共楽の思い出

カルヴァドス @cornelius0321

①暑い。人一倍暑がりで汗かきなので、体にこたえる。家の近所に去年、塩らーめんの専門店がオープンした。ここの夏期限定メニューに「冷やしらーめん」というのがある。「冷やし中華」とは違う。熱いらーめんをそのまま冷やしたらーめんなのだ。

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②私は甘酢を利かせた冷やし中華の味があまり好きではないので、こういう「冷やしらーめん」のほうががいい。寝汗をいっぱいかいているので塩味のらーめんがうまい。

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③これにあぶりチャーシューと、ごはんと生卵を別に注文するのが、最近のお気に入りだ。当然「卵かけごはん」だ。これに醤油とらーめんの冷たいスープをかける。

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④猫舌なので、一年中こういう冷やし系メニューを置いてくれるといいんだが…。

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⑤ラーメンで思い出すのが、子供のころ神戸のおばあちゃんの家の近くにあった「共楽」という中華料理店のことだ。カウンターだけの小さな店。2人のおばさんで切り盛りしていた。

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⑥このおばさん、実は私の母の同級生で、一人はふくよか、もう一人はやせている。見た目も「いくよ・くるよ」そっくりである。

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⑦子供のころ四国に住んでいて夏休みなどの長期休暇に神戸に帰る私が、神戸に着くと一番最初にしたことが、この店に直行することだった。店のドアを開けるとおばさん達が「あら、（四国から）帰ってきたんやね。いつものチャーシューメンね。」といって作ってくれるのだ。

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⑧細めの麺、鶏がらベースのスープ、脂と肉のバランスのとれた厚切りチャーシュー…。他の人には何てことのない平凡なラーメンかもしれないが、私にとってこの店のチャーシューメンが「日本一おいしいラーメン」だった。

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⑨何度食べたかわからないくらい食べた。子供のころ肺炎で入院した時も、この店から生麺とスープと具材を届けてもらい、病院の湯沸室で作って食べたほどだ。私の身体の4分の1はこの店のラーメンでできていると断言してもいい。

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⑩共楽の調理場には、塩・こしょうを含めた7つの調味料がそれぞれ容器に入っていて、おばさんたちは7つの容器からそれぞれをさじですくってどんぶりに入れ、そこに鶏がらスープを注いでラーメンスープを作る。

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⑪子供のころに「共楽ごっこ」と称して、家の台所に調味料を用意して真似してみるが、どうやっても絶対に店のスープと同じ味にはならない。もちろん向こうはプロなんだから、素人の私が見よう見まねでできるはずもないのはわかってはいたけど。

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⑫共楽はずいぶん前に廃業し、おばさんの一人もその後、病気で亡くなった。この店のラーメンは「幻の味」になってしまったが、今でもここのラーメンが無性に食べたくなるときがある。＜この話題終わり＞