の渦に包まれている仲間たちの輪の中に、あいつの姿はない。視線を巡らせると、仲間たちからは少し離れたところでどこか一点を見つめる三上の姿があった。視線の先は、ゴールポスト。ついさっきまで俺たちが何度も戦いを挑み、そして今は誰もいないポストをじっと見つめている。
2011-06-09 00:05:27@cleanwc 「三上?」問いかけると、慌ててユニフォームの袖で頬を拭う。いや、目尻、か。「…勝ったな」続けた言葉には、ゆっくりと頷いてくる。俺の方を振り返りもせずにただ黙って、けれどその肩が僅かに震えていた。「…勝ったんだな、俺ら」長い沈黙の後で、噛み締めるようにそう呟いた。
2011-06-09 00:06:06三上は痛いのとか苦しいのとかにはある程度強い人間で、そういうときには感情はゆれなくて、嬉しいときの方が涙腺弱いとかなにこれ死にそうにたぎる。
2011-06-09 00:09:38@yuzuen 拭っても止まらない涙があることを、知った。こぼれ落ちる感情があることを、知った。「嬉しい」の意味を、知った。あの時振り抜いた右足から描かれた弧は、美しくネットを揺らした。たった1点の重みを、確かに今、感じている。「勝った」という事実を噛みしめた時、また涙が零れた。
2011-06-09 00:09:53