稲川淳二の『つぶやき怪談』(2020.09.25)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

依然として衰えをみせない新型コロナに、 豪雨、猛暑に台風と、追討ちをかけられて、もう散々。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでもここへきて、どうやら仲秋の静けさが、 いくらか戻ってきたような・・・。 みなさん、お変りないですか？　 稲川淳二です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

気が付けば、蝉の声も消えて、 網戸から吹抜けてくる風も、朝夕、めっきり涼しさも増して、 タオルケットから足先を出して、快適な睡眠がとれてます。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

お蔭様で今年のミステリーナイトツアーも、無事に半ばを過ぎて、 終盤へ向かって、残りの公演回数を数えはじめる頃となりました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

２８年目のツアーが途切れる事なく出来て、 通常の半数という入場制限に、ソーシャルディスタンスの為の席の移動と、 ご面倒をおかけしたにもかかわらず、何時も以上に会場に響き渡る拍手に、 心が伝わって、胸が熱くなりました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

みんな、なんて素晴しいんでしょう。 私は幸せ者です。 心から・・心から感謝でいっぱいです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでは、今回の「つぶやき怪談」そろそろ始めましょうか。 ゆったりと、くつろいで、お付き合いいただければと思います。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんな訳で、怖ーい噺で楽しんで下さい。 稲川淳二の「つぶやき怪談」、怖・楽しい時間を、共有しましょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ボンドガールっていえば、一頃は、美女の代名詞でしたよね。 日本にもいますよね、ボンドガール。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのひとりだった女優のＨさんのお宅は、 芦ﾉ湖にあるすごくご立派なお宅なんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

なんでも、十二軒の農家の古材を使っていらっしゃるんですよ、建物に。 あの方は、たいへんそういうのがお好きでねえ、 たまたま、ロケや取材先で、そんなのを見つけると、買うんだそうですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうして集めた十二軒分の、一○○年、二○○年経つという材木。 それを使って建てたんだそうです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

Ｈさんは、元々、設計する力があるというか、 センスのいい人で、ちょっと見は三階建てかそこらなんだけど、 よく考えると五階建てぐらいの形にするんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

屋根裏部屋なんかがあってね。 ちょっと、合掌造り風の、茅葺きの立派なお家ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで、入って行くと、玄関、ふたつあるの。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すごいんですよ、大きいんですよ、 一枚の戸がね、普通の玄関の二枚分くらい、あるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

だから、玄関がほとんど正方形でね、 戸には鉄の網みたいのが入ってまして、 錠前が下りるようになってるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それをガラッと開けるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「立派ですねえ」 って言ったら、あの人、普通に言うんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「これはね、二五○年ぐらい前のもんなんですよ」 って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「じゃあ、これ、価値もんですねえ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ええ、ただね、これをお持ちになったお家の、ご先祖様の庄屋さんは、 たいへんに面倒見のいい人で、村人の面倒をよく見たんですけど、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その結果、領主さまに恨まれて、みせしめだって言って、 この戸の前で、切り殺されたそうで、 血が飛び散ったんですって」