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キテレツは店主から聞いていた。あいあいの過去を。そしてあいあいがどうしてあんな奥の部屋にいるのか、専用の者がいるのかを帰る時に聞いた。
2010-04-16 13:01:45すべてを聞いてもまだあいあいに関わるかねと聞かれた。「あいあいの父は真面目な男だったが妻を亡くしてから自制をなくし、借金に借金を重ね結局亡くなってあいあいがその肩代わりにここに売られてきた。だから、これからもずっとあいあいは誰も信じない、愛さないし、愛そうとしない」
2010-04-16 13:17:07それを聞いたキテレツはふらと立ち上がり、何も言わず出て行った。その姿を女将は見送り傍らの水たばこに手を出す。「あれのすべてを受け止められる人間じゃあないととても身請けは出来ないのよ。かわいそうとか、愛してる。そんな言葉とか……あの子なら笑い飛ばしちゃうわ」
2010-04-16 14:19:23キテレツが出て行った扉を睨む。「春を売る者は多かれ少なかれ様々な事情を抱えている。買う者は気楽に指定するだけでも、売り物たちはそうは行かないって事」
2010-04-16 14:29:53女将は電話を手に取りどこかに掛けた。「あ、はるちゃん。あたしぎんねこです。ちょっとお願いしたいことがあって、構わないかしら。お礼は……あの有名店でのディナーでいいかしら。そのお願いってのが……」
2010-04-16 14:32:04女将は電話を切り、水たばこを一服し、新人をここに連れてくるように命じた。新人の名前は千尋。田舎の両親が人買いに売ったのだ。生活のためにと。そのことに千尋はうすうす感づいているようだった。
2010-04-16 14:34:37「あ……の、千尋です」声が必要以上に割れている。緊張してるのだろう。あいあいにもこんな時期があったと女将は思い出す。入るように言ってから千尋はおずおず入ってきた。
2010-04-16 14:36:20「あの、お母さん……何かありました?」入ってきてその日の夜、すべてを悟ったのだろう。何をしたのかは報告済みだった。「座りなさい」短いが逆らうことは許さなかった。
2010-04-16 14:38:56「千尋、あなた恋人がいたの?」ストレートな質問に千尋は戸惑う。「答えなさい!」叱責の声。びくっとする千尋を見て内心面倒に思いつつもここが肝心だと思った。
2010-04-16 14:41:06「い、いません!そんな人。うちは……お母さんの知っている通りの家、でしたから」俯き今にも泣き出しそうな声で言う。これは手が焼けそうだと内心舌打ちしつつ、だが躾けなければと思った。
2010-04-16 14:43:22知らないかい?」と言う声に外から探してきますと声がした。「おまえの面倒を見てくれるのがイチだよ」醒めた声で淡々と事実を述べていく。千尋は最後の審判を受けているような気持ちになった。田舎で確かに思いを寄せていた相手はいたが、あまりの差のため告白さえしたことがなかった。
2010-04-16 14:47:49まさか、ここに来ていた!?そんなことはない。相手は村長の……結婚することも決まっていたと言うのに、こんなとこに……。思いがせめぎ合う。嬉しいのと恥ずかしいのと。そしてこんなとこにいる自分を見られてしまったら生きていけなくなると。
2010-04-16 14:50:07千尋は強く思った。イチと呼ばれた人は艶やかな黒髪で烏の……という形容が合う何とも肉感的な美女だった。後から知ったことだが、店の売り上げが2番目に多いと言うことを。千尋はあいあいという売れっ子に会いたいと言ったがそれは出来ないとイチに言われた。
2010-04-16 14:53:07{どうしてだめなんですか?」「あいはね……人に不幸を招くって言われて隔離されてる。最も政府の高官たちが主な客って事あって入り口からいろいろ別になってるのさ。えっと……あんたの部屋は……」
2010-04-16 14:55:35そういってイチは空き部屋に千尋を連れてきた。ここだと言って鍵を出し開けた。シンプルな作りだった。内装は凝っているがどれもシンプルでここが何のための場所か確認させられた。テーブルには螺鈿細工があったり、猫足の椅子、毛足の長いカーペット。すべて千尋の知らない世界の物だった。
2010-04-16 14:59:11もう一枚の扉を開ければ紗々織りが何枚も重なった天蓋付きのベッドがあり、入って右に唐草模様の入った鏡台。左に明かりのためのライトがあり、橙色のぼやけた明かりがほんわかとしている。
2010-04-16 15:02:29全体的に赤中心で所々白、黒と配してある。なんとも豪華な部屋になっていた。イチは備品を確認し、揃っているのを確認した。「あ、名前……なんて言うの?」「ち……千尋で、す」「千尋か。あのね、ここでは暗黙の了解って事になってるんだけど、相手の過去は詮索しない。お客と関係を持つな」
2010-04-16 15:08:35そして千尋の顔を見ながらイチは言った。「借金とか家の都合で来たらなら、貢がせることだね。見返りを要求してくるけど中にはそんなの、度外視してくるのもいるから……そんな上客捕まえるんだね」千尋は言われてたことの半分を理解し切れていなかった。
2010-04-16 15:11:00それにイチは笑みを浮かべる。かなしそうな、やるせなさそうな。「千尋、客相手にする時は心をなくせ。なくさないと辛くなる。思っている相手や操を守りたい相手がいたらね」その言葉にびくっとした。昨日の夜を思い出した。寝ていたら男2人が入ってきて物を言わず千尋を襲ってきたのだ。
2010-04-16 15:13:54抵抗1つ許さないその動きの前に千尋は恐怖の前に悲鳴を上げたかったが、さるくつわをされ漏れるのは声にならない声ばかりだった。手が身体を這い回ってくる感触に失神しそうな程嫌悪が走った。その時思い浮かんだのは田舎にいた時好きだった……きょーすけのことだった。
2010-04-16 15:16:55@yokoyama_saki 男の娘 あいあい ちー イチ 女性 ぎんねこ はるこ 男性 きてれつ きょーすけ
2010-04-16 15:22:39きょーすけさん!強く思ったところで田舎からここは遠かった、まして千尋がこんなとこにいることは知らなかったはずだった。今更ながら、千尋は自分の置かれた立場を知り、涙し、現実を恨み、両親を呪いたかった。すべてが許さなかった。人買いに売られた!そのことが千尋にはショックだった。
2010-04-16 15:29:02「逃げないようにね」イチの声で我に返った。「死ぬ覚悟がないとここからは無理だよ。うちのおかーさんね……やり手なもんで、商売道具の管理も厳しい。てことでマフィアと組んでるのさ。最も娑婆代なしでこんなとこ商売なんて出来ないし、変なのも多いからね」
2010-04-16 15:34:12