稲川淳二の『つぶやき怪談』(2020.04.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

オイソレと予算は出ないし、 各地に生活出来る部屋をいくつも確保してあるんですが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

どの部屋も人が入っていて、空き部屋が無い。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（こいつは弱ったなァ・・・・）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

とみんなが頭をひねっていると、ひとりがオズオズと、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「どうだろう、この際だから、あのアパートの部屋を使ってもらったら」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と言った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

確かに空いてる部屋がひとつあるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それはみんなも知っているんですが、 そこは使えない部屋なんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

わかりやすく言うと「出る」んです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、使えない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

みんなが、 「あそこはまずいんじゃないか」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と言ったんですが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「でも、この人達は日本人じゃないから大丈夫でしょう」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と言うんで、事情が事情なんで、 「それもそうだ」 と、全員の意見がまとまって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、 その初日の晩、とんでもない騒ぎが起きた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

深夜、人の寝静まった閑静な住宅街に、 突然、凄まじい悲鳴が上がった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と同時に男達の叫び声がして、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ドスン・ガタン と激しくぶつかる音がする。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

やがて、家々の明かりがついて、人が出て来て、警察も来て、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

連絡を受けたＮＰＯのスタッフが駆け付けると、 その場の状況に思わず息を呑んだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

動物のように四つん這いで駆けたり、転げ回ったり、 遠吠えしたり、奇声を発して、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その目は恐怖に脅えて、 身体をブルブルと痙攣させながら、口から泡を吹いている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

尋常じゃない様子に居合せた誰もが、 （ゾッ）とした。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうするうちにも、次第に正気を取り戻してきたので、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

一体何があったのか聞き出そうとすると、銘々がいっせいに喋り出す。