キタノ・アンダーグラウンド #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ニンジャスレイヤーAoM】 ・舞台は2050年頃の近未来。国家は崩壊 ・電子ネットワークが張り巡らされ、ネオサイタマでは人体機能を上回るハイテク義肢が盛ん ・ある日突然ニンジャになる ・ニンジャは非ニンジャより非常に強く、邪悪な事が多い ・ニンジャスレイヤーはニンジャをスレイする

2020-10-29 20:50:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【主な登場人物】 ・マスラダ・カイ:この物語の主人公で、ニンジャスレイヤーだ。 ・タキ:「ピザタキ」の店主で、情報屋だ。 ・コトブキ:明るく力強い、美しいウキヨ(自我をもつオイランドロイド)だ。

2020-10-29 20:53:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【プレシーズン4】 謎めいた「ストラグル・オブ・カリュドーン」を巡って展開するシーズン4。それに先立ち、幾つかの新規エピソードがプレシーズンとして連載されます。時系列は普通にシーズン3後の最新時系列となりますので、そのままお楽しみください。

2020-10-29 20:56:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーAoM プレシーズン4 【キタノ・アンダーグラウンド】#1 pic.twitter.com/ZXneRhlC0H

2020-10-29 21:03:01
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バチッ……バチチチッ。アンティーク蛍光灯が音を立てて明滅し、足の踏み場もない「仕事場」を、おぼつかない周波数で照らした。光りのリズムがUNIXモニタの冷たい明かりと絶妙に不同期。タキの目覚めをとりわけ不快なものにした。タキはうつ伏せに突っ伏したまま、キーボードをタイプした。 1

2020-10-29 21:06:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「HOT」「ボインチャン」「気が強い」「サービスクーポン」……ブラックスクリーンに緑の文字が並ぶ。01010101。申し込みボタンにカーソルが無意識移動。タキはそのまま……「オッ、あぶね」ガタンと椅子の音を立てて起き上がり、慌てて360度を見回す。それからもう一度モニタを見る。「あっぶね」 2

2020-10-29 21:08:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキの「仕事場」はキタノ・スクエアビル地下四階。地上のピザ屋の秘密のハシゴを降りれば、この閉鎖空間。配管パイプやジャンク類、ホット・トイ、配達ピザのダンボール・ケース、電子戦争以前の値打ちもののゲーム機、何かの辞典、マキモノ、トロフィー、LANケーブル、LANケーブル。彼の城だ。 3

2020-10-29 21:14:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシゴを上がってピザ屋に出れば、おせっかい焼きのウキヨに気遣いされるし、不機嫌などうしようもない奴がいる可能性もある。奴は忙しく出入りしている。そのままどこかへ行っちまっても一向に構わない、トラブルのときに戻ってきてヨージンボになるならば。とにかくここは心の解放スポットだ。 4

2020-10-29 21:17:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フー……ッたくよ……誤入力はヤバいッての」タキはローライズ・ジーンズからはみ出た尻を掻きながら、あらためてモニタに集中した。「HOT」「ボインチャン」「気が強い」「サービスクーポン」指差し確認。更に、「特別サービスクーポンコード」を入力した。「これでよし。首の皮一枚だな」 5

2020-10-29 21:19:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なにしろ特別クーポンコードの入力によって、値段が25%も変わってくる。シビアにコスト管理をしなければならない。タキは弾き出されたオイランガールのデータを冷静な目で確かめ、予約を入れた。……ビビーッ。ノイズBEEP音が鳴った。モニタには「残金不足」の表示。タキは眉根を寄せた。「は?」 6

2020-10-29 21:22:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いや、おかしいだろ」タキは独り言を言い、念の為オイランサービスIRCサービスに再度入り直して、再度予約処理を行った。やはり「残金不足」。タキは蒼くなった。「嘘だろ」配線の沼に沈んでいるファイアウォールの点滅を確認する。緑。「嘘だ。絶対ハッキングだろ。こんな筈ねえッて」残高確認。 7

2020-10-29 21:26:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いや、本当にあったんだって!おかしいんだって。マジによ!」タキは独り言で主張した。「絶対こんな筈はねえンだ。先月は結構仕事は入ってたしよォ……」彼は電子ウォレット情報を開き、繰り返し確かめた。答えは冷徹だった。ほぼゼロ。だが理由はわかった。賃料だ。二ヶ月前から、賃料が二倍! 8

2020-10-29 21:29:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキが間借りしているのは、キタノスクエアビルの地上のピザ屋と、地下四階のこのスペース。ピザ屋は陰惨な事故物件であり、タフな交渉の末に相当賃料をマケさせる事ができた。以来、好きにやってきた。それが何故……?通告はあったか?あったかもしれない。「とにかくクソが。どうにかしねえと」 9

2020-10-29 21:33:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はジャンクの山を探した。オイランポルノ・ピンナップをめくった。「確か新円の物理ホロプリント紙幣……挟んでた筈なんだ、クソッ!クソが!」彼は癇癪を起こし、ジャンクを蹴飛ばした。「痛てェ!」脚を痛めた!彼は震える手で今度は虎の子の秘密ウォレットにアクセスした。……ヨロシドル。 10

2020-10-29 21:36:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

残高は54.00ヨロシドル。到底足りない。だがまだ退路は残されている。彼はクソッタレなネザーキョウの冒険を通してヨロシサンのCEOに恩を着せ、ヨロシサンの株券200株の譲渡を受けた。そこからもたらされるシケた配当金は端金で、遊び金にしかならない。だが、株券を崩せばまとまったカネになる。 11

2020-10-29 21:43:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「情けねえぜ……こんなハメに陥って……」彼は売却ボタンを叩いた。するとビビー。またしてもエラーBEEPだ。『この株には、ロックアップ期間が設定されています。この株は1年が経過しなければ売却できません』「ファック、ファック!?」タキはUNIXデスクを叩いた。「ファックファック!?」 12

2020-10-29 21:45:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキはパニックに陥り、その場でグルグル回転した。「ファック!?」もはや問題はオイランサービスの次元ではなかった。残高ゼロ!?今月末の賃料がいきなり満額支払いできなくなる!?「ファック!?」コトブキにドゲザして……従業員に借金!?「アイツ、そんなに貯めてるとは思えねえ!」 13

2020-10-29 21:49:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時だった。ガラクタの向こう、奥のシャッターの上の「ON AIR」のランプが緑点灯した。この地下四階アジトはキタノスクエアビル地下街に隣接しているのだ。情報屋のタキに用がある人間は、こちらの窓口を使う。物理で訪れる人間は稀だが……今はブッダの遣いにも思えた。カネがやって来たか! 14

2020-10-29 21:53:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファック……邪魔だ!ファック!」タキはジャンクを蹴散らし、掻き分けて、這うようにシャッターに向かった。向かいながら、彼の脳裏には不吉な予感がよぎった。のぞき穴の向こうに立っているのは、カネ……とは限らない。タキが忘れた不義理の相手がヨージンボを連れて待ち構えているやも。 15

2020-10-29 21:57:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

確率は五分五分、いわばコインの裏表。「死ぬか……生きるか」タキは呟いた。この運試しから逃れる選択肢はない。「死ぬか……生きるか!」シャッターに辿り着く!インタフォンを掴み取る!「ゴホン!アー……どちらさんで」『タキ=サン!助けてくれ!』「……いいぜ。プロフェッショナルに任せろ」16

2020-10-29 21:59:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは体内でドーパミンが噴き出すジュワという音を確かに聴いた。そして身体の震えを押さえながら安全カメラ映像を見た。「あン?ミボシ=サンか。久しぶりだな。いいタイミングで来たぜ」『助けてくれ!』「わかってる。アンタの力になれるのはオレだけ。金額次第……」『ここを開けてくれ!』 17

2020-10-29 22:02:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハ?親しき中にも礼儀あり、オレはナアナアの付き合いはしねえ……」『アイエエエエ!開けてくれーッ!』「オイ!カネ!」『グワーッ!』タキは慌てた。安全カメラ映像を確かめたが、よくわからない!「カネ!ファック!死ぬな、カネ!」タキは慌ててシャッターを引き開けた!「アイエエエ!」 18

2020-10-29 22:05:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

狭く開いたシャッターをくぐるように、ミボシが入り込んできた。ミボシはラジオマニアの中年だ。「アバー」「アバーッ……」彼を追うように、ゾンビーが店内に手を入れてきた!「「アイエエエ!」」タキとミボシはユニゾンで悲鳴を上げた。ゾンビー?違う!そんな筈はない。とにかく追い出さねば! 19

2020-10-29 22:09:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「テメエら……やめ……ヤメロッコラー!」「アバー」「アバーッ!」タキは入り込もうとする者らを蹴飛ばし、押し出して、ミボシとの二人がかりでシャッターを下ろすと、なんとか施錠した。ドズン!ドズン!シャッターが外から叩かれる。タキは震えながら安全カメラの映像を再度確認した。 20

2020-10-29 22:11:30