- messpipette
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「夢の国に行って来るよ」某遊園地にいるはずの友人からそんな電話がかかってきた。「お前はもう夢の国にいるだろう」一言だけ伝え通話をきった。その日、私は不思議な夢を見た。友人が階段を降り続けるという夢だ。友人は行方不明になった。私は彼が未だに階段を下り続けている気がしてならないのだ。
2011-06-20 00:16:23マンホールから「てけりり」と声がするという怖い噂話がある。果たして本当に噂なのだろうか。私の屋台の常連客である、下水処理場に勤めているAが泥酔しながら呟いていた。「何が最新の汚水処理システムだ。奴はただ全部食っているだけじゃないか。この前は間違って迷い込んだ後輩を・・・・・・」
2011-06-20 21:45:56『父を尋ねて三千世界 著者ウィルバー・ウェイトリー』通販サイトにて気になる本を見つけたのでレビューを覗く。「これは本当に良い本です!遠くの父に会おうと努力する著者の切ない思い出が綴ってあります。特にラストのいあいあよぐそとーす」最後まで正気を保て。私はそっとブラウザを閉じた。
2011-06-21 22:32:32「いやぁ、嫌な夢を見たよ。黄色いスライムになって人間を食う夢だった。血の匂いとか、味とかが妙にリアルで…… おいナイア、何笑ってるんだよ。鏡を見てみろって?……何だよ。別にいつもの俺の顔じゃないか。でも変だよな。全身映る姿見を買ったはずなのに、なんで俺の顔しか映らないんだろうな」
2011-06-22 22:02:18何故だ。ナイ博士は言っていた。SYGSは無限の展延性と幅広い擬態機能を持つ夢の細胞だと。だから私は、声帯を壊し、歌手の道が断たれた妻の夢を託したのだ。「……あなた」妻の声が私を呼ぶ。そんなはずはない!私が移植したSYGSは妻の喉を引き裂いて育ち、妻は喋るどころか命を落としたのだ!
2011-08-07 22:57:25「あなた」「おまえ」びちゃびちゃという粘着質な音と共に声が響いた。薄暗い部屋の中、黄土色のゲル状物体が蠢く。「あなた」「おまえ」ゲル状の物体に浮かぶ二つの口は、モゴモゴと動き、二つの声色を零し続けた。
2011-08-07 22:57:54「気分はどうかね」様々な装置が所狭しと詰め込まれた部屋で、白衣の男が銀色のシリンダーに向かって問いかけた。「事故でボロボロの君が担ぎ込まれて来た時は実に嬉しかったよ。ようやく実験が出来るのだからね」男は口元にニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべる。
2011-08-17 21:15:59「君も嬉しいだろう?脳以外まともなところが無い君が生き残ることが出来たのだから。まあ、人間とは言いがたいかもしれないがね」私と同じでな。男は呟くと自身の胸を引き裂いた。粘つく菌糸が網のように絡みつく隙間から、脳が納められた銀色の筒が顔を覗かせていた。
2011-08-17 21:16:16