タイラント・オブ・マッポーカリプス:前編 ＃1

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

かくして織田はウォーロードとなって軍事を司り、明智は陰謀や交渉事を引き受けた。気質の違いが二者の役目を決めた。明智が特に腐心したのはソガとの折衝である。激情家かつイノベーティブな性格で知られる織田は、しばしば伝統的ニンジャ作法やドレスコードを逸脱し、ソガ達を苛立たせたからだ。 18

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明智の京都通いによる橋渡しと、織田の見事な戦果により、ソガは信頼を深め、中部の守りを彼らに一任した。織田信長と明智光秀の領土はナゴヤ・ミッドランド。ソガの本拠地たる京都と、モータル側連合軍の総大将「徳川エドワード家康」の本拠地たる江戸との中間地点であり、最大級の激戦地であった。19

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江戸の徳川エドワード家康は、対西軍の旗印に成長していた。銃砲騎馬軍団タケダ・ドラグーンを率いる当代最強のウォーロード武田信玄。神秘的なハイクの力を操る松尾芭蕉。五つの指輪の魔力を受け継いだ剣豪、柳生ウォンジ。さらに東や北へ追放された賤しき流刑ニンジャたちも彼の元へ集い始めた。　20

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既に、合戦場はニンジャにすら危険な場所へと変わっていた。火縄銃の量産技術が確立され始めたからだ。かつてヤン・ジシュカがピストルカラテを編み出した頃、マスケット銃を恐れるニンジャなど皆無であった。だが今や、千挺の火縄銃あらば、モータルですらニンジャを滅ぼせる時代が来たのである。 21

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それでも織田信長と明智光秀のカラテの前に敵はなかった。むしろ織田は火縄銃を西軍勢力で最も早く取り入れ、量産体制を築いてすらいた。東軍の猛将武田信玄に肩入れしたマムシ・ニンジャとその一党を、ナゴヤ・ミッドランドの合戦で爆発四散せしめたイクサは、東軍西軍の両陣営に衝撃を与えた。 22

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半人半蛇の巨大なニンジャを大槍で突き刺し、ミッドランドの崖に掲げた織田と明智は、その影の下で久方ぶりにスシを食い、酒を酌み交わし、伝説の戦闘花魁アキナ・セイコが妖艶に舞い踊るのを見た。だが、これが二人の黄金時代の絶頂期であった。二人の絆は、織田の裏切りによって終わったのだ。 23

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全ての元凶は、織田信長が独自に建造計画を進めていた新たな城塞「安土城」にあった。織田は異端の銃砲鍛治集団〈御村衆〉を抱き込み、明智やソガに報告していた数の百倍超の火縄銃を量産すると、この安土城内に設置し始めた。さらにその内部を、無数の青銅歯車のカラクリ機構で満たしたのである。 24

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異端審問衆「コムソ」の諜報活動がもたらした事実にソガは戦慄した。安土城は城などではなかった。一万の銃砲と歩行装置を内に隠した巨大決戦兵器であったのだ。蒸気機関もニュークもない時代。如此き巨大機械兵器を操れるのはニンジャのジツ……織田信長のカゲムシャ・ジツをおいて他になかった。 25

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即ち、裏切りである。織田信長はソガを滅ぼすため、密かに最終決戦兵器安土城を建造していたのだ。これは副官明智にとっても、寝耳に水であった。博多でコムソの密偵から報告を受けた明智は愕然とし、胸の内で叫んだ。『ソガを裏切るならば、それもよし。だが何故私にすら相談しなかったのだ』と。 26

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ニンジャ勢力の根回し工作のため遠き博多にいた明智光秀は、この真意を問うための巻物をしたため、大凧に運ばせた。織田信長からの返事はなかった。この裏切りの報はついにソガのもとに届いた。ソガは怒り心頭し、織田を暗殺することに決め、忠誠の証として明智にその計画を進めさせたのである。 27

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明智光秀に京都のスシ料亭へ呼び出された織田信長は、その道中、ソガの側近たる罪罰影業七本槍に強襲され、爆発四散した。何故、彼がこれほどまで簡単に討ち取られたのか？それは親しき明智による誘いだったからである。織田は油断し、カタナすら持たず着の身着のままで向かい、爆発四散したのだ。 28

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仮に織田信長がスシ料亭まで辿り着いていたならば、明智光秀は毒入りスシによって彼を暗殺する予定であった。だが実際には、明智光秀自身は指一本動かさず下克上を果たしたのだ。この用意周到な計画と功績により、明智はソガの最側近の座を与えられ、西のショーグン・オーヴァーロードを襲名した。 29

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しかし、明智の天下は長くは続かなかった。織田を失い伽藍堂と化したたはずの安土城が、突如、禍々しき暗紫の光とともに立ち上がり、京都に向け進撃し始めたのである。その報せが疾馬で届けられると、明智は電撃的に悟った。織田は生きている。そしてジツの力により安土城を遠隔操作しているのだと。30

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明智の直感は正しかった。京都で殺された織田信長は替え玉。謎めいた「ツツモタセ・ジツ」の力によって織田信長と瓜二つに変身した、別の織田軍家臣ニンジャであったのだ。何と迂闊であったことか。罪罰影業七本槍でなく自分であれば、替え玉と見抜けたものを。明智は己の失態を悔いた。　31

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一刻も早く織田信長を討たねば、決戦兵器安土城が京都に到達し、ニンジャの世は終わる。安土城には京都を三度焦土に変えるだけの火力が搭載されているのだ。……今度こそ自らのカラテで決着をつけるべく、明智光秀は手勢を率いて駆けた。　32

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織田がどこにいるか、察しはついていた。安土城を遠隔操作するとなれば、名物茶器を一堂に集め大規模なチャドー儀式を行う必要がある。そしてそのような儀式を行える場所は、限られてくる。明智は迷いなく暗黒の京都山脈を越えた。異様なるネザーの妖気が、前方、本能寺のある大竹林を覆っていた。 33

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【タイラント・オブ・マッポーカリプス：前編】#1終わり　#2に続く